【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

文字の大きさ
89 / 315
第3章 公爵令嬢の選択

第9話 護衛依頼

しおりを挟む
 ヴィレッタを庇う従者の女性の前で、ガキン‼ と、リョウの漆黒の剣が白刃を弾き返す。

 ヴィレッタたちも襲撃者も驚いているが、こっちも驚く。

 ありゃりゃ、黒ずくめの覆面姿の襲撃者が合計4人か。
 どれがバネッサ? 他の3人も雇われた刺客か?

 リョウが3人を同時に、残る1人をベレニスが相手する中、私とフィーリアは、ヴィレッタたちの側へと向かった。

「大丈夫ですか? ここは私たちに任せてください」

 私を見たヴィレッタの顔が一瞬強張る。
 私の表情はどうだったのだろう? うまく隠せただろうか?

「私たちは冒険者です。私は魔女のローゼ。こっちはフィーリア。さあ、後ろに隠れてください」

「魔女……」

 ヴィレッタは私の顔をじっと見つめ、何か言いかけては躊躇う様子だった。
 ごめん、ヴィレッタ。今はそのままで……

 フィーリアに視線を送り、困惑する2人を任せると戦闘状況を確認する。

 1対3でもリョウは素早い剣さばきで襲撃者たちを圧倒していた。
 ベレニスもレイピアの素早い突きで1人を翻弄している。
 その2人の姿を、ヴィレッタは驚きながら見つめた。

 襲撃者も相当な腕前だが、よもやの邪魔者の存在に動揺しているのか、動きがぎこちない。

 ジーニアは、祭壇で敬虔なシスターが怯えているようにしている。
 いや、それ、震えて何が起きているのか理解できないって感じで演じていないと不自然じゃない?……何を企んでいるんだ?

「リョウ! ベレニス!」

 叫ぶ私に即反応する2人。
 ここらへんはもう5ヶ月パーティーを組んでいるからか、阿吽の呼吸だ。
 リョウの剣技が1人の覆面を弾き飛ばし、ベレニスのレイピアがもう1人を捉えると、私は魔法陣を眼前に展開して魔法を発動した。

 大気中に充満する魔力に、襲撃者もヤバいと感じたようだがもう遅い!

『我が魔力よ。炎となりて敵を焼け!』

 炎が4人の襲撃者を包む。
 死にはしない絶妙な温度に調節し、火傷で済ます。
 炎が収まって襲撃者は倒れていく。

 さあて、覆面を取って正体を拝ませてもらおうか?
 剥ぎ取った覆面の下は、おっさん3人に女性が1人。
 この女性がバネッサかな?

「貴様ら! 一体何者だ!」

 おっさんの1人が叫ぶが、リョウが切っ先を向けて逆に問う。

「誰に雇われて、レスティア公爵家の令嬢を襲った? 答えろ」

 凄むリョウだが、おっさんたちは答えない。

「貴女がバネッサ? ここのシスターで行方不明だって話だけど?」

 私が問い質すも女は動じない。
 なるほど、口を割らないと。

「面倒くさいわねえ。あとは衛兵を呼んで任せましょうよ」

「う~ん、衛兵も信用おけるかわからないっすからねえ。ここは無難に、王様へ嫁ぐ予定の御令嬢が襲撃されたとお城へ報告したほうが、隠蔽もされなくて良いんじゃないっすか? 犯人も確保できているっすし」

 フィーリアの提案に私が頷くと、おっさんの1人が慌てだした。

「待ってくれ! 俺はただ雇われただけだ! 雇い主の名は‼」

 そこまで息急き切って喋った瞬間、襲撃者たち全員が苦しみだした。

「なっ⁉」

 驚きの声を上げてしまう。
 苦しみ、悶え、4人の襲撃者たちは事切れた。

「……しくったっすね。全員同じ指輪を付けているっすけど、これ魔導具っすよ。『裏切りの指輪』という、古の魔女が作成したとされる最悪の魔導具の1つっす。1人でも裏切ろうとした人間がいれば、一蓮托生で指輪に仕込まれている毒が、近くにいる所持者全員に回る仕組みっす」

 1人の女性が殺されるのを防ぎつつ、黒幕の正体を探るつもりが、まさかこんな結末とは……

「事情はまだ飲み込めていませんが、皆様に助けていただいたのは事実です。わたくしはレスティア公爵家のヴィレッタ・レスティアと申します。助けていただきありがとうございます。暫しお待ちいただけますか?」

 ヴィレッタは死体となった襲撃者たちへ近づくと、両膝をつき祈りの姿勢をとった。

「ヴィレッタ様! 命を狙ってきた連中でございます⁉ 何を祈っているのです‼」

「エマ。死ねば等しく女神フェロニアの信徒です。敬意を払ってお祈りをするのは当然です」

 エマと呼ばれた従者は苦虫を噛み潰したような表情をすると、私たちに向き直る。

「ヴィレッタ様の従者をしています、エマ・グレイフォードと申します。この度は我が主を救っていただき、ありがとうございます。よろしければ、知っていることを全てお教え願いたいのですが」

 私たちは互いに自己紹介をしてから、事情を説明し始めた。

「……そうですか。恐らくはテスタ宰相の仕業」

「襲撃者を死なせてしまって申し訳ございません。もっと注意深く観察していれば……」

 私が謝罪するが、ヴィレッタは首を横に振る。

「いえ、ローゼ様たちがいなければ、わたくしもエマも死んでいたでしょう。それに、貴女たちを巻き込んでしまったのはわたくしの事情でございます」

 ……ローゼ様って。
 10年前に同じように呼ばれた光景をフッと脳裏に浮かべてしまう。

「もしよろしければ当分の間、わたくしの護衛をお願いできないでしょうか? もちろん報酬は支払います」

「当然やるわ! でしょ? ローゼ」

「う……うん」

 ベレニスの即答につられて頷いてしまう。
 ……もう、ベレニスったら。でも正直私も同じ気持ちだ。

 ヴィレッタに正体を打ち明けられなくても、せめて彼女が幸せになるように護りたい。

「それは僥倖です。きっと女神様は祝福なさるでしょう。冒険者の皆様、ギルドに出していた依頼は残念な結末ですが達成されました。報酬を受け取ってくださいまし。……この件の報告も教会から王城へ届けましょう」

 ジーニアの、背中に鳥肌が立つ程の微笑む姿が視界に入ってくる。

「いえ、報告は我らレスティア家が行いますので不要でございます。申し訳ありませんが、遺体の保管だけお願いできないでしょうか?」

「承知しました公爵令嬢様。では皆様。女神の祝福があらんことを」

 教会を去り、エマさんは王城へと向かい、私たちはヴィレッタと共に屋敷へと向かう。

 ふう……リョウが馬車の御者をできて良かったよ。
 さすがは公爵令嬢所有の馬車。
 商人の幌馬車や乗り合い馬車と違って乗り心地が凄く良い。

 ベレニスはウキウキして窓の外を眺めている。
 まあ、その気持ちもわからなくはないけどね。
 私も似たような気分だから。

 だって10年ぶりに再会できたんだもの。
 ヴィレッタは私の正体に疑問を抱いていると思う。
 でもそれを口にしないのは、私が王女だと明かさないからだろう。
 だから私も正体を打ち明けないつもりだよ。
 ……巻き込ませたくないから。

「ローゼ様」

「は、はいヴィレッタ様?」

 急にヴィレッタに話しかけられて、思わず声が裏返ってしまった。
 恥ずかしい……
 するとヴィレッタがクスッと笑う。

 うう……笑われたあ……
 でも、その笑顔は10年前によく見ていた彼女の笑顔でちょっと嬉しいかも。

「護衛をお願いした身として厚かましいのですが、もう一つ頼みごとをしてもよろしいでしょうか?」

 私とフィーリアが目を合わせる。
 何だろう? ……まあ、ヴィレッタのお願いなら聞かないわけにはいかないけどね。

「護衛の間、わたくしをヴィレッタとお呼びください。公爵令嬢とはいえ、わたくしはまだ学生の身分です。貴女たちのような対等な友人が欲しいのです」

 は? 友人?……えっと、私とフィーリアは不思議そうにお互いの目を合わせる。

「私は構わないわよ。そもそも呼ぶ気なかったし。ヴィレッタ、美人だし」

 ベレニスが振り向きながらヴィレッタに笑いかけ、フィーリアもコクリと頷く。

「自分は、さん付けするっすね。見た目的にもタメ口は……年齢的にも先輩っすからね」

 それが本当かは知らないが、フィーリアらしいね。
 自称11歳の小柄なドワーフ少女は、語り終わってちょっとした沈黙が訪れると、肘で私を小突いてきた。

 その意味を理解する。
 私がまだ返答していないからだ。

「えっと……じゃあよろしくね。ヴィレッタ」

 私が照れながらそう答えると、ヴィレッタがこれぞ、ザ・公爵令嬢といわんばかりの微笑みを浮かべた。

 ……うう。可愛いなあ。

 だからこそ、この笑顔を曇らせるような事態は避けないとね。

 私は新たに決意をするのだった。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

貴方がLv1から2に上がるまでに必要な経験値は【6億4873万5213】だと宣言されたけどレベル1の状態でも実は最強な村娘!!

ルシェ(Twitter名はカイトGT)
ファンタジー
この世界の勇者達に道案内をして欲しいと言われ素直に従う村娘のケロナ。 その道中で【戦闘レベル】なる物の存在を知った彼女は教会でレベルアップに必要な経験値量を言われて唖然とする。 ケロナがたった1レベル上昇する為に必要な経験値は...なんと億越えだったのだ!!。 それを勇者パーティの面々に鼻で笑われてしまうケロナだったが彼女はめげない!!。 そもそも今の彼女は村娘で戦う必要がないから安心だよね?。 ※1話1話が物凄く短く500文字から1000文字程度で書かせていただくつもりです。

処理中です...