奪われたものは、全て要らないものでした

編端みどり

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前編

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「お姉様、それちょうだい」

またか……。次は決まってこう言うわよね。

「あげなさい。お姉様でしょう?」

「かしこまりました」

「ふふっ、ありがとう、お姉様だぁいすき」

わたくしは、妹が大嫌い。いや、この家が大嫌い。
でも、こんな我慢をするのもあと少しだけ。

「お姉様、王子様もわたくしにちょうだい?」

「あげなさい、お姉様でしょ」

「……」

「ふふっ、お姉様だぁいすき」

わたくしは何も言っていないのに。既に王子とわたくしは婚姻しているのに。

「お前より、妹君の方が美しいな」

「妹君の方がダンスが上手いな」

「妹君が、僕の伴侶なら良かったのに」

ならどうしてわたくしを選んだの?

妹とわたくし、どちらと婚約するか決めたのは貴方よ。

「もう3年だ、子が出来ないならお前と離縁する」

子が出来ないのは、実家がわたくしに毒を盛っているからよ。何度も訴えたのに調べてもくれなかった。あんな可愛い妹に罪を被せようとするなんて悪女だって言いましたわよね。

「かしこまりました。離縁の書類はこちらにご用意しています。ご記入下さい」

どうして驚いているの? ずっと言っていたじゃない。3年すれば離婚すると。

「どうして? 僕が嫌いだったの?」

好かれていると思っているなら、ずいぶんおめでたい頭をされていますわね。

記入した後、明日には出て行くし書類も出しておくと言ったら、真っ青な顔をしていました。

「ごめん……その……今日は……愛する人とゆっくり話をしたいんだ。だから……夜この部屋に来ても良い? 離婚は、そのあと決めてくれないかな?」

「かしこまりました。旦那様の為に準備を致しますので、夜に部屋にお越しください。そうですわ! 旦那様! 婚姻の書類もご用意しておりますの! ご記入下さいな!」

婚姻書類と聞くと、旦那様はとっても嬉しそうです。お任せください。貴方の望みは叶えて差し上げます。

「離婚して……また婚姻するの……?」

「だって旦那様とのお約束でしょう? わたくしに子は出来ません。婚姻も、旦那様のお望みでしょう?」

「う、うん! また婚姻出来るんだよね! なら嬉しいよ!」

やっぱり旦那様のお望みは……。お任せ下さい。最後にしっかりお望みは叶えます。だから、わたくしも自由にして下さいましね。
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