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第7章 絶望の鐘
第21話 ディンレル王国滅亡 生来の怠け者
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ササスは教会で、いつものように掃除をしていた。
ザックス神官が追放されてから、この教会を訪れる者は1人もいない。
それでも教会を綺麗に維持しようとしているのは、ザックスへの深い恩義からだ。
ただ、アリス姫とアニス姫が私費で教会の維持費を負担してくれなければ、ササスはとっくに飢え死にしているか、教会を捨てていただろうが。
「ヘヘ、グラベックさん。あっしは二日酔いなんてしませんので、ポーションの訪問販売は不要ですぜ」
久しぶりに顔馴染みのドワーフ工房店主グラベックが来訪し、ササスはいつもの軽口を叩く。
「おう、それは残念じゃ。ところでササスよ、儂も工房の仕事で忙しい日々を送っておったが、最近はどうじゃ?」
「へえ、真面目にやってますぜ。教会の掃除をして、残りの時間はチビチビ酒を呑んでますよ」
グラベックは苦笑いした。
教会の掃除など数時間もかからないだろう。
ザックスがいた頃は教会を訪れる人々の応対や、結婚式、葬式と、教会はフル稼働していた。
だが、神聖魔法を使える者や尊敬できる者がいなくなった今、教会は価値を失っている。
現在、教会の掃除はササス1人で行っており、収入にはなっていない。
両姫の援助でササスは生計を立てているが、ほとんど酒に消え、本人はだらだらと怠けているようにしか見えない。
「この教会での集まりがなくなった今、ササスよ、お前1人だけ残る意味はないのじゃ。工房に来い。教会の維持ぐらいは我々ドワーフが引き継ぐぞ」
だが、ササスは血相を変えて拒否する。
「ヘヘ、ありがた迷惑……ゲフンゲフン。あっしはここでザックス様を待つと決めましたんで。大丈夫ですぜ」
そう告げるササスに、グラベックはため息をついた。
この生来の怠け者は、ザックスのような穏やかだが芯のしっかりした主がいなければ動かないタイプだ。
グラベックはササスの気が変わらないことを悟り、話題を変えた。
「そういえばお主、絹を持っていたがどうしたのじゃ?」
「ヘヘ、あれならブロッケン将軍に高値で売りやした」
「なぬ?」
「へへ、酒に変わりやした」
グラベックは不思議に思った。
(ザックスもクレマンティーヌも気にしとったが、無地の絹よ。儂も何度もササスが汗を拭うのを見たが、普通の絹であった)
たしかに高級絹だったが、貴族の、それも将軍職の重鎮が、なぜササスのような教会の下働きしている男が無頓着に扱っていた品を欲するのかと。
「どうじゃ? 最近変わったことあるか?」
「はあ……いや、ザックス様がいなくなってからは特にありません」
「そうか。変わったことがあったら、王宮や我々ドワーフにすぐ知らせるんだぞ」
「ヘヘ、学がないんで何が変わったことなのか、はっきりわかるといいんですがねえ」
「お前さんの場合、酒を呑めなくなったら変わったことだと報告しそうじゃのう。そうじゃな、お前さん、身震いはよくするから、身震いしたら報せるんじゃ」
「ヘヘ、今も手がプルプルしてますぜ」
「それは呑んでるからじゃろ!」
グラベックはササスを一喝し、やれやれと帰ろうとしたが、少女の叫び声が聞こえてくる。
「大変! ササス! おばあちゃんが倒れた!」
エルフの双子姉妹、エレノアとエレミアが教会に駆け込んできたのだ。
「ババアが?」
「うわっ、酒臭い! ホント、人とドワーフのおっさんてイヤね」
「だから駄目なのよ、おっさんは」
「儂を混ぜるな! そんなことより、はよ行けササス。儂はクレマンティーヌを呼んでくるから」
「へ、へい」
ササスはガタガタと震えだす。
どうやら、母親の身に起きたことを現実として認識したようだ。
「先行ってるからね!」
「もう! ザックスがいれば、手間取らなかったのに!」
そう言いながら姉妹は走り去る。
ササスもゼエゼエ言いながら追いかけようとするが、一度足を止め、吐き出した。
(ザックス様……早く帰って来てくだせえ……)
そう祈りながら、ササスは震えていた。
ザックス神官が追放されてから、この教会を訪れる者は1人もいない。
それでも教会を綺麗に維持しようとしているのは、ザックスへの深い恩義からだ。
ただ、アリス姫とアニス姫が私費で教会の維持費を負担してくれなければ、ササスはとっくに飢え死にしているか、教会を捨てていただろうが。
「ヘヘ、グラベックさん。あっしは二日酔いなんてしませんので、ポーションの訪問販売は不要ですぜ」
久しぶりに顔馴染みのドワーフ工房店主グラベックが来訪し、ササスはいつもの軽口を叩く。
「おう、それは残念じゃ。ところでササスよ、儂も工房の仕事で忙しい日々を送っておったが、最近はどうじゃ?」
「へえ、真面目にやってますぜ。教会の掃除をして、残りの時間はチビチビ酒を呑んでますよ」
グラベックは苦笑いした。
教会の掃除など数時間もかからないだろう。
ザックスがいた頃は教会を訪れる人々の応対や、結婚式、葬式と、教会はフル稼働していた。
だが、神聖魔法を使える者や尊敬できる者がいなくなった今、教会は価値を失っている。
現在、教会の掃除はササス1人で行っており、収入にはなっていない。
両姫の援助でササスは生計を立てているが、ほとんど酒に消え、本人はだらだらと怠けているようにしか見えない。
「この教会での集まりがなくなった今、ササスよ、お前1人だけ残る意味はないのじゃ。工房に来い。教会の維持ぐらいは我々ドワーフが引き継ぐぞ」
だが、ササスは血相を変えて拒否する。
「ヘヘ、ありがた迷惑……ゲフンゲフン。あっしはここでザックス様を待つと決めましたんで。大丈夫ですぜ」
そう告げるササスに、グラベックはため息をついた。
この生来の怠け者は、ザックスのような穏やかだが芯のしっかりした主がいなければ動かないタイプだ。
グラベックはササスの気が変わらないことを悟り、話題を変えた。
「そういえばお主、絹を持っていたがどうしたのじゃ?」
「ヘヘ、あれならブロッケン将軍に高値で売りやした」
「なぬ?」
「へへ、酒に変わりやした」
グラベックは不思議に思った。
(ザックスもクレマンティーヌも気にしとったが、無地の絹よ。儂も何度もササスが汗を拭うのを見たが、普通の絹であった)
たしかに高級絹だったが、貴族の、それも将軍職の重鎮が、なぜササスのような教会の下働きしている男が無頓着に扱っていた品を欲するのかと。
「どうじゃ? 最近変わったことあるか?」
「はあ……いや、ザックス様がいなくなってからは特にありません」
「そうか。変わったことがあったら、王宮や我々ドワーフにすぐ知らせるんだぞ」
「ヘヘ、学がないんで何が変わったことなのか、はっきりわかるといいんですがねえ」
「お前さんの場合、酒を呑めなくなったら変わったことだと報告しそうじゃのう。そうじゃな、お前さん、身震いはよくするから、身震いしたら報せるんじゃ」
「ヘヘ、今も手がプルプルしてますぜ」
「それは呑んでるからじゃろ!」
グラベックはササスを一喝し、やれやれと帰ろうとしたが、少女の叫び声が聞こえてくる。
「大変! ササス! おばあちゃんが倒れた!」
エルフの双子姉妹、エレノアとエレミアが教会に駆け込んできたのだ。
「ババアが?」
「うわっ、酒臭い! ホント、人とドワーフのおっさんてイヤね」
「だから駄目なのよ、おっさんは」
「儂を混ぜるな! そんなことより、はよ行けササス。儂はクレマンティーヌを呼んでくるから」
「へ、へい」
ササスはガタガタと震えだす。
どうやら、母親の身に起きたことを現実として認識したようだ。
「先行ってるからね!」
「もう! ザックスがいれば、手間取らなかったのに!」
そう言いながら姉妹は走り去る。
ササスもゼエゼエ言いながら追いかけようとするが、一度足を止め、吐き出した。
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そう祈りながら、ササスは震えていた。
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