10 / 28
第十話
しおりを挟む
「みんなの門出を祝いに来たが、まさかこのような情熱的な夫婦の門出を祝福出来るとは思わなかった。なぁ、みんなありえないだろう?」
「ありえませんわ」
「ええ、本当に……」
このありえないは、褒めてないですわよね。全員、顔をしかめていらっしゃいますし。
「王太子殿下、証人は2人要るでしょう? 私も証人になりましょう」
カルロ様まで?! とってもいい笑顔ですわ! なんだかご迷惑おかけして申し訳ないです。あとで何かお詫びしなくては。
「そうか、王太子と騎士団長が認めた婚約破棄と婚姻だ。何か問題があるか? シャンドリ伯爵?」
「……いえ、ございません」
「我がボレッリ家は、賛成致します。婚姻の証人には、私がなりましょう。サブリナ、私は何度も何度もはしたない真似はするなと言っただろう。貴族のルールも教えた筈だ。だが、王太子殿下まで賛成なさるんだ。もう致し方ない。シャンドリ伯爵、後ほどゆっくりお話しを致しましょう」
「はい……よろしくお願いします……」
親御さんはこの事態を正しくご理解頂いているようですわね。だけど、さりげなく書類を提出すると言って預かろうとしてきますから油断出来ませんわ。
「そうそう、今日は卒業をする皆様に祝福を与える為に神官様も来て下さってるんだ。正式な結婚式は後日だけど、今ここで結婚の誓いをしないか?」
「まあ……なんてお優しいんでしょう……」
「サブリナ、僕たちは幸せ者だね」
王太子殿下、パーティーを汚されて怒ってらっしゃいますね。今式をすれば、2度目の結婚式は神官様を呼べません。神官様のいない華やかな結婚式、滑稽でしかありませんわ。
式でボレッリ侯爵とシャンドリ伯爵を引きつけて下さっているうちに、こっそり書類を出しに行きましょう。
「シルヴィア! お前も最前列に来い!」
アルベルト……馬鹿なの、馬鹿なの、お馬鹿なのね?!
「お前が近くにいれば、安全だ!」
ああ、ブチ切れているお父様からわたくしを盾にするおつもりね。はぁ、書類出したいのに。
「シルヴィア、その書類はオレが預かろう。アイツらの近くに書類を持って座るのは危険だ」
そう言って、カルロ様が預かって下さいました。カルロ様なら安心してお任せ出来ますわ。
わたくしが最前列に座ると、王太子殿下の主導で式が始まりました。ボレッリ侯爵とシャンドリ伯爵は王太子殿下が常に話しかけておられます。これでは逃げられませんわね。書類を持っているのはカルロ様ですからそうそう奪えもしないでしょう。
あら? カルロ様の姿が見えませんわ。
アルベルトとサブリナ様は婚姻の誓いを行い、また熱いキスシーンを見せつけてくれましたわ。サブリナ様、そんな勝ち誇った顔をなさらなくても、アルベルトは生涯サブリナ様の旦那様ですわよ。わたくし、アルベルトと婚姻するくらいなら生涯独身を貫きますわ。
カルロ様はいつの間にか王太子殿下の隣にいらっしゃいますわ。さっきいらっしゃらないと思ったのは気のせいだったのかしら?
幸せいっぱいの2人に、王太子殿下は仰いました。
「茶番はここまで。書類はさっき提出して、承認されたよ。簡易的な結婚式もした。君たちは生涯添い遂げてね。ボレッリ侯爵、シャンドリ伯爵、まだ卒業パーティーは続くから、早く汚物を連れて出て行け」
「ありえませんわ」
「ええ、本当に……」
このありえないは、褒めてないですわよね。全員、顔をしかめていらっしゃいますし。
「王太子殿下、証人は2人要るでしょう? 私も証人になりましょう」
カルロ様まで?! とってもいい笑顔ですわ! なんだかご迷惑おかけして申し訳ないです。あとで何かお詫びしなくては。
「そうか、王太子と騎士団長が認めた婚約破棄と婚姻だ。何か問題があるか? シャンドリ伯爵?」
「……いえ、ございません」
「我がボレッリ家は、賛成致します。婚姻の証人には、私がなりましょう。サブリナ、私は何度も何度もはしたない真似はするなと言っただろう。貴族のルールも教えた筈だ。だが、王太子殿下まで賛成なさるんだ。もう致し方ない。シャンドリ伯爵、後ほどゆっくりお話しを致しましょう」
「はい……よろしくお願いします……」
親御さんはこの事態を正しくご理解頂いているようですわね。だけど、さりげなく書類を提出すると言って預かろうとしてきますから油断出来ませんわ。
「そうそう、今日は卒業をする皆様に祝福を与える為に神官様も来て下さってるんだ。正式な結婚式は後日だけど、今ここで結婚の誓いをしないか?」
「まあ……なんてお優しいんでしょう……」
「サブリナ、僕たちは幸せ者だね」
王太子殿下、パーティーを汚されて怒ってらっしゃいますね。今式をすれば、2度目の結婚式は神官様を呼べません。神官様のいない華やかな結婚式、滑稽でしかありませんわ。
式でボレッリ侯爵とシャンドリ伯爵を引きつけて下さっているうちに、こっそり書類を出しに行きましょう。
「シルヴィア! お前も最前列に来い!」
アルベルト……馬鹿なの、馬鹿なの、お馬鹿なのね?!
「お前が近くにいれば、安全だ!」
ああ、ブチ切れているお父様からわたくしを盾にするおつもりね。はぁ、書類出したいのに。
「シルヴィア、その書類はオレが預かろう。アイツらの近くに書類を持って座るのは危険だ」
そう言って、カルロ様が預かって下さいました。カルロ様なら安心してお任せ出来ますわ。
わたくしが最前列に座ると、王太子殿下の主導で式が始まりました。ボレッリ侯爵とシャンドリ伯爵は王太子殿下が常に話しかけておられます。これでは逃げられませんわね。書類を持っているのはカルロ様ですからそうそう奪えもしないでしょう。
あら? カルロ様の姿が見えませんわ。
アルベルトとサブリナ様は婚姻の誓いを行い、また熱いキスシーンを見せつけてくれましたわ。サブリナ様、そんな勝ち誇った顔をなさらなくても、アルベルトは生涯サブリナ様の旦那様ですわよ。わたくし、アルベルトと婚姻するくらいなら生涯独身を貫きますわ。
カルロ様はいつの間にか王太子殿下の隣にいらっしゃいますわ。さっきいらっしゃらないと思ったのは気のせいだったのかしら?
幸せいっぱいの2人に、王太子殿下は仰いました。
「茶番はここまで。書類はさっき提出して、承認されたよ。簡易的な結婚式もした。君たちは生涯添い遂げてね。ボレッリ侯爵、シャンドリ伯爵、まだ卒業パーティーは続くから、早く汚物を連れて出て行け」
185
あなたにおすすめの小説
氷の王弟殿下から婚約破棄を突き付けられました。理由は聖女と結婚するからだそうです。
吉川一巳
恋愛
ビビは婚約者である氷の王弟イライアスが大嫌いだった。なぜなら彼は会う度にビビの化粧や服装にケチをつけてくるからだ。しかし、こんな婚約耐えられないと思っていたところ、国を揺るがす大事件が起こり、イライアスから神の国から召喚される聖女と結婚しなくてはいけなくなったから破談にしたいという申し出を受ける。内心大喜びでその話を受け入れ、そのままの勢いでビビは神官となるのだが、招かれた聖女には問題があって……。小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
復縁は絶対に受け入れません ~婚約破棄された有能令嬢は、幸せな日々を満喫しています~
水空 葵
恋愛
伯爵令嬢のクラリスは、婚約者のネイサンを支えるため、幼い頃から血の滲むような努力を重ねてきた。社交はもちろん、本来ならしなくても良い執務の補佐まで。
ネイサンは跡継ぎとして期待されているが、そこには必ずと言っていいほどクラリスの尽力があった。
しかし、クラリスはネイサンから婚約破棄を告げられてしまう。
彼の隣には妹エリノアが寄り添っていて、潔く離縁した方が良いと思える状況だった。
「俺は真実の愛を見つけた。だから邪魔しないで欲しい」
「分かりました。二度と貴方には関わりません」
何もかもを諦めて自由になったクラリスは、その時間を満喫することにする。
そんな中、彼女を見つめる者が居て――
◇5/2 HOTランキング1位になりました。お読みいただきありがとうございます。
※他サイトでも連載しています
なんでも思い通りにしないと気が済まない妹から逃げ出したい
木崎優
恋愛
「君には大変申し訳なく思っている」
私の婚約者はそう言って、心苦しそうに顔を歪めた。「私が悪いの」と言いながら瞳を潤ませている、私の妹アニエスの肩を抱きながら。
アニエスはいつだって私の前に立ちはだかった。
これまで何ひとつとして、私の思い通りになったことはない。すべてアニエスが決めて、両親はアニエスが言うことならと頷いた。
だからきっと、この婚約者の入れ替えも両親は快諾するのだろう。アニエスが決めたのなら間違いないからと。
もういい加減、妹から離れたい。
そう思った私は、魔術師の弟子ノエルに結婚を前提としたお付き合いを申し込んだ。互いに利のある契約として。
だけど弟子だと思ってたその人は実は魔術師で、しかも私を好きだったらしい。
【完結・全10話】偽物の愛だったようですね。そうですか、婚約者様?婚約破棄ですね、勝手になさい。
BBやっこ
恋愛
アンネ、君と別れたい。そういっぱしに別れ話を持ち出した私の婚約者、7歳。
ひとつ年上の私が我慢することも多かった。それも、両親同士が仲良かったためで。
けして、この子が好きとかでは断じて無い。だって、この子バカな男になる気がする。その片鱗がもう出ている。なんでコレが婚約者なのか両親に問いただしたいことが何回あったか。
まあ、両親の友達の子だからで続いた関係が、やっと終わるらしい。
婚約破棄した王子は年下の幼馴染を溺愛「彼女を本気で愛してる結婚したい」国王「許さん!一緒に国外追放する」
佐藤 美奈
恋愛
「僕はアンジェラと婚約破棄する!本当は幼馴染のニーナを愛しているんだ」
アンジェラ・グラール公爵令嬢とロバート・エヴァンス王子との婚約発表および、お披露目イベントが行われていたが突然のロバートの主張で会場から大きなどよめきが起きた。
「お前は何を言っているんだ!頭がおかしくなったのか?」
アンドレア国王の怒鳴り声が響いて静まった会場。その舞台で親子喧嘩が始まって収拾のつかぬ混乱ぶりは目を覆わんばかりでした。
気まずい雰囲気が漂っている中、婚約披露パーティーは早々に切り上げられることになった。アンジェラの一生一度の晴れ舞台は、婚約者のロバートに台なしにされてしまった。
【完結】大好きな婚約者の運命の“赤い糸”の相手は、どうやら私ではないみたいです
Rohdea
恋愛
子爵令嬢のフランシスカには、10歳の時から婚約している大好きな婚約者のマーカスがいる。
マーカスは公爵家の令息で、子爵令嬢の自分とは何もかも釣り合っていなかったけれど、
とある理由により結ばれた婚約だった。
それでもマーカスは優しい人で婚約者として仲良く過ごして来た。
だけど、最近のフランシスカは不安を抱えていた。
その原因はマーカスが会長を務める生徒会に新たに加わった、元平民の男爵令嬢。
彼女の存在がフランシスカの胸をざわつかせていた。
そんなある日、酷いめまいを起こし倒れたフランシスカ。
目覚めた時、自分の前世とこの世界の事を思い出す。
──ここは乙女ゲームの世界で、大好きな婚約者は攻略対象者だった……
そして、それとは別にフランシスカは何故かこの時から、ゲームの設定にもあった、
運命で結ばれる男女の中で繋がっているという“赤い糸”が見えるようになっていた。
しかし、フランシスカとマーカスの赤い糸は……
婚約破棄をした相手方は知らぬところで没落して行きました
マルローネ
恋愛
伯爵令嬢だったアンネリーは婚約者であり、侯爵でもあるスティーブンに真実の愛がどうたらという理由で婚約破棄されてしまった。
悲しみに暮れたアンネリーだったが、偶々、公爵令息のジョージと再会し交流を深めていく。
アンネリーがジョージと楽しく生活をしている中、真実の愛に目覚めたらしいスティーブンには様々な災厄? が降りかかることになり……まさに因果応報の事態が起きるのであった。
【完結】前代未聞の婚約破棄~なぜあなたが言うの?~
暖夢 由
恋愛
「サリー・ナシェルカ伯爵令嬢、あなたの婚約は破棄いたします!」
高らかに宣言された婚約破棄の言葉。
ドルマン侯爵主催のガーデンパーティーの庭にその声は響き渡った。
でもその婚約破棄、どうしてあなたが言うのですか?
2021/7/18
HOTランキング1位 ありがとうございます。
2021/7/20
総合ランキング1位 ありがとうございます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる