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第4章 竜は泉で静かに踊る
第30話 全滅の森
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―大陸暦1117年11月―
とこしえの森の奥地。
憮然とした表情でノイズは剣を鞘にし、顎の無精髭を擦り、試しに火を熾して近くの木に放った。
木は燃えず火が消失し、蔦は出現しなかった。
「炎魔法だけに反応するわけか。魔女のババアどもめ、教えておけや。人が入ったら出られなくなるといい、この森は、未だ残り続ける神話の化け物たる木々ばかりだなこりゃ。はあ、参ったね。一応、生きてそうなのに聞いて回るか」
倒れているエルフやリザードマンの種族から、まだ息のある者を探すノイズは、最初にローゼへ炎魔法の危険性を叫んだララノアに近づいた。
「なあ、教えてくれね? リョウたちは出てくるのか? 意外と、森の外に放り出されただけってオチかい? おっと! ちゃんと知っていることを言えよ。息のある奴らを、プスリと刺して回るなんて面倒くせえことをさせるなよ」
面倒と言いつつ、この男は必ず実行するだろう。
そう感じたララノアは観念して喋った。
「木々に飲み込まれ、消え去った者が戻ってきた事例はありません。……ベレニス様も……無事では済まないでしょう……」
涙を零すララノアに、ノイズはつまらなそうに鼻を鳴らすも、その言葉の意味を理解して目を見開いた。
「待て。ベレニス? そいつは長耳の小娘の名だったな」
ノイズの眼前で消えたのは、リョウと元王女の魔女、それにファインダの王女と小人族の小娘だけのはず。
「あらら。聖女ちゃんも赤竜ちゃんも消えてやがんの。……つまり、対象者の仲間は道連れって訳か。神とかお偉いさんて、連帯責任が好きだよなあ。ちぇっ、こりゃ潮時かねえ」
「待て……ノイズという人の男……どうやって人の身で、我らが森を行き来している⁉」
ララノアの問いにノイズは顎を擦りながら答える。
「答える義理はねえわなあ」
言いつつ、もうすぐ朝日が昇るだろう空を見上げた。
(気分的にまだいたほうがいいと感じるが……まあ、これ以上余計なことをするとババアどもがブチギレそうだな。いっそ血管がブチ切れて、お陀仏するか試すのもアリだが)
神話に出るような木々の精霊の仕業を思案しても無駄と早々に思考を投げ捨て、ノイズは歩き出した。
「貴様のような危険人物を放置しておくわけにはいかぬ」
「え~っと。たしかクーリンディアって呼ばれていたっけ? おいおい、冗談はよせよ。大人しく地べたへ這いつくばってろよ」
「おのれ!」
ララノアも立ち上がり、ノイズの背後へ攻撃していった。
だがノイズの剣が一閃され、血飛沫をあげた2人のエルフは肉塊と化した。
最期の生き残りであったエルフ2人の目の光が消えていくのを見つつ、ノイズはあくびをした。
「酒でも買って帰るか……ん? リリとロロか? どうしたぁ?」
ノイズの前に現れたのは魔女の少女2人。
黒のゴスロリ服に金髪ツインテール、右眼に眼帯をしているのがリリ。
白のゴスロリ服に銀髪ツインテール、左眼に眼帯をしているのがロロ。
10代半ばの双子の魔女だ。
リリとロロの周りには、目に見えない魔力が渦巻いている。
まるで鏡に映った像のように2人の動きは完全に同調し、その無表情な顔は人間離れした冷たさが感じられた。
「ノイズ様、エルフとリザードマンの魂の回収は失敗した」
リリが無表情で告げた。
「エルフの里の世界樹、あれに邪魔された」
ロロも無表情で告げた。
「……そうかい。摩訶不思議な森だ。そういうところなんだと、受け入れるしかねえなこりゃ」
ノイズは再びあくびをした。
過去の失敗に、いちいちこだわっても仕方がないのだ。
「ノイズ様、余計なことをしてローレル様たちきっと怒ってる」
「アロマティカス様も、魔女と聖女とエルフの死は望んでなかった」
「魔獣どもの魂で、十分成果はあるってチャービル様も言っていた」
「褒美に力を与えたんだ、当面お酒を飲んでいる生活をしてろって、タイム様が言っていた」
「どうせ行くのなら、フェンネル様はルシエンを死に追いやったリョウ・アルバースの首を持ってこいって言っていたけど、ノイズ様は失敗した」
「マツバ様が戻ってこいって言っている」
「「褒美を取り上げるぞとも言っている」」
代わる代わる言うリリとロロの淡々とした声が最後にハモる。
ノイズは舌打ちした。
「ハイハイ、ごめんなさいごめんなさい。つーか、俺付きの魔女になったんだから、敬語を使えやクソガキども」
リョウたちに敗北して自害したルシエンといい、魔女ってのはどうして自分勝手でワガママなのかねえと、ノイズは嘆息もする。
「私たちは先に帰る」
「お酒を買って帰ろうとするノイズ様と一緒にいたくない」
そう言って、リリとロロは消えた。
「はあ~あ。ルシエンがマシだったぜ、まったくよ~」
頬をポリポリ搔くノイズだったが、信じられない気配を察知し、森へと凝視した。
「ん? 馬蹄? こんな木で埋め尽くされた森に?」
ノイズは馬蹄の響く方を見て爆笑した。
「プハッ、頭がイカれているだろ! 王様が来るか普通! しかも馬を全力疾走させて森に突入だと⁉ 単騎ってあれかい? 部下はついて来れなかったってオチだろ。おいおいおい、知らねえのか? 人がこの森に入ったら出られないってのをよっ‼」
轟音とともに馬蹄の音が響かせ、木々を縫うように疾走してくる馬上には、怒りに満ちた表情のラインハルト王の姿があった。
その眼差しには、決死の覚悟と共に、深い悲しみの色が宿っていた。
エルフとリザードマンの遺体が散乱する様子は、この神秘的な森の中で異様な光景を作り出している。
「……エルフとリザードマンの死体たち……間に合わなかったか……王都での再戦をしよう! ノイズ・グレゴリオ!」
木々の間から漏れる朝日が、無惨な戦いの跡を浮かび上がらせている中で、ラインハルト王とノイズの再戦が始まった。
とこしえの森の奥地。
憮然とした表情でノイズは剣を鞘にし、顎の無精髭を擦り、試しに火を熾して近くの木に放った。
木は燃えず火が消失し、蔦は出現しなかった。
「炎魔法だけに反応するわけか。魔女のババアどもめ、教えておけや。人が入ったら出られなくなるといい、この森は、未だ残り続ける神話の化け物たる木々ばかりだなこりゃ。はあ、参ったね。一応、生きてそうなのに聞いて回るか」
倒れているエルフやリザードマンの種族から、まだ息のある者を探すノイズは、最初にローゼへ炎魔法の危険性を叫んだララノアに近づいた。
「なあ、教えてくれね? リョウたちは出てくるのか? 意外と、森の外に放り出されただけってオチかい? おっと! ちゃんと知っていることを言えよ。息のある奴らを、プスリと刺して回るなんて面倒くせえことをさせるなよ」
面倒と言いつつ、この男は必ず実行するだろう。
そう感じたララノアは観念して喋った。
「木々に飲み込まれ、消え去った者が戻ってきた事例はありません。……ベレニス様も……無事では済まないでしょう……」
涙を零すララノアに、ノイズはつまらなそうに鼻を鳴らすも、その言葉の意味を理解して目を見開いた。
「待て。ベレニス? そいつは長耳の小娘の名だったな」
ノイズの眼前で消えたのは、リョウと元王女の魔女、それにファインダの王女と小人族の小娘だけのはず。
「あらら。聖女ちゃんも赤竜ちゃんも消えてやがんの。……つまり、対象者の仲間は道連れって訳か。神とかお偉いさんて、連帯責任が好きだよなあ。ちぇっ、こりゃ潮時かねえ」
「待て……ノイズという人の男……どうやって人の身で、我らが森を行き来している⁉」
ララノアの問いにノイズは顎を擦りながら答える。
「答える義理はねえわなあ」
言いつつ、もうすぐ朝日が昇るだろう空を見上げた。
(気分的にまだいたほうがいいと感じるが……まあ、これ以上余計なことをするとババアどもがブチギレそうだな。いっそ血管がブチ切れて、お陀仏するか試すのもアリだが)
神話に出るような木々の精霊の仕業を思案しても無駄と早々に思考を投げ捨て、ノイズは歩き出した。
「貴様のような危険人物を放置しておくわけにはいかぬ」
「え~っと。たしかクーリンディアって呼ばれていたっけ? おいおい、冗談はよせよ。大人しく地べたへ這いつくばってろよ」
「おのれ!」
ララノアも立ち上がり、ノイズの背後へ攻撃していった。
だがノイズの剣が一閃され、血飛沫をあげた2人のエルフは肉塊と化した。
最期の生き残りであったエルフ2人の目の光が消えていくのを見つつ、ノイズはあくびをした。
「酒でも買って帰るか……ん? リリとロロか? どうしたぁ?」
ノイズの前に現れたのは魔女の少女2人。
黒のゴスロリ服に金髪ツインテール、右眼に眼帯をしているのがリリ。
白のゴスロリ服に銀髪ツインテール、左眼に眼帯をしているのがロロ。
10代半ばの双子の魔女だ。
リリとロロの周りには、目に見えない魔力が渦巻いている。
まるで鏡に映った像のように2人の動きは完全に同調し、その無表情な顔は人間離れした冷たさが感じられた。
「ノイズ様、エルフとリザードマンの魂の回収は失敗した」
リリが無表情で告げた。
「エルフの里の世界樹、あれに邪魔された」
ロロも無表情で告げた。
「……そうかい。摩訶不思議な森だ。そういうところなんだと、受け入れるしかねえなこりゃ」
ノイズは再びあくびをした。
過去の失敗に、いちいちこだわっても仕方がないのだ。
「ノイズ様、余計なことをしてローレル様たちきっと怒ってる」
「アロマティカス様も、魔女と聖女とエルフの死は望んでなかった」
「魔獣どもの魂で、十分成果はあるってチャービル様も言っていた」
「褒美に力を与えたんだ、当面お酒を飲んでいる生活をしてろって、タイム様が言っていた」
「どうせ行くのなら、フェンネル様はルシエンを死に追いやったリョウ・アルバースの首を持ってこいって言っていたけど、ノイズ様は失敗した」
「マツバ様が戻ってこいって言っている」
「「褒美を取り上げるぞとも言っている」」
代わる代わる言うリリとロロの淡々とした声が最後にハモる。
ノイズは舌打ちした。
「ハイハイ、ごめんなさいごめんなさい。つーか、俺付きの魔女になったんだから、敬語を使えやクソガキども」
リョウたちに敗北して自害したルシエンといい、魔女ってのはどうして自分勝手でワガママなのかねえと、ノイズは嘆息もする。
「私たちは先に帰る」
「お酒を買って帰ろうとするノイズ様と一緒にいたくない」
そう言って、リリとロロは消えた。
「はあ~あ。ルシエンがマシだったぜ、まったくよ~」
頬をポリポリ搔くノイズだったが、信じられない気配を察知し、森へと凝視した。
「ん? 馬蹄? こんな木で埋め尽くされた森に?」
ノイズは馬蹄の響く方を見て爆笑した。
「プハッ、頭がイカれているだろ! 王様が来るか普通! しかも馬を全力疾走させて森に突入だと⁉ 単騎ってあれかい? 部下はついて来れなかったってオチだろ。おいおいおい、知らねえのか? 人がこの森に入ったら出られないってのをよっ‼」
轟音とともに馬蹄の音が響かせ、木々を縫うように疾走してくる馬上には、怒りに満ちた表情のラインハルト王の姿があった。
その眼差しには、決死の覚悟と共に、深い悲しみの色が宿っていた。
エルフとリザードマンの遺体が散乱する様子は、この神秘的な森の中で異様な光景を作り出している。
「……エルフとリザードマンの死体たち……間に合わなかったか……王都での再戦をしよう! ノイズ・グレゴリオ!」
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