婚約破棄は夜会でお願いします

編端みどり

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第十五話

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えっと……今何が起きているのでしょうか?

カルロ様が、わたくしに求婚したのですよね。嬉しいですけど、まずはお父様に確認しないと。

「あの……お父様はどう思われますか?」

「シルヴィア、自分のドレスを見てごらん?」

ドレス?
ドレスはお父様のご指示で黄色と緑……。あら?

カルロ様が真っ赤なお顔で俯いておられます。美しい金髪が揺れておりますわ。

金……? あああ!!!
カルロ様の瞳の色は緑でしたわ!!!

「お父様、カルロ様がいらした時わたくしのドレスの色を指定したのは……」

お父様としては、カルロ様の求婚は望ましいという事ですわね。そうですよね。カルロ様は強いし、素敵な方ですもの。

「あとはシルヴィア次第だよ。団長なら家柄も申し分ないし、アルベルトより余程良いご縁だね。何より、彼なら確実にシルヴィアを大事にしてくれる。だけど、シルヴィアが嫌ならやめなさい。あれだけアルベルトがキスを迫って気持ち悪いと言っていたのに、団長もシルヴィアにキスを迫ったらしいからねぇ」

「……え? カルロ様からそんな不誠実な事された事ありませんわよ。お父様! それは誤解ですわ!」

「いや、誤解ではない。少しでも意識して貰いたくてキスするか? などと言った事は何度もあります。もちろん、本当にするつもりはありませんでした。それでも気持ち悪いですよね。申し訳ありません」

「ほら、こんな男やめなさい」

え……?
あ、あれは単にわたくしがあまりに初心だから、慣れさせようとしてくれただけではありませんの?!

でもわたくし、カルロ様に迫られるのは、ドキドキしましたけど嫌な気持ちはありませんでしたわ。

アルベルト様はあれだけ嫌だったのに……。

「シルヴィア? どうしたんだい?」

「お父様……わたくし、どうしたら良いか分かりません……」

カルロ様は、優しいし、お強いです。紳士的ですし、お話しするのも楽しいし、わたくしが騎士になりたい事も分かっておられて、待つとまで言って下さいます。

こんな素敵な方、わたくしとは釣り合わないのでは……?

「急にこんな事を言って申し訳ありません。ですが、私はシルヴィア様を愛しています。シルヴィア様は、私がお嫌いですか?」

「いいえ! カルロ様を嫌うなどありえませんわ」

だけど……まだ好きかは分かりません。
アルベルト様の時のようになるのも怖いです。

「でしたら、せめて私を婚約者候補にして下さいませんか?」

「婚約者候補ですか?」

「ええ、シルヴィア様が私と結婚したいと思うまで待ちます。他の男が良いなら振って頂いて構いません」

「そんな不誠実な事出来ませんわ!」

「なら、今すぐオレと婚約しましょう?」

……なんでそうなりますの!
お父様も、なんで笑ってますの!

「シルヴィア、私はシルヴィアにもう政略結婚させる気はないよ。なんなら、騎士になってから仲良くなった平民の男の子でも構わない。ゆっくり選びなさい」

「待って下さいませ! お父様! わたくしはひとりっ子ですから、この家の跡取りですわよ!」

「どうしても家を継げないなら、養子を取るなりやりようはいくらでもある。シルヴィアの好きにして良いんだよ」

「私では不足ですか? 私は公爵家で教育を受けておりましたから、領地経営でもお役に立てますよ。ダミラノ伯爵程ではありませんが、腕も自信があります。騎士としてもそこそこの稼ぎがありますから、シルヴィア様に苦労をかける事はありませんよ」

「そ、そんなの分かってますわ! カルロ様が素敵な方である事は分かっております!」

カルロ様のお顔が近いです! そんな仔犬のような目で見つめないで下さいまし!

どうして良いか分かりませんわ!!!

……でも、カルロ様と結婚したら幸せだろうなとも思います。お話ししていても楽しいですし、何より訓練をしている時の真剣な眼差しは、とてもかっこ良いです。求婚されて、嬉しい気持ちなのも本当です。

きっと、他の方が求婚に来てもこんなに嬉しくないでしょう。

「……お父様、わたくしが決めて良いのですか?」

「ああ、もちろん。受けても良いし、断っても構わない」

「保留にして頂いても良いのですよ」

「急に来たからねぇ、普通は保留だね」

保留……。そう聞くと急に残念な気持ちになりました。こんな素敵な方、すぐ他の女性に取られてしまうのでは?

あら? 先ほど同じ事をカルロ様も仰っていましたわね。

……そうか、わたくし、カルロ様が好きなのですね。

「本当に、すぐ結婚しなくて良いのですか?」

騎士になる夢は諦められそうにありません。

「もちろんです。いつまででも待ちます。そもそもオレは結婚する気はなかったのですから、両親も兄も急かす事はありません。どうか私を選んで下さい」

だけど、カルロ様が他の方と添い遂げるのも嫌です。わたくし、こんなに欲張りだったのですね。

「お受けします。カルロ様、わたくしと結婚して下さいませ」
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