奪われたものは、全て要らないものでした

編端みどり

文字の大きさ
2 / 5

中編

しおりを挟む
「どうして……フローライトじゃなくて貴方がここに居るの……?」

「ふふっ! だって今日は夫婦の初夜ですもの! 見て! とびっきり可愛くして頂いたの! 愛してるわ! アレクサンドル様」

「なんで……! 何で……! フローライトは何処?!」

「お姉様? とっくに国を出ましたわ。お父様から勘当されたからお姉様は平民よ。国境に放り出したらしいけど、何処にいったかは知らないわ。あんな女の事なんて忘れてわたくしとイイコトしましょう? アレクサンドル様がわたくしを愛して下さってたなんて嬉しいわ! わたくしもアレクサンドル様が大好きでしたの! それなのにお姉様ったらアレクサンドル様の婚約者になってしまわれて。でもね、お姉様はわたくしがちょうだいって言えば全部くれるのよ。だからわたくしお願いしたの。アレクサンドル様をちょうだいって。そしたら時間はかかったけど下さったわ。あまりに時間がかかるから、お姉様には死んで頂こうと思ったんだけど、あの女しぶとくて。まぁ、子はできなかったから薬の効果はあったかしらね。そうそう、アレクサンドル様はいつもわたくしを褒めて下さっていたんでしょう? お姉様が仰っていたわ。わたくしの方が美しい、わたくしの方がダンスが上手い、わたくしがアレクサンドル様の伴侶なら良かったと。だから、お姉様はわたくしに伴侶の座を譲って下さいましたの。もうお姉様との離婚は成立して、アレクサンドル様の伴侶はわたくしですわ! アレクサンドル様! わたくしを幸せにして下さいませ!」

「うるさい!! 離れろ! 僕はフローライトと離婚などしていない!」

「どうして! もう書類は受理されてるわ! それに、アレクサンドル様はお姉様よりわたくしが良いって言ってたんでしょ? お姉様言ってたわ! アレクサンドル様から好きと言われた事は一度もないと! いつも罵倒しかされなかったと! だからお姉様は身を引いてくれたのよ!」

「そんな……そんな……確かにフローライトを褒めたりは……しなかった……。子どもを産んだら女性はすぐに偉そうにするから、最初につけ上がらせてはいけないと……聞いたんだ。なかなか子も出来なかったし、周りからも子を産めないなら離婚だと脅して立場をわからせろって! でも、フローライトは仕事も出来るし手放すのは惜しいから、側妃を娶って子は産ませるつもりだったんだ。お前は側妃には向くが、王妃の仕事など出来るのか?! 頭が悪いだろ。全部調べてあるんだ。だからフローライトを選んだのに。それに、フローライトみたいに慎ましくない!」

「じゃあなんで、わたくしを褒めたの?!」

「身近な女性と比べられるのは、屈辱だって聞いた。だから屈辱を味あわせればフローライトは僕に従順になると思って!」

「バッカじゃないの! 屈辱を与える男に惚れる女が居る訳ないじゃない! わたくしだってアンタみたいな男願い下げよ! もう離婚! 離婚よ!!!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私は駄目な姉なので、可愛い妹に全てあげることにします

リオール
恋愛
私には妹が一人いる。 みんなに可愛いとチヤホヤされる妹が。 それに対して私は顔も性格も地味。暗いと陰で笑われている駄目な姉だ。 妹はそんな私の物を、あれもこれもと欲しがってくる。 いいよ、私の物でいいのならあげる、全部あげる。 ──ついでにアレもあげるわね。 ===== ※ギャグはありません ※全6話

短編 一人目の婚約者を姉に、二人目の婚約者を妹に取られたので、猫と余生を過ごすことに決めました

朝陽千早
恋愛
二度の婚約破棄を経験し、すべてに疲れ果てた貴族令嬢ミゼリアは、山奥の屋敷に一人籠もることを決める。唯一の話し相手は、偶然出会った傷ついた猫・シエラル。静かな日々の中で、ミゼリアの凍った心は少しずつほぐれていった。 ある日、負傷した青年・セスを屋敷に迎え入れたことから、彼女の生活は少しずつ変化していく。過去に傷ついた二人と一匹の、不器用で温かな共同生活。しかし、セスはある日、何も告げず姿を消す── 「また、大切な人に置いていかれた」 残された手紙と金貨。揺れる感情と決意の中、ミゼリアはもう一度、失ったものを取り戻すため立ち上がる。 これは、孤独と再生、そして静かな愛を描いた物語。

〖完結〗愛人が離婚しろと乗り込んで来たのですが、私達はもう離婚していますよ?

藍川みいな
恋愛
「ライナス様と離婚して、とっととこの邸から出て行ってよっ!」 愛人が乗り込んで来たのは、これで何人目でしょう? 私はもう離婚していますし、この邸はお父様のものですから、決してライナス様のものにはなりません。 離婚の理由は、ライナス様が私を一度も抱くことがなかったからなのですが、不能だと思っていたライナス様は愛人を何人も作っていました。 そして親友だと思っていたマリーまで、ライナス様の愛人でした。 愛人を何人も作っていたくせに、やり直したいとか……頭がおかしいのですか? 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全8話で完結になります。

〖完結〗親友だと思っていた彼女が、私の婚約者を奪おうとしたのですが……

藍川みいな
恋愛
大好きな親友のマギーは、私のことを親友だなんて思っていなかった。私は引き立て役だと言い、私の婚約者を奪ったと告げた。 婚約者と親友をいっぺんに失い、失意のどん底だった私に、婚約者の彼から贈り物と共に手紙が届く。 その手紙を読んだ私は、婚約発表が行われる会場へと急ぐ。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 前編後編の、二話で完結になります。 小説家になろう様にも投稿しています。

【完結】「お姉様は出かけています。」そう言っていたら、お姉様の婚約者と結婚する事になりました。

まりぃべる
恋愛
「お姉様は…出かけています。」 お姉様の婚約者は、お姉様に会いに屋敷へ来て下さるのですけれど、お姉様は不在なのです。 ある時、お姉様が帰ってきたと思ったら…!? ☆★ 全8話です。もう完成していますので、随時更新していきます。 読んでいただけると嬉しいです。

妹が公爵夫人になりたいようなので、譲ることにします。

夢草 蝶
恋愛
 シスターナが帰宅すると、婚約者と妹のキスシーンに遭遇した。  どうやら、妹はシスターナが公爵夫人になることが気に入らないらしい。  すると、シスターナは快く妹に婚約者の座を譲ると言って──  本編とおまけの二話構成の予定です。

妹を叩いた?事実ですがなにか?

基本二度寝
恋愛
王太子エリシオンにはクアンナという婚約者がいた。 冷たい瞳をした婚約者には愛らしい妹マゼンダがいる。 婚約者に向けるべき愛情をマゼンダに向けていた。 そんな愛らしいマゼンダが、物陰でひっそり泣いていた。 頬を押えて。 誰が!一体何が!? 口を閉ざしつづけたマゼンダが、打った相手をようやく口にして、エリシオンの怒りが頂点に達した。 あの女…! ※えろなし ※恋愛カテゴリーなのに恋愛させてないなと思って追加21/08/09

陰で泣くとか無理なので

中田カナ
恋愛
婚約者である王太子殿下のご学友達に陰口を叩かれていたけれど、泣き寝入りなんて趣味じゃない。 ※ 小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

処理中です...