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第十一話
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「「かしこまりました」」
ボレッリ侯爵とシャンドリ伯爵は、これ以上王家の怒りを買うのはまずいと分かっておられるのか、急いでふたりを連れて行こうとします。
「きゃあ! なんですか! まだパーティーは終わってませんわ! もっとアルベルトと楽しみたいの。それに、シルヴィア様がまだ泣いてないわ。シルヴィア様が泣くまでわたくしここに居ますわよ。どう? 大好きな婚約者を取られた気分は?!」
「心から感謝しています。アルベルト様と婚姻してくださってありがとうございます」
「……え?! 感謝……?」
「ええ、アルベルト様は傲慢で、結婚もしていないのにたびたびキスを迫りますし、仕事も全てわたくしに押し付けてきます。結婚するならと諦めていましたけど、サブリナ様のおかげでアルベルト様と縁が切れました。感謝していますわ」
「シルヴィア! 貴様は僕が好きだから尽くしていたんじゃないのか!」
は……?! アルベルトのあんまりな言い方に今までの事が一気に思い出されてしまいます。いけない、泣くもんですか……。だけど、感情が溢れてきます。ふざけないで……。
「政略結婚の相手に、いきなり傲慢な態度をされて好きになるほど趣味は悪くありませんの。それでも将来結婚するのだからとアルベルト様には誠実に対応していましたわ。アルベルト様の生徒会の仕事も、宿題も、テスト対策まで押し付けていたのをお忘れ? 拒否しても、サブリナ様や先生から、圧力をかけられましたわ。退学になりたくなかったら婚約者としてアルベルト様に尽くせと。お父様の迷惑になると思って我慢して仕事を手伝えば、調子に乗ってサブリナ様の仕事まで押し付けてきましたわよね! しかも、先生は侯爵家のサブリナ様の顔を立てろと、テストでわたくしが良い点を取れば授業中寝ていたと内申点を下げてきますし! わたくし授業で寝た事などありませんわ! 辞めたいと思っても、アルベルト様と婚約したせいで転校もできなくて辛かったですわ。生徒もみんなアルベルト様の味方。この学園は、わたくしにとっては地獄でしたわ!」
「シルヴィア様……お辛かったでしょう」
カルロ様が優しく声をかけて下さいます。何でしょう、なんだかドキドキしますわ。
「他にもお辛かった事があるなら、お話下さい。貴方の訴えを無視する教師より王太子殿下の方が話を聞いて下さいます」
なんでこんなにお優しいのかしら、わたくしアルベルトにもこんなに優しくされた事ないですわ。カルロ様が優しくして下さるから、思わず涙が溢れてきました。これは、全て言っても良いのかしら?
「……その、生徒会の仕事を必死でやってるわたくしの前で……アルベルト様とサブリナ様は何度もキスをしておりました。あまりにふしだらなので、先生を呼んだ事もあるのですが、わたくしの勘違いだ、悪評を立てるなと信用して貰えず……。最後のテストだけは卒業試験ですから王家の方が採点をするので安心して受けられましたけど、他のテストは、わたくしだけ正解が不正解なんて事もありました。学園に訴えても、さらに成績を下げられるので……諦めておりましたの。最後のテストだけが希望でしたわ。王家から派遣された教師の方が、清廉潔白な方で本当に感謝しています」
先程のように感情的になるなんて淑女としてあるまじき行動でしたわ。カルロ様のおかげで落ち着きました。
「最後に誤解なきよう申し上げますが、アルベルト様に好意を持った事は一度もありません。結婚をしていないのにキスも何度も迫られて正直気持ち悪かったです。わたくしは可愛げがなく頭が固いんでしょうけれど……」
「そんな事はない。キスを婚約者に迫る貴族は、常識はずれだ。気持ち悪いと思うのも普通だ。オレも気持ち悪いと思う」
カルロ様がフォローして下さいます。書類も出して下さいましたし、本当に頼もしいですわ。
カルロ様のおかげでわたくしへの風当たりは強くありません。むしろ、同情されています。
学園に疑問の声も上がっています。学園長は、真っ青です。
「みんな、学園の運営に疑問が残るみたいだし、すぐ王家で調査するね。結果は報告するから、安心してね。それから、学園の評価が下がるとみんな困るだろうから、この事はこの場だけの話にしよう。不正があれば、必ず正すと約束するよ」
にこやかに王太子殿下が宣言なさいました。どうしましょう、わたくしのせいで大ごとになってしまいましたわ。
ボレッリ侯爵とシャンドリ伯爵は、これ以上王家の怒りを買うのはまずいと分かっておられるのか、急いでふたりを連れて行こうとします。
「きゃあ! なんですか! まだパーティーは終わってませんわ! もっとアルベルトと楽しみたいの。それに、シルヴィア様がまだ泣いてないわ。シルヴィア様が泣くまでわたくしここに居ますわよ。どう? 大好きな婚約者を取られた気分は?!」
「心から感謝しています。アルベルト様と婚姻してくださってありがとうございます」
「……え?! 感謝……?」
「ええ、アルベルト様は傲慢で、結婚もしていないのにたびたびキスを迫りますし、仕事も全てわたくしに押し付けてきます。結婚するならと諦めていましたけど、サブリナ様のおかげでアルベルト様と縁が切れました。感謝していますわ」
「シルヴィア! 貴様は僕が好きだから尽くしていたんじゃないのか!」
は……?! アルベルトのあんまりな言い方に今までの事が一気に思い出されてしまいます。いけない、泣くもんですか……。だけど、感情が溢れてきます。ふざけないで……。
「政略結婚の相手に、いきなり傲慢な態度をされて好きになるほど趣味は悪くありませんの。それでも将来結婚するのだからとアルベルト様には誠実に対応していましたわ。アルベルト様の生徒会の仕事も、宿題も、テスト対策まで押し付けていたのをお忘れ? 拒否しても、サブリナ様や先生から、圧力をかけられましたわ。退学になりたくなかったら婚約者としてアルベルト様に尽くせと。お父様の迷惑になると思って我慢して仕事を手伝えば、調子に乗ってサブリナ様の仕事まで押し付けてきましたわよね! しかも、先生は侯爵家のサブリナ様の顔を立てろと、テストでわたくしが良い点を取れば授業中寝ていたと内申点を下げてきますし! わたくし授業で寝た事などありませんわ! 辞めたいと思っても、アルベルト様と婚約したせいで転校もできなくて辛かったですわ。生徒もみんなアルベルト様の味方。この学園は、わたくしにとっては地獄でしたわ!」
「シルヴィア様……お辛かったでしょう」
カルロ様が優しく声をかけて下さいます。何でしょう、なんだかドキドキしますわ。
「他にもお辛かった事があるなら、お話下さい。貴方の訴えを無視する教師より王太子殿下の方が話を聞いて下さいます」
なんでこんなにお優しいのかしら、わたくしアルベルトにもこんなに優しくされた事ないですわ。カルロ様が優しくして下さるから、思わず涙が溢れてきました。これは、全て言っても良いのかしら?
「……その、生徒会の仕事を必死でやってるわたくしの前で……アルベルト様とサブリナ様は何度もキスをしておりました。あまりにふしだらなので、先生を呼んだ事もあるのですが、わたくしの勘違いだ、悪評を立てるなと信用して貰えず……。最後のテストだけは卒業試験ですから王家の方が採点をするので安心して受けられましたけど、他のテストは、わたくしだけ正解が不正解なんて事もありました。学園に訴えても、さらに成績を下げられるので……諦めておりましたの。最後のテストだけが希望でしたわ。王家から派遣された教師の方が、清廉潔白な方で本当に感謝しています」
先程のように感情的になるなんて淑女としてあるまじき行動でしたわ。カルロ様のおかげで落ち着きました。
「最後に誤解なきよう申し上げますが、アルベルト様に好意を持った事は一度もありません。結婚をしていないのにキスも何度も迫られて正直気持ち悪かったです。わたくしは可愛げがなく頭が固いんでしょうけれど……」
「そんな事はない。キスを婚約者に迫る貴族は、常識はずれだ。気持ち悪いと思うのも普通だ。オレも気持ち悪いと思う」
カルロ様がフォローして下さいます。書類も出して下さいましたし、本当に頼もしいですわ。
カルロ様のおかげでわたくしへの風当たりは強くありません。むしろ、同情されています。
学園に疑問の声も上がっています。学園長は、真っ青です。
「みんな、学園の運営に疑問が残るみたいだし、すぐ王家で調査するね。結果は報告するから、安心してね。それから、学園の評価が下がるとみんな困るだろうから、この事はこの場だけの話にしよう。不正があれば、必ず正すと約束するよ」
にこやかに王太子殿下が宣言なさいました。どうしましょう、わたくしのせいで大ごとになってしまいましたわ。
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