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第五話
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「アンナ! アンナは結婚してたわよね?!」
頼れるのはメイドのアンナだけですわ。騎士団の訓練に参加すると汗をかくので、一般の鍛錬参加者も使える休憩室でアンナに着替えを手伝って貰うのです。ですが今は着替えどころではありませんわ。
「お嬢様、どうされました?」
「お願い! わたくしにキスを見せて!」
「お嬢様?!」
真っ赤になって事情を説明したら、アンナに怒られましたわ。やっぱりわたくしに騎士は無理なのかしら……。
「お嬢様、落ち着いてください。キスが見たいのなら、アルベルト様が見せてくださるでしょう? それで婚約破棄なさるんですよね?」
「そう……そうね、わたくしアルベルトと婚約破棄するわ」
「その時キスは見れますわ。だからご安心下さいな。それでも慣れないと言うなら……夫と相談致しますわ」
アンナは、真っ赤な顔で言ったわ。ああ、わたくし焦ってなんて恥ずかしい事をお願いしてしまったのかしら。
「アンナ、ごめんなさい……。こんな恥ずかしいお願いをしてしまって」
「お嬢様は、急に婚約破棄などと言われて動揺しておられるのですわ。あんなにもアルベルト様の為に働いておられましたのに」
動揺……。そうなのかしら。
「アンナ、わたくし頑張っていたかしら?」
「それはもう頑張っておられました!」
「わたくし、アルベルトに婚約破棄と言われても悲しくなかったの。でも、なんだか心にぽっかり穴が空いた気分なの……」
「お嬢様は、アルベルト様がお好きでしたか?」
「いずれ結婚するんだと思っていたし、支えなければと思っていたけど、好きだったかは分からないわ。わたくし、そんな所がダメだったのね。もっとアルベルトを好きでいれば良かったのかしら。望むならキスもすれば良かったの?」
「お嬢様、婚姻までキスをしないのは貴族の常識です」
「だけど、カルロ様は貴族でも隠れてやってる方はやってると仰っていましたわ。わたくし、やっぱりお固いの?!」
「落ち着いて下さいお嬢様! ほとんどの貴族は、きちんとしています。カルロ様も、隠れてと仰っていたのでしょう?」
アンナに宥められていたら、ドアをノックする音がしました。
「オレだ、カルロだ。シルヴィア、入っても大丈夫か?」
「まだ着替えておりませんし、問題ありませんわ」
アンナにドアを開けて貰います。ドアは当然開けたままですわ。
「あの、さっきはすまん」
カルロ様の頬に、傷がありますがどうされたのでしょうか? 心なしか、ぐったりなさっておりますわ。
「いえ、大丈夫ですわ。あの、カルロ様、わたくしに騎士は無理ですか? わたくし、騎士になるのが夢でしたの」
「シルヴィアは強いし、おそらく試験は受かる。だけど、騎士になったらお嬢様扱いは出来ねえ」
「分かってますわ! その……キスシーンなんて見たら固まってしまいそうですが、アルベルトがわたくしにキスを見せてくれるでしょうし、頑張って慣れますわ」
「なっ……! アルベルトとキスしたのか?!」
「する訳ありませんわ! わたくしどなたにも唇を許しておりませんわ! やっぱり結婚までキスをしないなんて男性にはあり得ませんの? アルベルトは何度もキスを迫ってきましたわ。断ったら頭が固いと言われました」
「いや、オレもキスした事ねぇぞ。それが普通だ」
「……本当ですか?!」
「オレだって一応公爵家の人間だからな。きちんと教育されてる」
「じゃあ、わたくしがお固かったりする訳ではありませんの?」
「むしろ、婚約者にキスを迫る方が問題だろ。アルベルトがおかしいだけだ。シルヴィアが気にする事ねえよ」
「そうなのですね。わたくしキスしないといけないのかと思ってました。本当に良かったですわ!」
「まぁ、どうしてもキスしたいなら、オレがしてやるぜ?」
「ななな、なんでですの!!!」
「ははっ、冗談だよ」
「団長……!」
「げ! なんでお前ら居るんだよ!」
「シルヴィア様に謝罪に行ったのに迫るなんて何考えてんですか!」
そのまま、カルロ様は連れて行かれました。カルロ様とお話ししたおかげで、わたくしがおかしくないと分かって安心しましたわ。
頼れるのはメイドのアンナだけですわ。騎士団の訓練に参加すると汗をかくので、一般の鍛錬参加者も使える休憩室でアンナに着替えを手伝って貰うのです。ですが今は着替えどころではありませんわ。
「お嬢様、どうされました?」
「お願い! わたくしにキスを見せて!」
「お嬢様?!」
真っ赤になって事情を説明したら、アンナに怒られましたわ。やっぱりわたくしに騎士は無理なのかしら……。
「お嬢様、落ち着いてください。キスが見たいのなら、アルベルト様が見せてくださるでしょう? それで婚約破棄なさるんですよね?」
「そう……そうね、わたくしアルベルトと婚約破棄するわ」
「その時キスは見れますわ。だからご安心下さいな。それでも慣れないと言うなら……夫と相談致しますわ」
アンナは、真っ赤な顔で言ったわ。ああ、わたくし焦ってなんて恥ずかしい事をお願いしてしまったのかしら。
「アンナ、ごめんなさい……。こんな恥ずかしいお願いをしてしまって」
「お嬢様は、急に婚約破棄などと言われて動揺しておられるのですわ。あんなにもアルベルト様の為に働いておられましたのに」
動揺……。そうなのかしら。
「アンナ、わたくし頑張っていたかしら?」
「それはもう頑張っておられました!」
「わたくし、アルベルトに婚約破棄と言われても悲しくなかったの。でも、なんだか心にぽっかり穴が空いた気分なの……」
「お嬢様は、アルベルト様がお好きでしたか?」
「いずれ結婚するんだと思っていたし、支えなければと思っていたけど、好きだったかは分からないわ。わたくし、そんな所がダメだったのね。もっとアルベルトを好きでいれば良かったのかしら。望むならキスもすれば良かったの?」
「お嬢様、婚姻までキスをしないのは貴族の常識です」
「だけど、カルロ様は貴族でも隠れてやってる方はやってると仰っていましたわ。わたくし、やっぱりお固いの?!」
「落ち着いて下さいお嬢様! ほとんどの貴族は、きちんとしています。カルロ様も、隠れてと仰っていたのでしょう?」
アンナに宥められていたら、ドアをノックする音がしました。
「オレだ、カルロだ。シルヴィア、入っても大丈夫か?」
「まだ着替えておりませんし、問題ありませんわ」
アンナにドアを開けて貰います。ドアは当然開けたままですわ。
「あの、さっきはすまん」
カルロ様の頬に、傷がありますがどうされたのでしょうか? 心なしか、ぐったりなさっておりますわ。
「いえ、大丈夫ですわ。あの、カルロ様、わたくしに騎士は無理ですか? わたくし、騎士になるのが夢でしたの」
「シルヴィアは強いし、おそらく試験は受かる。だけど、騎士になったらお嬢様扱いは出来ねえ」
「分かってますわ! その……キスシーンなんて見たら固まってしまいそうですが、アルベルトがわたくしにキスを見せてくれるでしょうし、頑張って慣れますわ」
「なっ……! アルベルトとキスしたのか?!」
「する訳ありませんわ! わたくしどなたにも唇を許しておりませんわ! やっぱり結婚までキスをしないなんて男性にはあり得ませんの? アルベルトは何度もキスを迫ってきましたわ。断ったら頭が固いと言われました」
「いや、オレもキスした事ねぇぞ。それが普通だ」
「……本当ですか?!」
「オレだって一応公爵家の人間だからな。きちんと教育されてる」
「じゃあ、わたくしがお固かったりする訳ではありませんの?」
「むしろ、婚約者にキスを迫る方が問題だろ。アルベルトがおかしいだけだ。シルヴィアが気にする事ねえよ」
「そうなのですね。わたくしキスしないといけないのかと思ってました。本当に良かったですわ!」
「まぁ、どうしてもキスしたいなら、オレがしてやるぜ?」
「ななな、なんでですの!!!」
「ははっ、冗談だよ」
「団長……!」
「げ! なんでお前ら居るんだよ!」
「シルヴィア様に謝罪に行ったのに迫るなんて何考えてんですか!」
そのまま、カルロ様は連れて行かれました。カルロ様とお話ししたおかげで、わたくしがおかしくないと分かって安心しましたわ。
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