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第二十二話
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「サブリナ様は、どうしてこちらに?」
現在、サブリナ様のお部屋に案内されております。場所は当然レオンにも伝えてありますわ。
「相変わらず察しが悪いわね。わたくし、ここで働いてるのよ」
やはりそうでしたか。ですが、ここの娼館の女性は未婚者限定ではありませんでしたか?
「はぁ……既婚者である事を隠して娼婦をしておりますの?」
一応、周りに人がいない事を確認して小声で聞きます。
「そうよ。一応黙っててくれる気はあるのね」
「サブリナ様がどこで働こうと興味ありませんけど、仕事を奪われたと絡まれては敵いませんもの」
「冷たいわねぇ、わたくしここの人気ナンバーワンなのよ!」
サブリナ様が人気ナンバーワンなんて、ここのお客様は見る目がありませんわ。だけど、今それを言って機嫌を悪くさせる訳にいきませんわよね。
「そうなのですね。さすがサブリナ様ですわ」
「ふふん! そうでしょ!」
あぁ、学園でもこんな感じでしたわよね。他の方には良い生徒会長なのに、わたくしだけ見下してきて、何故かライバル視しておられました。
「アルベルト様はご存知なんですか?」
「ええ! アルベルトの紹介だもの」
あのおバカ、なんてことしてますの!
「アルベルト様はどうしてここを紹介されたのでしょう」
「元々常連だったんですって。お金が無くなってしまったから、わたくしが働いて取り戻せって言われたわ。わたくしが侯爵家を継げる筈だったのに、何故か急に養子を解消されたのはわたくしのせいだから。アルベルトも廃嫡されて、ずっと落ち込んでるの。だから、わたくしが支えて以前と同じくらいの暮らしをしないと」
貴族の贅沢さは、領地の物を売る為の広告費です。社交を行い、領民に富をもたらす為に華やかな服装やアクセサリーで武装するのですわ。
平民が貴族並みの贅沢をするには、商売で成功するしかありません。いくら人気のある娼婦が稼いでも貴族並みの暮らしは無理です。
「サブリナ様は賢いのですから、他にもお仕事はあったのではありませんか?」
サブリナ様のように教師を籠絡出来たなら娼婦は向いているでしょうけど、やっぱり既婚者がやるのは対抗がある仕事の筈です。そもそも、真っ先に反対する筈の夫が勧めるなんて信じられません。
……でも、サブリナ様はあのおバカと一生添い遂げるしかないのですわよね。なんだかものすごく罪悪感が湧いてきました。
「なかったわ。どこも雇ってくれなかった。ふしだらなわたくしが出来る仕事はこれだけよ」
そう、でしたか。自業自得だという気持ちと、哀れだと思う気持ちが交錯しております。おそらく、おふたりの噂はだいぶ広がっているのでしょう。まともな商会ならどんなに優秀でも雇いませんわね。
「ふん、相変わらず甘いわね。ここがわたくしの部屋よ。入ったら話をするわ」
「分かりました」
さて、どんな罠があるかしら。入った瞬間閉じ込められるとかありそうですね。まぁ、すぐカルロが来てくれますから問題ないですけど……。
「そんなに警戒しなくても、この部屋は今誰もいないわ」
なるほど、後から危機が来るのですね。そうなると、早めに聞き出さないといけませんわね。
「部屋にはだれもいませんわね。サブリナ様、シャナさんの話を聞かせてくださいな」
「ええ、シャナ姐さんが刺したエリックは無事?」
本当は、無事です。ですけど、それを伝えてはいけない気がします。
「ご自宅に運ばれましたが、残念ながら……」
「そう! アハハ! やったわ! なら全部話してあげる。刺したのは、姐さんじゃない。わたくしよ」
「……は?!」
シャナさんは、ナイフを持っており自分がやったと言った為拘束された筈です。
「エリックはボレッリ侯爵家の分家筋でね、わたくしと結婚する予定だったそうよ。留学から帰って来たら、わたくしが結婚したと知って探したんですって。わたくし、なぁんにも聞いてなかったけどね。ホント、貴族なんて自分勝手よ。勝手に養子にして、勝手に放り出す。誰も味方が居ないから、ちょっと色仕掛けするくらい良いじゃない。キスもダメなんて馬鹿なの?!」
「お固いのは確かですわね。それで、エリック様を何故刺したのですか?」
「最初に刺そうとしたのはエリックよ!」
……なるほど。エリック様はお話が出来るくらいには回復しておられますが、娼館に居たなど醜聞だからと取り調べが進んでおりません。本来はエリック様が加害者だったのですね。
「何故シャナさんが罪を被ったのですか?」
「シャナ姐さんは優しいの、夫に無理矢理働かされていると相談していたら、すっかりわたくしを哀れんでくれた。まるで貴方みたいにね。同情して罪を被ってくれたわ」
はぁ……なるほど。だからやったと言うばかりで動機も分からなかったのですね。
「ああ、わたくしがここで自白しても、証人は貴方だけ。姐さんも絶対わたくしがやったなんて言わないから、無駄よ。また、貴方が嘘つきになれば良い。真実を知っても何も出来ず苦しめば良いわ」
「あいにくですが、以前とは違います。騎士団の皆様はわたくしの話を信じてくれますわ」
「ナイフを持って自分がやったと言う姐さんがいるのよ。わたくし、自分でやったなんて絶対言わないわ。わたくしを捕まえるのは無理ではなくて?」
……やはりサブリナ様は賢いですわね。確かに、シャナさんが真実を話してくれないと無理です。
「それにね、貴方は今からそれどころじゃなくなるわ。騎士になるなんて、結婚は諦めたのよね? 絶対結婚出来ないようにトドメをさしてあげるわ」
「何を、する気ですか?」
だいぶ話していましたから、そろそろカルロが来る筈です。武器を持ち、最大限に警戒します。
「今からわたくしのお客様が来るの。貴方にお相手してもらうわ」
……サブリナ様は、賢いのにどこか抜けておられます。騎士が、そう簡単に襲われる訳ないではありませんか。
「噂が立つだけで、充分ダメージがあるわ。これから婚約者を探すのは難しいわよ」
「彼女はオレの婚約者だ。話は聞いていたから、エリックを刺した件について取り調べを受けてもらう。彼女を騎士団にお連れしろ」
「団長、お待ちしておりましたわ」
「突入しそうになる団長を抑えるの大変だったよ……」
「わたくし何もしてませんわよ! 証拠は?! 証人は?! シルヴィア様ひとりの話を信じるのですか?!」
「貴方がやったと仰った話はドアの外で聞いておりました。ここのドアは薄いですから、バッチリ聞こえましたよ。聞いていたのは、ここにいる騎士全員と、ここの従業員も何名か居ます。全員の聞き間違いだなんて仰いませんよね。少なくともその件のご説明はお願いします」
現在、サブリナ様のお部屋に案内されております。場所は当然レオンにも伝えてありますわ。
「相変わらず察しが悪いわね。わたくし、ここで働いてるのよ」
やはりそうでしたか。ですが、ここの娼館の女性は未婚者限定ではありませんでしたか?
「はぁ……既婚者である事を隠して娼婦をしておりますの?」
一応、周りに人がいない事を確認して小声で聞きます。
「そうよ。一応黙っててくれる気はあるのね」
「サブリナ様がどこで働こうと興味ありませんけど、仕事を奪われたと絡まれては敵いませんもの」
「冷たいわねぇ、わたくしここの人気ナンバーワンなのよ!」
サブリナ様が人気ナンバーワンなんて、ここのお客様は見る目がありませんわ。だけど、今それを言って機嫌を悪くさせる訳にいきませんわよね。
「そうなのですね。さすがサブリナ様ですわ」
「ふふん! そうでしょ!」
あぁ、学園でもこんな感じでしたわよね。他の方には良い生徒会長なのに、わたくしだけ見下してきて、何故かライバル視しておられました。
「アルベルト様はご存知なんですか?」
「ええ! アルベルトの紹介だもの」
あのおバカ、なんてことしてますの!
「アルベルト様はどうしてここを紹介されたのでしょう」
「元々常連だったんですって。お金が無くなってしまったから、わたくしが働いて取り戻せって言われたわ。わたくしが侯爵家を継げる筈だったのに、何故か急に養子を解消されたのはわたくしのせいだから。アルベルトも廃嫡されて、ずっと落ち込んでるの。だから、わたくしが支えて以前と同じくらいの暮らしをしないと」
貴族の贅沢さは、領地の物を売る為の広告費です。社交を行い、領民に富をもたらす為に華やかな服装やアクセサリーで武装するのですわ。
平民が貴族並みの贅沢をするには、商売で成功するしかありません。いくら人気のある娼婦が稼いでも貴族並みの暮らしは無理です。
「サブリナ様は賢いのですから、他にもお仕事はあったのではありませんか?」
サブリナ様のように教師を籠絡出来たなら娼婦は向いているでしょうけど、やっぱり既婚者がやるのは対抗がある仕事の筈です。そもそも、真っ先に反対する筈の夫が勧めるなんて信じられません。
……でも、サブリナ様はあのおバカと一生添い遂げるしかないのですわよね。なんだかものすごく罪悪感が湧いてきました。
「なかったわ。どこも雇ってくれなかった。ふしだらなわたくしが出来る仕事はこれだけよ」
そう、でしたか。自業自得だという気持ちと、哀れだと思う気持ちが交錯しております。おそらく、おふたりの噂はだいぶ広がっているのでしょう。まともな商会ならどんなに優秀でも雇いませんわね。
「ふん、相変わらず甘いわね。ここがわたくしの部屋よ。入ったら話をするわ」
「分かりました」
さて、どんな罠があるかしら。入った瞬間閉じ込められるとかありそうですね。まぁ、すぐカルロが来てくれますから問題ないですけど……。
「そんなに警戒しなくても、この部屋は今誰もいないわ」
なるほど、後から危機が来るのですね。そうなると、早めに聞き出さないといけませんわね。
「部屋にはだれもいませんわね。サブリナ様、シャナさんの話を聞かせてくださいな」
「ええ、シャナ姐さんが刺したエリックは無事?」
本当は、無事です。ですけど、それを伝えてはいけない気がします。
「ご自宅に運ばれましたが、残念ながら……」
「そう! アハハ! やったわ! なら全部話してあげる。刺したのは、姐さんじゃない。わたくしよ」
「……は?!」
シャナさんは、ナイフを持っており自分がやったと言った為拘束された筈です。
「エリックはボレッリ侯爵家の分家筋でね、わたくしと結婚する予定だったそうよ。留学から帰って来たら、わたくしが結婚したと知って探したんですって。わたくし、なぁんにも聞いてなかったけどね。ホント、貴族なんて自分勝手よ。勝手に養子にして、勝手に放り出す。誰も味方が居ないから、ちょっと色仕掛けするくらい良いじゃない。キスもダメなんて馬鹿なの?!」
「お固いのは確かですわね。それで、エリック様を何故刺したのですか?」
「最初に刺そうとしたのはエリックよ!」
……なるほど。エリック様はお話が出来るくらいには回復しておられますが、娼館に居たなど醜聞だからと取り調べが進んでおりません。本来はエリック様が加害者だったのですね。
「何故シャナさんが罪を被ったのですか?」
「シャナ姐さんは優しいの、夫に無理矢理働かされていると相談していたら、すっかりわたくしを哀れんでくれた。まるで貴方みたいにね。同情して罪を被ってくれたわ」
はぁ……なるほど。だからやったと言うばかりで動機も分からなかったのですね。
「ああ、わたくしがここで自白しても、証人は貴方だけ。姐さんも絶対わたくしがやったなんて言わないから、無駄よ。また、貴方が嘘つきになれば良い。真実を知っても何も出来ず苦しめば良いわ」
「あいにくですが、以前とは違います。騎士団の皆様はわたくしの話を信じてくれますわ」
「ナイフを持って自分がやったと言う姐さんがいるのよ。わたくし、自分でやったなんて絶対言わないわ。わたくしを捕まえるのは無理ではなくて?」
……やはりサブリナ様は賢いですわね。確かに、シャナさんが真実を話してくれないと無理です。
「それにね、貴方は今からそれどころじゃなくなるわ。騎士になるなんて、結婚は諦めたのよね? 絶対結婚出来ないようにトドメをさしてあげるわ」
「何を、する気ですか?」
だいぶ話していましたから、そろそろカルロが来る筈です。武器を持ち、最大限に警戒します。
「今からわたくしのお客様が来るの。貴方にお相手してもらうわ」
……サブリナ様は、賢いのにどこか抜けておられます。騎士が、そう簡単に襲われる訳ないではありませんか。
「噂が立つだけで、充分ダメージがあるわ。これから婚約者を探すのは難しいわよ」
「彼女はオレの婚約者だ。話は聞いていたから、エリックを刺した件について取り調べを受けてもらう。彼女を騎士団にお連れしろ」
「団長、お待ちしておりましたわ」
「突入しそうになる団長を抑えるの大変だったよ……」
「わたくし何もしてませんわよ! 証拠は?! 証人は?! シルヴィア様ひとりの話を信じるのですか?!」
「貴方がやったと仰った話はドアの外で聞いておりました。ここのドアは薄いですから、バッチリ聞こえましたよ。聞いていたのは、ここにいる騎士全員と、ここの従業員も何名か居ます。全員の聞き間違いだなんて仰いませんよね。少なくともその件のご説明はお願いします」
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