婚約破棄は夜会でお願いします

編端みどり

文字の大きさ
14 / 28

第十四話

しおりを挟む
お父様は時間がかかっても良いと言いましたが、あまり待たせては申し訳ないのでメイドを総動員して準備しました。ドレスまで変えないといけなくなるとは思いませんでしたもの。

「アンナ、どうして黄色と緑なのかしら?」

「旦那様のご指示ですからわたくしには分かりかねます」

アンナは、ニコニコしながら準備をしてくれます。髪も3人がかりであっという間に完成しました。

「お嬢様! とっても美しいですわ! 仕上げに髪に黄色の花を散らしましょう!」

夜会では生花を飾る事はしませんが、わたくしは髪に生花を飾るのが好きなのです。生花はすぐ萎れてしまいますが、カルロ様とお話しする間くらいは問題なく美しさを保ってくれるでしょう。

「さ、完璧ですわ!」

「ありがとうみんな。だいぶお待たせしてしまったかしら?」

「いいえ、30分程です。問題ありませんわ」

「そうね、お父様とお話ししてれば30分なんてすぐよね」

「……それは、どうでしょう……おそらく団長様は胃が痛い思いをされてるのでは」

「どうして?」

「行ってみれば分かりますわ! すぐ参りましょう」

「分かったわ」

急いで応接室に行きました。

「おや、ずいぶん早かったね。シルヴィア、団長がシルヴィアに話があるそうだよ。聞いてあげてくれるかい?」

お父様が、楽しそうに笑ってらっしゃいます。カルロ様はなんだかお顔が赤いです。

「わかりました! わたくしもカルロ様にお会いしたかったんです」

まず、今日のお礼を言わないと。

「本日は、ありがとうございました。色々助けて頂いて、本当に助かりましたわ」

「いや、書類を勝手に出したりして申し訳なかった」

「ちゃんと私の許可は取ってくれたのですから問題ないですぞ」

「そうだったのですね! さすがですわ! あの時はアルベルト様に呼ばれて困ってましたの。拒否して暴れ出したら困りますし……書類を持っておくのも不安だったので、カルロ様がお声がけ下さって助かりました。提出までして頂けて本当に嬉しかったですわ」

「その……彼はいつもあんな態度だったのか?」

「ええ! お父様の前では猫を被ってましたけど、普段はあんなものですね。わたくしも教師を味方にしてしまったアルベルト様に逆らうのも面倒でしたからハイハイと仕事してましたわ。まぁ、キスを迫られるのだけは拒否しましたけど。手すら繋がないのにキスばかり求めてきて気持ち悪かったですもの」

「シルヴィア……そこまで気持ち悪かったなら、どうして教えてくれなかったんだ?」

「学園を卒業する為です。それに、お父様にこの話をしたら、我が家が有責でも破棄したでしょう? アルベルト様が得するなんて嫌だったのですわ」

「だがシルヴィアがクズと添い遂げるよりマシだった筈だよ?」

「学園を卒業してから、結婚準備の1年の間に見極めようとは思っていました。まさか、浮気を堂々と報告して、わたくしが悪い事にしようとするほどおバカさんだとは思いませんでしたけど」

「ははっ……おバカさんか」

「ええ、おバカさんですわ。普段は流せていたのですが、わたくしがアルベルト様を好きだから尽くしていたと言われて吐き気がして、思わず色々不満を言ってしまいました。でも、カルロ様がお優しい言葉をかけて下さったので、落ち着きました。ありがとうございます」

「確かに我々は助かりました。団長のおかげですな。まさか王太子殿下にまで協力を頼むとは思いませんでしたぞ」

「え?! 王太子殿下が協力的だったのは、アルベルト様達があまりに不快だったからではないのですか?」

「団長が、手を回してくれていたんだよ」

「そうだったのですね! ありがとうございます!」

「……ええ、本当にお優しい。何か、理由がおありですかな?」

お父様? なんだか意地悪そうに笑っておられますけど、どうしたのかしら?

「シルヴィア様」

「は、はいっ!」

カルロ様が、わたくしに近づいて来られました。とても真剣なお顔をなさっています。そういえば、わたくしに話があると仰っていましたわね。

何かしら? やっぱりわたくしが騎士を目指すのは無謀とか?!

「貴方を愛しています。どうか、私と結婚して下さい」

けっ……こん?

結婚?! わたくしが?! カルロ様と?!

「婚約破棄をしたばかりの貴方にこのような申し出は失礼だと分かっています。ですが、万が一また他の男性に取られたらと思うと居ても立っても居られませんでした。シルヴィア様が騎士を目指しているのも分かっています。結婚は、いくらでも待ちます。ですから、私の婚約者になって頂けませんか?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹ばかりを贔屓し溺愛する婚約者にウンザリなので、わたしも辺境の大公様と婚約しちゃいます

新世界のウサギさん
恋愛
わたし、リエナは今日婚約者であるローウェンとデートをする予定だった。 ところが、いつになっても彼が現れる気配は無く、待ちぼうけを喰らう羽目になる。 「私はレイナが好きなんだ!」 それなりの誠実さが売りだった彼は突如としてわたしを捨て、妹のレイナにぞっこんになっていく。 こうなったら仕方ないので、わたしも前から繋がりがあった大公様と付き合うことにします!

氷の王弟殿下から婚約破棄を突き付けられました。理由は聖女と結婚するからだそうです。

吉川一巳
恋愛
ビビは婚約者である氷の王弟イライアスが大嫌いだった。なぜなら彼は会う度にビビの化粧や服装にケチをつけてくるからだ。しかし、こんな婚約耐えられないと思っていたところ、国を揺るがす大事件が起こり、イライアスから神の国から召喚される聖女と結婚しなくてはいけなくなったから破談にしたいという申し出を受ける。内心大喜びでその話を受け入れ、そのままの勢いでビビは神官となるのだが、招かれた聖女には問題があって……。小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

【完結】貴方の後悔など、聞きたくありません。

なか
恋愛
学園に特待生として入学したリディアであったが、平民である彼女は貴族家の者には目障りだった。 追い出すようなイジメを受けていた彼女を救ってくれたのはグレアルフという伯爵家の青年。 優しく、明るいグレアルフは屈託のない笑顔でリディアと接する。 誰にも明かさずに会う内に恋仲となった二人であったが、 リディアは知ってしまう、グレアルフの本性を……。 全てを知り、死を考えた彼女であったが、 とある出会いにより自分の価値を知った時、再び立ち上がる事を選択する。 後悔の言葉など全て無視する決意と共に、生きていく。

傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~

キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。 両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。 ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。 全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。 エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。 ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。 こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。

【完結】前代未聞の婚約破棄~なぜあなたが言うの?~

暖夢 由
恋愛
「サリー・ナシェルカ伯爵令嬢、あなたの婚約は破棄いたします!」 高らかに宣言された婚約破棄の言葉。 ドルマン侯爵主催のガーデンパーティーの庭にその声は響き渡った。 でもその婚約破棄、どうしてあなたが言うのですか? 2021/7/18 HOTランキング1位 ありがとうございます。 2021/7/20 総合ランキング1位 ありがとうございます

【完結・全10話】偽物の愛だったようですね。そうですか、婚約者様?婚約破棄ですね、勝手になさい。

BBやっこ
恋愛
アンネ、君と別れたい。そういっぱしに別れ話を持ち出した私の婚約者、7歳。 ひとつ年上の私が我慢することも多かった。それも、両親同士が仲良かったためで。 けして、この子が好きとかでは断じて無い。だって、この子バカな男になる気がする。その片鱗がもう出ている。なんでコレが婚約者なのか両親に問いただしたいことが何回あったか。 まあ、両親の友達の子だからで続いた関係が、やっと終わるらしい。

復縁は絶対に受け入れません ~婚約破棄された有能令嬢は、幸せな日々を満喫しています~

水空 葵
恋愛
伯爵令嬢のクラリスは、婚約者のネイサンを支えるため、幼い頃から血の滲むような努力を重ねてきた。社交はもちろん、本来ならしなくても良い執務の補佐まで。 ネイサンは跡継ぎとして期待されているが、そこには必ずと言っていいほどクラリスの尽力があった。 しかし、クラリスはネイサンから婚約破棄を告げられてしまう。 彼の隣には妹エリノアが寄り添っていて、潔く離縁した方が良いと思える状況だった。 「俺は真実の愛を見つけた。だから邪魔しないで欲しい」 「分かりました。二度と貴方には関わりません」 何もかもを諦めて自由になったクラリスは、その時間を満喫することにする。 そんな中、彼女を見つめる者が居て―― ◇5/2 HOTランキング1位になりました。お読みいただきありがとうございます。 ※他サイトでも連載しています

なんでも思い通りにしないと気が済まない妹から逃げ出したい

木崎優
恋愛
「君には大変申し訳なく思っている」 私の婚約者はそう言って、心苦しそうに顔を歪めた。「私が悪いの」と言いながら瞳を潤ませている、私の妹アニエスの肩を抱きながら。 アニエスはいつだって私の前に立ちはだかった。 これまで何ひとつとして、私の思い通りになったことはない。すべてアニエスが決めて、両親はアニエスが言うことならと頷いた。 だからきっと、この婚約者の入れ替えも両親は快諾するのだろう。アニエスが決めたのなら間違いないからと。 もういい加減、妹から離れたい。 そう思った私は、魔術師の弟子ノエルに結婚を前提としたお付き合いを申し込んだ。互いに利のある契約として。 だけど弟子だと思ってたその人は実は魔術師で、しかも私を好きだったらしい。

処理中です...