【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第3章 公爵令嬢の選択

第33話 戦いの外側で

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 ルインズベリー公爵家の惨劇跡地を、ニクラス公爵に任せたアデルは急ぎ教会へと向かった。

 照りつける日差しの中、静寂に佇む教会は普段と変わらぬ外見で存在しているが、アデルは奇異に感じた。

「おかしい。王都で公爵邸が燃え、多くの犠牲者が出たというのに、司祭もシスターも様子すら確認しに来ないとは」

 アデルは教会の扉をノックする。
 だが、中からの返答はない。

 もう一度ノックするがやはり反応がない。
 先行して、レスティア公爵令嬢が護衛の冒険者と共にここに向かったはずなのに、なぜいないのか?

「突入するぞ。戦闘準備!」

 兵たちに号令し、扉を開けようとするが、開かない。
 膂力は王国随一と自他共に認めるアデルですら、その扉はビクともしなかった。

 一度退き、体勢を整えて兵たちと再度試みるがやはり開かない。

 中からの応答もない。
 剣で、槍で、弓矢で攻撃しても、破壊音すらしないのだ。

「これは困ったが、異常事態が教会で起きているのは明白。敷地をくまなく探すのだ。侵入できるルートを調べよ」

 よじ登ってみたり穴を掘っての侵入も試すが、よじ登った者は一定の高さまで行くと出発点に戻り、穴を掘った者も膝が入るぐらい掘ると、出発点へ戻ってしまう。

「ふむう。誰ぞ王宮へ急使を頼む。儂ではお手上げだ」

 そう兵に告げるアデルの目に、金髪オールバックの少年が兵を率いて現れる姿が見えた。

「フハハ、アデル準男爵。お困りのようだな。どれ、俺の部下たちに任せて休んでろ」

 テスタ宰相の長子であるウイルヘルム公子だ。
 馬上から血走った眼で、アデルの言を待たずに手勢を動かしていった。

 なんでこの若僧がここに、と思うアデルへ、兵の1人が耳打ちする。

「陛下から余計な真似をさせず、アデル殿の指揮下に置くように、と」

「縛っておくしかあるまいな」

 アデルは少しだけ待った。
 もしかすると追い詰められた状況のウイルヘルムが、火事場の馬鹿力で現状を打破する可能性もあるやもと賭けたのだ。
 扉が開けば殴って気絶させればいいとも考えていた。

「ハアハアハア、駄目です。扉は開きません!」

「こ、この役立たずが! シャイニング家存亡の危機なんだぞ! 駄目と口走ったり諦めたりした奴は、俺が斬り殺してやる! 見せしめだ! お前は殺す‼」

 報告した部下に、ウイルヘルムは剣を向けた。

 振り降ろされる剣に、怯え諦めるシャイニング公爵家の兵。
 しかし、その剣はアデルが弾き飛ばした。

「き、貴様! 平民の分際で俺に逆らう気か!」

「ここの指揮権は儂にあります。儂の命に従わぬなら軍の掟で処刑しますぞ」

 ウイルヘルムを睨み付けアデルは言う。

 一瞬怯むも、まだプライドからか、ウイルヘルムは再度剣を振るおうとする。
 だが、アデルの剣気に当てられ、腰から崩れ落ちた。

 アデルは剣を鞘に収めて、部下の兵が持ってきた手拭いをウイルヘルムに渡して汗を拭くように促した。

「功を焦るお気持ちはわかりますが落ち着かれよ。公子は何もせぬのが無難と思われますぞ」

「ひっ!……わ、わかった。お、大人しくしている」

 その様子を見て、アデルはこれなら縛っておく必要もあるまいと判断し、待機を命じた。

 いくらこ奴が愚かでも、手柄を横取りするための無茶をしないだろうと確信し、教会の方に目を向け、思案する。

 そこへ、トールが2人の男女を連れて歩いてきた。

「クスクス。不可侵結界ね。また随分凝っているわね」

「使えそうな魔導具は持ってきたが、何か役立てるか?」

「そうね。……通信魔法を増幅させるのはあるかしら?」

「ほらよ。やるならフィーリアが適任だろう」

「そうね……でもジーニアはきっと頭のキレるフィーリアちゃんを警戒しているわ。それはローゼちゃんも同じ。ベレニスちゃんは顔に出ちゃいそうだし……だからあえて傭兵クンにしようかしら? クスクス、この魔導具なら、魔力の流れを読む天賦の才の持ち主でなければ気づかれないわね。ローゼちゃんも気づかなそう」

 男女が会話している中、アデルはトールにこの2人の素性を尋ねた。

「魔女のディアナと商人のヘクター。私が協力を要請した民間人です」

「魔女ディアナ? ああ、ビオレールの騒動の」

 どういった経緯で今ここにいるのかは知らぬが、これは任せたほうがよさそうだとアデルは判断した。

 そして魔女ディアナの妖艶な肢体が発光し、アランの傭兵リョウ・アルバースに問いかける声が響く。

「心で念じるだけでいいわ。気取られないように。……ええ………そう、魔法陣はどんな紋様かしら? …………破壊をお願いできるかしら? それが突破口よ。⁉……気づかれた‼ この魔力は……」

 その言葉が終わると、魔女ディアナの発光は治まり、冷や汗が一雫流れ落ちた。

「あの少年はなんと?」

「状況は最悪ね。傭兵クンは、同じアランの傭兵のオルガ・フーガと一騎討ち。ローゼちゃんたちは、魔族に変えられたポール公子の魔力弾に防戦一方。……そしてポール公子の妹のシャルロッテ公女は人質としてジーニアに確保され、魔法陣を描かれて眠らされているそうよ」

「なんと……」

 悪夢のような情報の多さに、アデルは思わず立ち眩みを感じた。

「大丈夫かディアナ? 気づかれたのは誰にだ?」

 ヘクターの問いに、ディアナは悲しげに教会を見た。

「何とかなるか?」

 トールの問いにディアナは首を横に振る。

「こればっかりは2つの未来しかないわ。成功するか全滅するかのね。……クスクス。でも私は成功するほうに賭けるわ」

 ディアナの微笑みは勝利を確信しているようであり、そしてどこか寂しさを感じるものであった。
 
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