婚約破棄は夜会でお願いします

編端みどり

文字の大きさ
23 / 28

第二十三話

しおりを挟む
サブリナ様は騎士団で取調べを受けています。最初は頑なに否定していましたが、シャナさんが真実を話して下さり、釈放されたと聞くと観念して罪を認めました。

シャナさんの説得は、ヘレナがしてくれましたわ。シャナさんは、我々の言葉を全く聞き入れてくれませんでした。ですがヘレナが話すとすぐに全て話してくれました。ヘレナの過去は、騎士団全員が知る事になりましたが、誰も気にしていません。よくある事だ、気にするな俺なんて……私なんて……とみんな隠していた過去を暴露し始めました。わたくしもアルベルト様の事を話すと、知らなかった平民出身の騎士の皆様が、呆れておられました。貴族出身のニコラは、有名だと笑っていましたけどね。ヘレナは、色々気にしすぎた。私は騎士。過去も背負って堂々と生きていくと仰っていました。やっぱりヘレナは、強くて素敵です。

ヘレナは、仕事以外の時間を全て鍛錬に費やしていたそうです。借金を返し終わり、娼館を出てすぐに騎士の試験を受けたそうです。幼い頃、助けてくれた女性騎士に憧れてどうしても騎士になりたかったと笑うヘレナの努力を、みんな称賛していました。

エリック様も厳重に取り調べた結果、サブリナ様へ危害を加えようとした事を認めました。未遂であり、身分差もありますから罪を問う事は出来ませんが、貴族としては大ダメージです。

エリック様は逃げるように他国へ移住なさいました。

「あんな逆恨み男、貴族の地位を捨てて他国でまともに生きられるか分かりませんわ。生きてたとしても、今までのように威張る事もできません。サブリナ様、少しはスッキリしませんか?」

「そうね、スッキリしたわ。ねぇ、これから私はどうなるの?」

サブリナ様は、すっかりお嬢様言葉が抜けて、年相応の笑顔を浮かべておられます。

「裁判を受けて、罪状が確定します。恐らく、被害者は逃げてしまわれましたし、正当防衛になるのではないでしょうか。シャナさんに罪を被せた事もありますから、無罪とはいかないでしょうけど、数年の服役で済む可能性が高いですわ」

「私が服役したら、アルベルトはどうなるの?」

「ひとりでなんとかするでしょ。大人ですもの」

「でも! あの人ひとりじゃご飯も作れないし、お金も稼げない!」

「どうして、全てサブリナ様が背負うのですか? 夫婦は助け合うものでしょう?」

「だって私のせいだから! アルベルトに捨てられたら私……」

「サブリナ様は、アルベルト様と居て幸せなんですか?」

「……え?」

「わたくしは、アルベルト様と婚約していた時は地獄でしたわ。アルベルト様は、わたくしを見下して、馬鹿にして、全てを押し付ける。将来こんな男と結婚するなんてと何度も絶望しました。アルベルト様が妻を大事にする方とは思えません。サブリナ様にされた事は忘れておりませんし、許す気もありません。ですが、さっさと結婚するよう仕向けたのはわたくしです。だから、わたくしにも責任があります。もう一度だけ聞きます。サブリナ様はアルベルト様と結婚して幸せなんですか?」

「そういうとこ! 貴方のそういうとこが嫌いなの!! 優しくて、真っ直ぐで、さも自分が正しいって顔して……」

「申し訳ありません。これがわたくしです」

「分かってる! 最初に優しくしてくれたのもシルヴィア様だった! 私……頭が良いからって急に貴族にされて! 訳の分からない事ばかり詰め込まれて! 学園でも、味方は居なかった! 爵位だけで生徒会長にされても、誰も生徒会に入ってくれないし! でも、シルヴィア様は普通に……普通に接して……くれて……困ってた私を見かねて生徒会にも入ってくれた。貴方が眩しかった。羨ましかった。そんな時、貴方の婚約者のアルベルトが……私に……私でも……貴方に勝てるところがあった……だから……縋ってしまったの……ごめんなさい……シルヴィア様……わたし……今……全然幸せじゃない……アルベルトも……優しくないの……毎日、私のせいだって……もっと稼いで来いって……」

「そんなおバカ、サブリナ様に相応しくありませんわ」

「でも……王太子殿下が証人だから……離縁は出来ないって……」

「サブリナ様、貴方は罪を犯しました。罪人は、無条件で離縁されます。パートナーが、離縁を望まなければ夫婦関係は続きますが、アルベルト様はサブリナ様と夫婦で居続けたいと望むでしょうか? 望むなら、アルベルト様が変わる希望はあるかもしれません。望まないなら、それこそお荷物を捨てるチャンスですわ」

「そう、そっか……シルヴィア様……ありがとう」

「お礼は不要です。わたくしは仕事をしただけですもの」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹ばかりを贔屓し溺愛する婚約者にウンザリなので、わたしも辺境の大公様と婚約しちゃいます

新世界のウサギさん
恋愛
わたし、リエナは今日婚約者であるローウェンとデートをする予定だった。 ところが、いつになっても彼が現れる気配は無く、待ちぼうけを喰らう羽目になる。 「私はレイナが好きなんだ!」 それなりの誠実さが売りだった彼は突如としてわたしを捨て、妹のレイナにぞっこんになっていく。 こうなったら仕方ないので、わたしも前から繋がりがあった大公様と付き合うことにします!

氷の王弟殿下から婚約破棄を突き付けられました。理由は聖女と結婚するからだそうです。

吉川一巳
恋愛
ビビは婚約者である氷の王弟イライアスが大嫌いだった。なぜなら彼は会う度にビビの化粧や服装にケチをつけてくるからだ。しかし、こんな婚約耐えられないと思っていたところ、国を揺るがす大事件が起こり、イライアスから神の国から召喚される聖女と結婚しなくてはいけなくなったから破談にしたいという申し出を受ける。内心大喜びでその話を受け入れ、そのままの勢いでビビは神官となるのだが、招かれた聖女には問題があって……。小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

【完結】貴方の後悔など、聞きたくありません。

なか
恋愛
学園に特待生として入学したリディアであったが、平民である彼女は貴族家の者には目障りだった。 追い出すようなイジメを受けていた彼女を救ってくれたのはグレアルフという伯爵家の青年。 優しく、明るいグレアルフは屈託のない笑顔でリディアと接する。 誰にも明かさずに会う内に恋仲となった二人であったが、 リディアは知ってしまう、グレアルフの本性を……。 全てを知り、死を考えた彼女であったが、 とある出会いにより自分の価値を知った時、再び立ち上がる事を選択する。 後悔の言葉など全て無視する決意と共に、生きていく。

傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~

キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。 両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。 ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。 全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。 エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。 ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。 こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。

【完結】前代未聞の婚約破棄~なぜあなたが言うの?~

暖夢 由
恋愛
「サリー・ナシェルカ伯爵令嬢、あなたの婚約は破棄いたします!」 高らかに宣言された婚約破棄の言葉。 ドルマン侯爵主催のガーデンパーティーの庭にその声は響き渡った。 でもその婚約破棄、どうしてあなたが言うのですか? 2021/7/18 HOTランキング1位 ありがとうございます。 2021/7/20 総合ランキング1位 ありがとうございます

【完結・全10話】偽物の愛だったようですね。そうですか、婚約者様?婚約破棄ですね、勝手になさい。

BBやっこ
恋愛
アンネ、君と別れたい。そういっぱしに別れ話を持ち出した私の婚約者、7歳。 ひとつ年上の私が我慢することも多かった。それも、両親同士が仲良かったためで。 けして、この子が好きとかでは断じて無い。だって、この子バカな男になる気がする。その片鱗がもう出ている。なんでコレが婚約者なのか両親に問いただしたいことが何回あったか。 まあ、両親の友達の子だからで続いた関係が、やっと終わるらしい。

復縁は絶対に受け入れません ~婚約破棄された有能令嬢は、幸せな日々を満喫しています~

水空 葵
恋愛
伯爵令嬢のクラリスは、婚約者のネイサンを支えるため、幼い頃から血の滲むような努力を重ねてきた。社交はもちろん、本来ならしなくても良い執務の補佐まで。 ネイサンは跡継ぎとして期待されているが、そこには必ずと言っていいほどクラリスの尽力があった。 しかし、クラリスはネイサンから婚約破棄を告げられてしまう。 彼の隣には妹エリノアが寄り添っていて、潔く離縁した方が良いと思える状況だった。 「俺は真実の愛を見つけた。だから邪魔しないで欲しい」 「分かりました。二度と貴方には関わりません」 何もかもを諦めて自由になったクラリスは、その時間を満喫することにする。 そんな中、彼女を見つめる者が居て―― ◇5/2 HOTランキング1位になりました。お読みいただきありがとうございます。 ※他サイトでも連載しています

なんでも思い通りにしないと気が済まない妹から逃げ出したい

木崎優
恋愛
「君には大変申し訳なく思っている」 私の婚約者はそう言って、心苦しそうに顔を歪めた。「私が悪いの」と言いながら瞳を潤ませている、私の妹アニエスの肩を抱きながら。 アニエスはいつだって私の前に立ちはだかった。 これまで何ひとつとして、私の思い通りになったことはない。すべてアニエスが決めて、両親はアニエスが言うことならと頷いた。 だからきっと、この婚約者の入れ替えも両親は快諾するのだろう。アニエスが決めたのなら間違いないからと。 もういい加減、妹から離れたい。 そう思った私は、魔術師の弟子ノエルに結婚を前提としたお付き合いを申し込んだ。互いに利のある契約として。 だけど弟子だと思ってたその人は実は魔術師で、しかも私を好きだったらしい。

処理中です...