【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第3章 公爵令嬢の選択

第39話 ヴィレッタの選択(後編)

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 そして、謁見の時間がやってきた。
 私たち5人は王宮へ赴き、案内に従って謁見の間に通された。

 赤い絨毯が敷き詰められた中央の道。
 両脇にずらりと並んだ貴族や衛兵たちからの好奇の目が注がれる。
 玉座に控えるのは、壮年の王、サリウス叔父さん。
 その横には近衛隊長の青年王族ラシル。

 前方にはニクラス新宰相や王の秘書官であるトールさん、テシウスさんがいる。

 王の前に辿り着くと、私たちは片膝をついて臣下の礼をとった。
 王は軽く頷き、トールが一歩前に出て私たちの紹介を始めた。

「右手から、アランの傭兵のリョウ・アルバース。魔女のローゼ・スノッサ。中央に控えますは、我らが王国の公爵家レスティア家の御令嬢ヴィレッタ。冒険者にしてエルフ族のベレニス。商人のフィーリア・メルトダ。以上5名が此度のルインズベリー公爵邸の惨劇、及び教会での邪教との戦いにおいて、多大なる貢献をした者たちであります」

「うむ。被害を最小限に抑えたこと、国を代表して礼を言う。褒美として、可能な限りの要求を聞こう」

 へえ、都合がいい。王が私たちに褒美として何を欲するか聞くなんて。

 多分、すでに褒賞の目録を準備しているんだろうけど、民間人だからと差別しない度量の広い王を演じて、内外にアピールするつもりかな?

 いや、穿ちすぎか。元々サリウス叔父さんてお人好しなところがあったからなあ~。

「こちら側から考えている報酬として、ヴィレッタ様は側室ではなく正妃として陛下に嫁いでいただき、リョウ殿ら4人の皆様には大金貨100枚と、望むのであれば爵位以上の階級で王国へ迎えたく存じます」

 テシウスさんがそう告げると、謁見の間にどよめきが起きた。

「だ、大金貨ひゃく……」

 ヤバい。ベレニスが金銭欲に目が眩んでいる。

「こりゃまた凄い条件を出してきたっすねえ。爵位は辞退しても誰も文句は言わないでしょうっすけど、お金も受け取らなかったら、『なんだこいつらは』って思われ、反感を買うかもっす」

 小声で、それでもやるんすよね? とフィーリアは私に確認してきた。

 頷く私を見て、リョウもヴィレッタもベレニスも私が発言するのを待っている。
 さあ、ここからが私の舞台の始まりだ!

 伏し目で待機しているけど、わかっているぞ?
 サリウス叔父さんもラシルも、あっ、これ間違いなく10年前に死んだはずのローゼマリーじゃないか? これ? って視線で見てきているのを。

 ならどうする? 何を言ってきて、こっちを驚かせるのかってね。

 ここからの私の発言で、私たちの運命は大きく変わっていくだろう。
 さあ、言うぞ?……言っちゃうぞ?

 私は発言をする許可を求めると、サリウス王は軽く頷いた。

「発言を許可していただき、ありがとうございます。過分なる褒美と陛下からの御言葉、大変嬉しく思います。しかし私たちはそれを受け取れません。別の報酬を頂きたく存じます」

 何を言うんだと貴族たちが騒ぎ出す中、サリウス叔父さんが怪訝な顔で私に問うてきた。

「ほう、何を望む?」

 私は、すうっと息を吸い込んでから言う。

「はい。ヴィレッタ・レスティア公爵令嬢様を望みます」

 その場の時間が止まったように、静寂がその場を支配した。

 一呼吸置いてから、ニクラス新宰相が顔を真っ赤にして喚き出す。

「ぶ、無礼な! 陛下の奥方になられる方を欲するとは‼ 陛下の御判断を疑うのか! 不敬にも程がある!」

 そうだそうだと騒ぐ周りの貴族たち。
 まあ、予想の範囲内。

「失礼ながら、ベルガー王国の皆様に問います! これからもヴィレッタを狙い、邪教があの手この手で狙ってくるでしょう! 神聖魔法の大いなる使い手に覚醒し、他国からも狙われるヴィレッタを命を賭して守りきれますか⁉」

 私の大喝に静まり返る謁見の間。
 しばしの沈黙の後、ヴィレッタが静かに言い放つ。

「レスティア公爵の家名から、籍を外す覚悟はできております。どうかわたくしを、こちらに控える方々の旅に同行させてくださいませ」

 その凛と透き通る声に、貴族たちはヴィレッタの覚悟を悟る。

「フフフ、ハッハッハッ。いやこりゃ愉快だ。まさかそう出てくるとはね。陛下、いかがいたします? 僕としては、その条件を飲む代わりに褒美はなし、王都のレスティア家の全財産を没収、及び彼らの旅で陛下や民に害する情報を得たら、王の名の下で腕を奮ってもらう。この条件でなら許可できると愚考しますが」

 何を言い出しやがる。ラシル‼

 前の2つは予想の範囲内だけど、王の名の下で腕を奮う? なんじゃそりゃ~。

「面白い提案です。彼らの今後の活躍は、陛下のお墨付きを与えるということ。ただ、権力を笠に着て好き勝手されては困りますので、陛下の名ではなく、王国自由騎士の称号をヴィレッタ様に授けるのは如何でしょう?」

 すかさず、テシウスさんがラシルの荒唐無稽な案を即興で修正して告げた。

 自由騎士?

「自由騎士ですか?」

 ヴィレッタもキョトンとする。

「自由騎士とは王国の枠を超え、独自に活動を許された者に与えられる称号です。超法規的な存在であり、陛下の判断を待たずに行動できます」

 わざと簡単に説明したなテシウスさん。

 要は王侯貴族や領主の許可が必要な探索も救援活動も、政治的陰謀の究明も、敵対勢力との戦闘も、さらに他国で旅をしたなら外交交渉すら可能な存在。

 つまり、王や宰相の監視下を外れた自由行動が許されるという破格の待遇だ。

 でもそれって……もしかしたらベルガー王国が表向きに活動できない、私の両親である先王と先王妃の死の真相を暴く手伝いを、ヴィレッタに託したのではないだろうか?

 私はテシウスさんに目で問うと、無表情のまま頷かれた。

 そういうことでいいんですね。

「ハッハッハ。麗しき少女に騎士の称号とは、まるで物語か舞台劇でも見ている気分よ。余は賛成だ。反対の者はおるか?」

 サリウス王の大らかな笑い声が広間に響く。

 貴族たちはお互いに顔を見合わせてざわつくばかりで、挙手はなし。

 こうしてヴィレッタは公爵令嬢から自由騎士と身分を変え、私たちの旅に同行することになったのであった。
 
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