【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第4章 竜は泉で静かに踊る

第17話 英雄色を好む?

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 ラフィーネの街は、戦いの後とは思えないぐらい活気に満ち溢れていた。

 瓦礫の片付けや食料の配給は、駆けつけた近隣諸侯の部隊が担当し、民衆たちも協力しあい復興に取り組んでいる。

 その最中でも戦いの様子が人々から語られていて、私の耳にも多くの噂話が届いてきた。

「我らが姫殿下レオノール様のお陰よ」
「隣国ベルガーのアーノルド親子が凄かったぜ」
「リザードマンがこっちに味方して強かったよ」
「魔女の魔法を放つ姿が美しかったなあ」
「可愛いエルフの少女の風の精霊魔法に見惚れたよ」
「聖女様の神聖魔法で俺も助かったぜ」
「魔導具を駆使した怪力のちびっ子……ヤバかったわ」

 おお! 私たちの噂もあるぞ!
 ムフン♪ こういうのを求めているわけじゃないけど、嬉しいかも。

「だが、やっぱり別格だったのはアランの傭兵の2人だなあ。ただテレサ様は全体指揮も兼ねていたし、レオノール姫殿下を護るのを優先していたからなあ。だから俺は今回の戦いで一番の武勲はリョウ・アルバースを推すぜ!」

「うんうん、アーノルド親子も凄かったが参戦したのは後半からだからな。俺もそう思うぜ」

「リョウ・アルバースの縦横無尽の剣捌き凄かったなあ。俺も命を拾われた1人よ」

「ダーランドの麻薬戦争や、ベルンの気味悪い事件でも大活躍していたんだろ? 年齢もまだ17歳。将来が楽しみだぜ」

 おお! リョウの名前を挙げる人が多い!
 フフン♪ 思わず嬉しくなり、自然と口角が上がってしまう。

「ただよ、そいつは女癖が悪いらしいぜ? あっちこっちで女を引っかけては侍らせているそうだぜ? ベルガー王の婚約者だった公爵令嬢様を騙して破談させて、自分のものにしたって話だ」

「ほへえ、英雄色を好むっつーけど、それはヤベえな」

 んん? なんか変な方向に話が向かっていない?

「うちの娘も狙われたりしてな……おっそろしい」

「わっはっは、まだ10歳だろ、大丈夫じゃね?」

「いや、魔導具使いのちびっ子いただろ? あの娘も毎晩リョウ・アルバースに抱かれているらしいぞ」

「ま、マジかよ。あんな小さな娘に毎晩とか、マジ鬼畜じゃねえか。ヤベえな」

 ちょっ⁉ なんじゃその間違った噂は⁉

「我らが姫殿下が、リョウ・アルバースの毒牙に掛からないように願うぜ」

 そんなおっさんたちの話を耳にして、レオノールが私たちに驚いた顔をして口を開いたのであった。

「な、なんと! とんでもない男だったんですね! あれ? ですが皆さん生娘だとのこと。これは一体どういうことなんでしょう!」

 ああもう! 大声を出すな!

「フィーリア……あんた……」

 ベレニスが青ざめてフィーリアを見ているが、リョウがそんな男じゃないのはわかっているでしょうが!
 フィーリアも意味深に笑うな!

「世評の噂話なんてこういうものです。真に受ける人は今後も多く出るでしょうが、わたくしは別に構いません。言わせたい人には言わせておけばよいのです」

 ヴィレッタは大人だなあ。
 ……いや、これリョウが犠牲者だよね?

「まあ自分らが側にいるのは事実っすからねえ。でもリョウ様の知名度が上がるのはいいことっす」

 フィーリア……喜んでいるが、これ悪名だよ?

 そうして配給所で食事を受け取って、リョウはいるかな? と探すと、すぐに見つかった。
 ラシルと一緒か、邪魔だなあ。
 アデルとザイルーガも同じテーブルに座っていた。

「これはレオノール姫殿下、おはようございます。ヴィレッタちゃん、それにベレニスちゃんにフィーリアちゃん……ローゼちゃんもおはよう」

 おい、このクソ従兄妹、私を呼ぶのに躊躇しただろ。

「ラシル殿下。アーノルド様。異郷の地にて再会できたことを嬉しく思います」

 一応ラシルはベルガー王国の王族だから、顔を引きつりながらスカートの裾を摘まんで挨拶はしてやった。

 私とラシルの目から出る火花に、ザイルーガが口をパクパクさせたのは言うまでもない。

「何か話されていたのでありますか! ファインダ代表として、私にも話の内容を教えてくだされ!」

 私とラシルの火花に気づきもせず、レオノールはテンション高くして、男性陣にキラキラとした笑顔を振り撒いた。

 私とレオノールの違いはこういう性格かな?
 レオノールと違って、私はいつも冷静で考えてから言葉を紡ぐから。

「いえ、ザイルーガさんの嫁の愚痴や、アデル殿の亡くなった妻との思い出話がメインでしたので、お気になさらず」

 ラシルは優雅に紅茶を口に含んだ。

 ほほう? ザイルーガのくせに嫁がいたんだ。
 てか愚痴ってなんだ?
 リョウに変な話を聞かせていないだろうな~。

「おお! 興味深いです! ですがリョウ様は気分が悪いご様子。どうかなされたのでしょうか⁉」

「ああ、俺が嫁に奴隷のようにこき使われたり、『あんたいたの?』とか『メスの気持ちがわからないロクデナシ』とか言われたのに、リョウもフラッシュバックしたようだな。こいつも苦労しているんだってのがわかるさ」

 フッと遠い目をしながら、ザイルーガはリョウの背中を叩いた。

 なんだこのいい場面風。
 めっちゃどうでもいいぞ。

「アデル殿の純愛話はとても参考になりました。死別してなお、夢にて妻と剣を交じらせ戦われるほどの想いに、このラシル・ブリュンヒルド感銘しました」

 それ感銘するのか?

「ラシル殿下は縁談を尽く断っておりまして、我が国の貴族たちから不満の声が出ているのです。ゆえにこのような話をしていたんです」

「リョウもメス……女性経験ゼロだって言うしアドバイスよアドバイス」

 アデルとザイルーガが満足げに呟くが、どっちも参考にならんでしょ。

「ふむふむ。リョウ様はともかく、ラシル殿がご結婚なさらないと、立場的に私との縁談を進めようとする勢力が出てきそうですね! それは困るので、是非お早めにご結婚されるのをおすすめします!」

 レオノールがとんでもないことを言い出した。
 お~い。悪気はないんだろうけど、それはさすがにラシルとはいえ失礼だぞ。

 ここは私が一肌脱いで、レオノールにラシルがどういう人物かと教えておきますか。

「レオノール様。ラシル殿下は腹黒いのです。ですので、もう少し言葉を選ばないと利用される恐れがあります。ここは私に任せてください」

 元ベルガー王女の正体を隠している私だ。
 側仕えの侍女のように貞淑に振る舞って、レオノールの耳に小声で告げる私だった……のだが?

「な、なんと! ラシル殿は腹黒なのですか姉様! たしかにめちゃくちゃイケメンで、姉様にも似ていますしね! それと敬語は不要ですぞ姉様! 先程までのように話してください!」

 とりあえず、ポカリとレオノールの頭を叩く!

 この脳筋があ、なんで大声で言っちゃうかなあ。
 それとラシルが腹黒いから、私と似ているってどういう意味だ~。

「痛いです! 姉さ……もぎゅ」

 とりあえず、レオノールの口を封じなければなるまい!

「フッ。私にはわかったわ。ラシルは傭兵と同じでヘタレの類ね。ローゼもそうだし」

 ベ~レ~ニ~ス~。あんたも話を余計にややこしくするな!

「違うっすよ、ベレニスさん。ラシル殿下は選び放題っす。そこはリョウ様と違うっすよ」

「そうです、ラシル殿下は選り好みしているだけです。対して、リョウ様は選ぶ権利すらありません」

 お~い、フィーリアにヴィレッタ?
 リョウとラシルがガチで落ち込んだんだけど⁉

 ザイルーガもアデルも、慰めの言葉を必死に探しているが、何も浮かばないって顔をしているぞ⁉

「と、とにかく! ラシル殿下は好きな女性を権力行使して部下にしちゃう人ですし、もう一押しで大丈夫ですよ♪」

「ちょっ⁉ ローゼマ……ローゼちゃん⁉」

 あっ、しまった。つい、うっかり口にしてしまった。
 でも私の想像通りか。このバカ従兄妹め。

「ほほう? そのような女性が? ラシル殿下、ご相談なら是非このアデルへ。力になりますぞ」

「ええと……はあ……よろしくお願いします。アデル殿」

 アデルも鈍いしなあ。絶対、今の会話から、ラシルの想い人が自分の娘だって想像もしていないだろ。

 ラシルは一瞬私を睨んだが、ここはあえてスルーしよう。
 まあいいじゃない。一歩前進ってことで。

「話は変わりますが、今の状況はどうなっているのでしょう? 隣国の地にて軍を展開させていますが、これまでの経緯と今後の方針をお教え願いたいです」

 ヴィレッタが真面目な顔つきをラシルに向ける。

 ラシルはコクリと頷くと、語りだすのであった。
 
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