【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第4章 竜は泉で静かに踊る

第9話 女子全員仲間?

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 やっぱり、毎日お風呂に入れるっていいわ~。
 なんていうか、身体から余計な力が抜けるというか。
 はあぁ~、癒されるわぁ~。
 女子6人が入っても、こうして伸び伸びと足を伸ばせるお風呂って最高。

 クリスはキョロキョロして、みんなの真似をして入る姿がなんか微笑ましい。
 ヴィレッタもフィーリアもベレニスもララノアさんも、最初は緊張や恐怖でガチガチになっていたのに、今はリラックスして湯船に浸かっているのだ。

 これぞ、お風呂の魔性の魅力!

 湯気が立ち込める中、水滴が木の壁を伝い落ちる音が心地よく響いている。
 ほのかに香る薬草の匂いが、リラックスした雰囲気を一層深めてくれるよ~。

 それにしても、クリスはドラルゴの娘かあ。
 たしかに赤い髪は赤竜を連想させるかも。
 ただ、未だ竜の姿を見ていないから、いまいちピンとこないんだよね~。

「あれ~? そういえばリョウがいないね~。お風呂の場所わかんなかったのかな~? ちょっと呼んでくるね~」

 ちょっ⁉ 何を言い出して……裸で行っちゃダメーー!
 慌ててクリスを引き留めた私だった。

「ん~? な~にローゼ?」

「あのね。リョウは男なの!」

「アハハ、知ってるよ~」

「⁉ 私たちは女の子! 裸を見られたら恥ずかしいでしょ!」

 きょとんとして『何を言っているの?』みたいな反応に焦る。
 いくらクリスが赤竜とはいえ、さすがに女の子と男の子の恥じらいとかあるでしょ!

「あの、クリス。それはわたくしも困ります。リョウ様に裸を見られたら……死んでもらうしか解決方法がございません!」

 ヴィレッタが顔を真っ赤にしながら言うが、いやいや、他に解決方法はあるでしょ?

「あのねえ。あれはむっつりなの。私たちの裸を見たら絶対襲ってくるの。傭兵に襲われるなんて、クリスも嫌でしょ!」

 お~い、ベレニス。リョウはそんなことはしないぞ?
 何度か見られたけど何もなかったぞ?
 それはそれで、なんかムカついてきたけど。

「襲う? あ~交尾か~。まああれでいいか~。メンドイし」

 はい? 何を言っているんだ、クリス?

「冷静に話しましょうか、クリス」

「⁉ ロ、ローゼ? なんか怖いよ」

 私はクリスの両肩をガッシリ掴んで、真っ直ぐに目を見据える。

「自分やベレニスさんたちエルフが怯えるクリスさんを怯えさせるローゼさん……やっぱ凄いっす」

 うるさいフィーリア! 今はそれどころじゃないの!

「あの、クリス。そそそその、リョウ様と結婚したいということでしょうか?」

 ヴィレッタもクリスの爆弾発言に焦っている。

「ん~。別につがいになるのはいいや~。子育ては私がするよ~」

 ヤバい。理解できん。

「要するにリョウ様の子供を身籠りたいってことっすかあ? でも母親に言われたんすよね? いい男を見つけなさいと。本当にリョウ様でいいんすか?」

 フィーリア! ちょっと発言がアレだが、ナイスタイミングなフォロー。

 さあどうなのクリス。
 ほらほら~、リョウよりイケメンがいっぱいこのエルフの里にはいるんだぞ!

「泉で私の裸を見て~、交尾準備できてたし~、リョウは私にビビってないしちょうどいいかな~って思っただけだよ~」

 はあ。やっぱりクリスは理解していない。
 どうしよう。このままじゃ私の胃がもたないぞ。

「フッ。クリス。いかに赤竜とは言っても、世間を知らないお子ちゃまね。いい? 傭兵はすでに私たちの物なのよ。それを頂戴するというのは、相応の対価が必要なの。簡単に奪えると思わないことね!」

 ベレニス……物扱いはダメだぞ?
 ちゃんとクリスに説明しないと。
 リョウは私たちの仲間で、大切な前衛なんだって。

「いい? 傭兵が欲しいなら、まず私たちの仲間になりなさい! 特に私の言うことはよく聞くように。そうすれば、ローゼが子供を産んだ後なら大丈夫かもよ」

「そうそう。ベレニスの言う通り私たちの仲間になって……って! 私が子供を産んだ後ならってなんじゃそりゃー‼」

 思わずベレニスをお湯に沈める。
 フィーリアはケラケラ笑っているし、ヴィレッタとララノアさんは赤面して会話に混ざらないよう徹しているし。

 そこで何か思いついたのかクリスが手をポンとした。

「あ~。リョウとローゼって~、つがいだったの~?」

 はい? つがい? クリスが私の胸を見て、下を見て……ってどこを見ているんだ!

「でもローゼからは……なんて言うんだっけかな~。交尾経験ないっての~」

 ボッと顔が火照る。
 ええ確かにないですけど何か⁉
 リョウとはそんな関係じゃないし!
 って何を思わせるんだーー‼

「この場にいるの全員そうだね~。ハハハ、仲間仲間~」

 ……仲間の意味がなんか違う!
 ダメだ。クリスのペースに飲まれている。
 このままじゃマズイぞ。

「フッ。クリス、わかってないわね。初体験はね、いい男を捕まえるために取っておくのよ」

 おい! ベレニスは初体験をなんだと思っているの⁉
 そんな駆け引きみたいに考えているんじゃありません!
 クリスもなんか興味深そうに頷いているし。

 はあ、もう好きにして。
 私は先に出るよ……

 ヴィレッタと2人で湯船から上がり、脱衣所に向かうと、ララノアさんがタオルを持ってきてくれた。
 お礼を言って身体を拭いていると、ララノアさんが微笑んでくる。

「ベレニス様は楽しそうで何よりです。きっと出逢えたのが貴女方でよかったのですね」

 ララノアさんは感慨深そうに瞳を閉じた。

「聞くタイミングがなかったのですが、ベレニスの御両親は存命ではないのでしょうか?」

 ヴィレッタの質問に、ララノアさんは静かに首を振った。

「初めてお会いした時に告げた通りです。ベレニス様はフォレスタ様の生まれ変わりです」

「いや、そうだとしても親はいるでしょ?」

 ツッコミつつもララノアさんの反応で、まさかと、ある神話を思い出す。
 七英雄フォレスタの出生秘話だ。

「ええ、そうです。フォレスタ様と同じく先の女王が森へと還り、光の粒子が天空へ舞っていきました。光の粒子が世界樹の周りを舞い、まるで生命の息吹そのものが形を成すかのように、ゆっくりと赤子の姿に変わっていったのです。それがベレニス様なのです」

 神話の再来。
 女神の加護と祝福を受けた、エルフを統べる王になるべく、現し世に降臨した奇跡の申し子。

 七英雄の1人であるフォレスタも、生まれた時から女神に愛された存在として仲間たちの大きな支えとなった。
 慈悲深き聖女として、精霊の頂点に立つエルフの女王として。

「ベレニスがそのような出自とは驚きです。でも、どうしてベレニスは里を飛び出したのでしょう? 里の皆様はベレニスを敬っていますし、誰もお止めにならなかったのでしょうか?」

 ヴィレッタの疑問に私は苦笑いした。

「いや、まあ……あの性格だし、どうせつまらないとか言って飛び出したんじゃない? そこはフォレスタの伝記と違うかな~。フォレスタはお淑やかで博識で知的で、人徳と慈愛に満ちた人物だったって聞くし」

 対してベレニスは、自分を中心に世界は回っているを我でいくタイプ。
 落ち着きもないし、何よりエルフの慎ましい暮らしが彼女に似合わないと思ったから。

「フフッ。人の世でどう伝わっているかは知りませんが、フォレスタ様もベレニス様みたいな性格でしたよ。私が御一緒したのは晩年の20年程ですが、フォレスタ様もよく無茶をなさっていました。しょっちゅう里を抜け出しては人の街で遊んでいましたし」

 ……なんとね。
 私が憧れて夢中になって読んでいた七英雄の物語。
 頭の中で描いていた映像がガラガラと崩れる音が鳴り響く。

 ドラルゴが女性だったのはまだいい。修正可能だ。
 けれど慈愛の象徴の聖女フォレスタがベレニスのような性格だったとは……

 ドワーフの里で七英雄のシュタイン王の手記を読んだが、そういえばフォレスタについて『あの女狐め! これだからエルフは……』って箇所が何個もあったっけ。
 ただ、エルフとドワーフは仲が悪いもんね~とそこら辺は話半分で読んでいたよ。

「なんでローゼ、崩れているの?」

 湯船から上がってきたベレニスが、不思議そうに私を覗いてくる。

「こういうローゼさんは、知識と真実が違った時のポーズっすね。何か聞いたんすか?」

 フィーリアも好奇心丸出しで覗き込んできた。
 知ったことを話すとベレニスはフンッと鼻で笑った。

「私は私よ! くっそどうでもいいわ」

「そっすねえ。ベレニスさんが大人しく慈愛に満ちた性格になったら、天が驚いて雷を鳴らしまくりそうっす」

「ちょっと、どーいう意味よ、フィーリア!」

 スッポンポンで口喧嘩をするなよ。風邪を引くぞ。
 でも、この性格も悪くないなって思うんだ。
 だって、ベレニスって可愛いしね♪

 クリスが湯船から上がり、リビングに向かおうとしていると、ララノアさんがタオルを持って追いかける。

「そのまま出ないでくださ~い」

 残った私たちは顔を見合わせて、笑ったのだった。
 
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