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第3章 公爵令嬢の選択
第10話 幼馴染
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馬車が屋敷に到着し、玄関前に停車した。
「リョウ様、馬車はエマが戻ったら厩舎に戻してもらいますのでそのままで構いません。どうぞ屋敷へお入り下さい。ローゼ、ベレニス、フィーリア。お風呂がありますのでご一緒にどうぞ。わたくしもすぐに行きますので」
そしてヴィレッタは馬車を降り、屋敷の中に入るとすぐにランプに火を灯した。
「あれ? 使用人とかいないの?」
「ええ。わたくしと共に王都にいるのはエマだけです。今のレスティア家は王宮で役職がなく、学生であるわたくしのみが王都で用がありますので、他の者は領地におります」
なるほど。だからエマさん1人で護衛を……でも、それなら尚更、私たちが協力しないと。
私たちはヴィレッタの案内で屋敷に入った。
「こんな広い屋敷なのに、2人っきりって寂しくない?」
「でも綺麗っすね。掃除が行き届いているっす」
ベレニスとフィーリアが屋敷の中を歩きながら感想を口にする。
私たちが旅の途中で泊まった宿とは大違いだ。
ヴィレッタ曰く、掃除だけは人を雇っているそうだ。
「ヴィレッタ嬢。護衛の方針だが、一つ提案がある。この広さで十分な人数がいないとなると、常にヴィレッタ嬢の側に俺たちがいなければならないだろう。寝室にローゼたちと一緒に、ヴィレッタ嬢が寝泊まりするというのはどうだろうか? 無論、俺は別だ」
「リョウ様、それは構いません。そうしてもらえると助かります。ローゼ、ベレニス、フィーリア。それで構いませんか?」
なんか、ヴィレッタが私たち女性陣の名前を呼び捨てで呼ぶのを強調している気がするけど、気のせいかな?
無論ヴィレッタの頼みとあらば、私たちは反対する理由なんてない。
「リョウ様は亡き父が使っていた寝室がありますので、そちらをご利用下さいませ。わたくしたちは、こちらの寝室を使います」
う~ん、リョウに様付けするのも強調している気がするなあ。棘もあるし。
フィーリアもなんとなく察しているようだが、リョウは無頓着だ。
ベレニスが気づいたら、またリョウをバカにしそう。
男がリョウだけで他3人が女子で、真面目な彼女は変な勘繰りをしちゃったのかな?
まあ、今はともかくお風呂だ。
さすが公爵家だよ、自宅にお風呂があるなんて凄い。
床は大理石とか豪華な素材ではない普通の石だが、4人が入るには十分な広さだ。
ベレニスが先に入って湯船で泳ぎ始めたが、ヴィレッタが困ってそうに見えるまではほっとくかな。
身体の汚れを洗い場にて落として湯船に肩まで浸かる。
湯加減は完璧で疲れが取れるよ~。
「ふひい……いい湯加減で生き返るぅ~」
「今のうちに確認しておくっすが、ヴィレッタさんとローゼさんはお知り合いっすかね?」
湯船に深く浸かりながら、ヴィレッタが来るのを待っているとフィーリアが話しかけてきた。
「まあ、ね。幼馴染ってとこかな? でも、もう私は死んでいることになっているし……」
「告げないし、教えない。魔女のローゼで押し通す。それで良いと思うっすよ。彼女は公爵令嬢っす。下手に関わらせたら危険過ぎるっすからね」
「そんなことよりジーニアのほうよ。ほっとくの? あいつ出鱈目の嘘しか言ってなかったわよ」
ベレニスが不機嫌な顔つきで、湯船から顔を出して会話に加わってきた。
精霊の力で嘘を見破れる彼女にとって、ジーニアとの会話はイライラしか募らなかったのだろう。
さらにベレニスは以前、ジーニアと戦い窮地に陥ったことがある。
そのためかジーニアへの敵愾心を、私以上に強く秘めているようだ。
「多分だけど、ジーニアはヴィレッタの問題が終わるまで放置で良いと思う。彼女が信じられる人物じゃないってのは……わかっている」
ジーニアの狙いがわからない以上は慎重に行動すべきだ。
踊らされているのかもしれないが、ヴィレッタ暗殺計画を教えてもらった手前、取引は守るべきだ。
「そっちは大方察しはついてるっす。ジーニアというあの偽シスターは、ヴィレッタさんが生きているほうが都合が良さそうだったっすから」
「……都合が良い?」
「彼女が自分の里を襲ったルシエンと同じ邪教の魔女であるなら、平和を乱すのが目的と考えるべきっすね。逆に言えば生きているだけで平和にならない存在。それがヴィレッタ・レスティア公爵令嬢ということっすよ」
「そんな! 生きているだけで平和にならない存在だなんて!」
フィーリアの冷静な分析に、少し興奮して声を大にしてしまう。
そこへお風呂の扉が開き、ヴィレッタがタオルを巻いた状態で現れた。
「どうかしましたか?」
「ヴィレッタ、護衛するにあたって確認なんだけど、狙われる心当たりはあるの?」
あまり大声を出すものじゃないと自省しつつ、湯船に浸かりながらヴィレッタに声をかけた。
「……そうですね。父や先王時代に冷遇された貴族の恨み。それに本日公表された、わたくしが陛下の側室となること。おそらく、面白くないと思う貴族は大勢いるのではないかと……」
なるほど、恨みと嫉妬で動いているとヴィレッタは予測しているのか。
ジーニアは断言して告げた。
首謀者は現在この国を牛耳るテスタ・シャイニング宰相だと。
う~ん、下手に動くと、宰相側と国王派で全面戦争の幕開けになるってことか。
……そうか、だからジーニアはヴィレッタに生きていてほしいんだ。
ヴィレッタが生きているだけで、宰相派と国王派の争いは過熱していくのだ。
混沌を望むジーニアの所属する邪教の集団。
そんな思惑に乗ってしまうのは癪だけど、私はヴィレッタを死なせるつもりはない。
絶対に彼女を護る。
もう戻れない関係への贖罪を込めて、全身に力を込めて心に誓いを立て、口走る。
「ヴィレッタ! 私が必ず貴女を幸せにするから!」
自分の言葉にハッとして、赤面しちゃう。
湯船でよかったと思う自分がいた。
「ええ、よろしくお願いします。ローゼ」
微笑むヴィレッタは、まるで幼い頃の彼女の面影が重なったかのように見えた。
「ちょっとぉ! ローゼ! 私も幸せにしなさいよ!」
「いや、ベレニスも護衛として、ヴィレッタを幸せにするんだからね!」
不貞腐れるベレニスに、私もヴィレッタも笑ってしまう。
やれやれという感じで、フィーリアは湯船から出ていった。
うん。きっと大丈夫。
リョウも含め私たち4人で、必ず陰謀を打ち破って見せる。
幼馴染として、そして元王女として、ヴィレッタに不幸になってほしくないから。
「リョウ様、馬車はエマが戻ったら厩舎に戻してもらいますのでそのままで構いません。どうぞ屋敷へお入り下さい。ローゼ、ベレニス、フィーリア。お風呂がありますのでご一緒にどうぞ。わたくしもすぐに行きますので」
そしてヴィレッタは馬車を降り、屋敷の中に入るとすぐにランプに火を灯した。
「あれ? 使用人とかいないの?」
「ええ。わたくしと共に王都にいるのはエマだけです。今のレスティア家は王宮で役職がなく、学生であるわたくしのみが王都で用がありますので、他の者は領地におります」
なるほど。だからエマさん1人で護衛を……でも、それなら尚更、私たちが協力しないと。
私たちはヴィレッタの案内で屋敷に入った。
「こんな広い屋敷なのに、2人っきりって寂しくない?」
「でも綺麗っすね。掃除が行き届いているっす」
ベレニスとフィーリアが屋敷の中を歩きながら感想を口にする。
私たちが旅の途中で泊まった宿とは大違いだ。
ヴィレッタ曰く、掃除だけは人を雇っているそうだ。
「ヴィレッタ嬢。護衛の方針だが、一つ提案がある。この広さで十分な人数がいないとなると、常にヴィレッタ嬢の側に俺たちがいなければならないだろう。寝室にローゼたちと一緒に、ヴィレッタ嬢が寝泊まりするというのはどうだろうか? 無論、俺は別だ」
「リョウ様、それは構いません。そうしてもらえると助かります。ローゼ、ベレニス、フィーリア。それで構いませんか?」
なんか、ヴィレッタが私たち女性陣の名前を呼び捨てで呼ぶのを強調している気がするけど、気のせいかな?
無論ヴィレッタの頼みとあらば、私たちは反対する理由なんてない。
「リョウ様は亡き父が使っていた寝室がありますので、そちらをご利用下さいませ。わたくしたちは、こちらの寝室を使います」
う~ん、リョウに様付けするのも強調している気がするなあ。棘もあるし。
フィーリアもなんとなく察しているようだが、リョウは無頓着だ。
ベレニスが気づいたら、またリョウをバカにしそう。
男がリョウだけで他3人が女子で、真面目な彼女は変な勘繰りをしちゃったのかな?
まあ、今はともかくお風呂だ。
さすが公爵家だよ、自宅にお風呂があるなんて凄い。
床は大理石とか豪華な素材ではない普通の石だが、4人が入るには十分な広さだ。
ベレニスが先に入って湯船で泳ぎ始めたが、ヴィレッタが困ってそうに見えるまではほっとくかな。
身体の汚れを洗い場にて落として湯船に肩まで浸かる。
湯加減は完璧で疲れが取れるよ~。
「ふひい……いい湯加減で生き返るぅ~」
「今のうちに確認しておくっすが、ヴィレッタさんとローゼさんはお知り合いっすかね?」
湯船に深く浸かりながら、ヴィレッタが来るのを待っているとフィーリアが話しかけてきた。
「まあ、ね。幼馴染ってとこかな? でも、もう私は死んでいることになっているし……」
「告げないし、教えない。魔女のローゼで押し通す。それで良いと思うっすよ。彼女は公爵令嬢っす。下手に関わらせたら危険過ぎるっすからね」
「そんなことよりジーニアのほうよ。ほっとくの? あいつ出鱈目の嘘しか言ってなかったわよ」
ベレニスが不機嫌な顔つきで、湯船から顔を出して会話に加わってきた。
精霊の力で嘘を見破れる彼女にとって、ジーニアとの会話はイライラしか募らなかったのだろう。
さらにベレニスは以前、ジーニアと戦い窮地に陥ったことがある。
そのためかジーニアへの敵愾心を、私以上に強く秘めているようだ。
「多分だけど、ジーニアはヴィレッタの問題が終わるまで放置で良いと思う。彼女が信じられる人物じゃないってのは……わかっている」
ジーニアの狙いがわからない以上は慎重に行動すべきだ。
踊らされているのかもしれないが、ヴィレッタ暗殺計画を教えてもらった手前、取引は守るべきだ。
「そっちは大方察しはついてるっす。ジーニアというあの偽シスターは、ヴィレッタさんが生きているほうが都合が良さそうだったっすから」
「……都合が良い?」
「彼女が自分の里を襲ったルシエンと同じ邪教の魔女であるなら、平和を乱すのが目的と考えるべきっすね。逆に言えば生きているだけで平和にならない存在。それがヴィレッタ・レスティア公爵令嬢ということっすよ」
「そんな! 生きているだけで平和にならない存在だなんて!」
フィーリアの冷静な分析に、少し興奮して声を大にしてしまう。
そこへお風呂の扉が開き、ヴィレッタがタオルを巻いた状態で現れた。
「どうかしましたか?」
「ヴィレッタ、護衛するにあたって確認なんだけど、狙われる心当たりはあるの?」
あまり大声を出すものじゃないと自省しつつ、湯船に浸かりながらヴィレッタに声をかけた。
「……そうですね。父や先王時代に冷遇された貴族の恨み。それに本日公表された、わたくしが陛下の側室となること。おそらく、面白くないと思う貴族は大勢いるのではないかと……」
なるほど、恨みと嫉妬で動いているとヴィレッタは予測しているのか。
ジーニアは断言して告げた。
首謀者は現在この国を牛耳るテスタ・シャイニング宰相だと。
う~ん、下手に動くと、宰相側と国王派で全面戦争の幕開けになるってことか。
……そうか、だからジーニアはヴィレッタに生きていてほしいんだ。
ヴィレッタが生きているだけで、宰相派と国王派の争いは過熱していくのだ。
混沌を望むジーニアの所属する邪教の集団。
そんな思惑に乗ってしまうのは癪だけど、私はヴィレッタを死なせるつもりはない。
絶対に彼女を護る。
もう戻れない関係への贖罪を込めて、全身に力を込めて心に誓いを立て、口走る。
「ヴィレッタ! 私が必ず貴女を幸せにするから!」
自分の言葉にハッとして、赤面しちゃう。
湯船でよかったと思う自分がいた。
「ええ、よろしくお願いします。ローゼ」
微笑むヴィレッタは、まるで幼い頃の彼女の面影が重なったかのように見えた。
「ちょっとぉ! ローゼ! 私も幸せにしなさいよ!」
「いや、ベレニスも護衛として、ヴィレッタを幸せにするんだからね!」
不貞腐れるベレニスに、私もヴィレッタも笑ってしまう。
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