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次の日から、フォッグはリリーに付き添うようになった。フォッグはリリーに付き添う為に、吐きたくない嘘を吐いた。
「リリーお嬢様を見張る必要があります」
自分がリリーの監視をする。拾ってもらった恩はあるが、自分が忠誠を誓ったのはリリーの父親だから、もう2度と妹を虐めたりしないように監視すると言い出した。
リリーの母親が諸手を挙げて賛成し、フォッグはリリー専属の執事となった。
「……上手くいったでしょう?」
時を止めて、フォッグはリリーに笑いかけた。
「よくあのお父様を説得できたわね。侍女を付けるのですら、ずいぶん渋られたのに」
「高位貴族のご令嬢が、供も付けないなんておかしいですよ。そこは渋るとこじゃないでしょう。あまり吐きたくもない嘘を吐きましたけど、安心して下さい。オレはお嬢様の味方です」
「今更疑ったりしないわ。フォッグがみんなと同じなら……もう何もかもどうでもいい」
そう言って諦めた目をするリリーの耳元でフォッグは囁いた。
「オレは違いますよ。安心して下さい」
真っ赤な顔になったリリーを抱き締めたい衝動を抑え込み、冷たい執事の仮面を被る。
その日からフォッグは常にリリーを助け続けた。フォッグの助けもあり、リリーは完璧に仕事を終えられるようになった。王妃に褒められるようになり、国王もリリーを讃える。
だが、王太子はますますリリーを疎んじた。
書類を燃やすような愚行は全てフォッグが事前に止めていたが、相変わらず仕事はしないし、リリーの悪口を言うばかり。
定期的にリリーと茶会をする令嬢達は裏では側妃の座を狙っている。
フォッグは心の中で舌打ちしながら、リリーを守り続けた。
目的を達成する為に、仕事の合間に城で自由に読める魔導書を読み漁り、転移魔法を覚えたフォッグは、深夜に秘密裏に城に侵入して極秘保管してある魔導書を全て覚えた。
他にも、仕事の合間に様々な準備を行った。
準備には、1年かかった。
その間、1度たりとも王太子はリリーに話しかけなかった。
パーティーのエスコートだけはしたが、すぐに他の女の元へ行ってしまう。そのくせ、王妃の勧めで露出の多いドレスを着て、派手なメイクを施すようになったリリーを見る目は、欲に塗れていた。
リリーは、最初こそ王太子と仲良くなろうと必死だったが、フォッグが来てからは割り切って接するようになった。
リリーがフォッグに向ける目には好意が溢れていたが、決して悟られないように振る舞った。
そのうち、フォッグは完璧令嬢の完璧執事だと呼ばれるようになった。
フォッグは、不審に思われない程度にリリーの悪評を取り除こうとした。
妹がリリーに虐められたと言えば、証拠を用意してリリーの潔白を証明した。
だがその振る舞いは、リリーの評判を回復する事は出来なかった。
生意気だと言われ、父がリリーに離縁状を、フォッグに解雇状を叩きつける機会が増えた。その度に2人は必死で謝罪して許しを乞うた。すると満足そうに笑いながら父親は書類を破り捨てる。
リリーの仕事ぶりが認められるようになり嫉妬した母親の口添えで、離縁状も解雇状も父親の魔力が込められたものになった。リリーやフォッグが魔力を込めれば撤回は不可能。無理矢理魔力を込めさせる事は可能だから、脅しの道具としてよく使われる。
これを渡されるという事は、必死で謝らないといけない。そう思わせる事が出来るアイテムなのだ。
だけどリリーやフォッグにとっては自由への大事なプラチナチケット。だが、王家にとってはリリーの身分が無くなるのは困る。
見張りから報告された国王は、脅しに使った書類は必ず処分するようにと厳命した。父親は、リリー達を許した後は必ず書類を破り捨てる。
たが、破られる前にフォッグが時を止め、偽物とすり替えていた。
大量の離縁状と解雇状が手に入った。魔力を込めた瞬間に、リリーもフォッグも自らの身分を失う。
必要な書類を手に入れ、全ての準備を終えてから、いつものように時を止めて、フォッグはリリーに聞いた。
「お嬢様、自由になりたいですか? あの王太子が好きなら、オレはこれからもお嬢様を支えます。だけど、もしお嬢様が自由を求めるなら……どうかオレを選んでくれませんか?」
フォッグは丁寧に説明した。今までリリーがやってきた事は全てやらなくて良くなる。だけどそれは、リリーが義務を放棄するという事。
今までのように、綺麗なドレスは用意できないかもしれない。美味しいものも食べられないかもしれない。学んできた事も、無駄になる。
「だけど……オレはお嬢様を……いや、リリー様を愛しています。不自由な暮らしはさせません。仕事も家も見つけてあります。国が変われば、オレは迫害されずに生きていけるって分かりました。国王が魔族の血を引いてる国もあるんです。オレ達の移住許可は取れています。お嬢様が納得出来る形で仕事を片付けたら、一緒に暮らしませんか? オレは王太子殿下みたいに偉くないし、何も持っていません。でも、ずっとリリー様の側に居ます。他の女性に目移りなんてしません。一生、あなただけを愛します。どうか、オレを選んでくれませんか?」
その日リリーは、初めてフォッグと手を繋いだ。
「リリーお嬢様を見張る必要があります」
自分がリリーの監視をする。拾ってもらった恩はあるが、自分が忠誠を誓ったのはリリーの父親だから、もう2度と妹を虐めたりしないように監視すると言い出した。
リリーの母親が諸手を挙げて賛成し、フォッグはリリー専属の執事となった。
「……上手くいったでしょう?」
時を止めて、フォッグはリリーに笑いかけた。
「よくあのお父様を説得できたわね。侍女を付けるのですら、ずいぶん渋られたのに」
「高位貴族のご令嬢が、供も付けないなんておかしいですよ。そこは渋るとこじゃないでしょう。あまり吐きたくもない嘘を吐きましたけど、安心して下さい。オレはお嬢様の味方です」
「今更疑ったりしないわ。フォッグがみんなと同じなら……もう何もかもどうでもいい」
そう言って諦めた目をするリリーの耳元でフォッグは囁いた。
「オレは違いますよ。安心して下さい」
真っ赤な顔になったリリーを抱き締めたい衝動を抑え込み、冷たい執事の仮面を被る。
その日からフォッグは常にリリーを助け続けた。フォッグの助けもあり、リリーは完璧に仕事を終えられるようになった。王妃に褒められるようになり、国王もリリーを讃える。
だが、王太子はますますリリーを疎んじた。
書類を燃やすような愚行は全てフォッグが事前に止めていたが、相変わらず仕事はしないし、リリーの悪口を言うばかり。
定期的にリリーと茶会をする令嬢達は裏では側妃の座を狙っている。
フォッグは心の中で舌打ちしながら、リリーを守り続けた。
目的を達成する為に、仕事の合間に城で自由に読める魔導書を読み漁り、転移魔法を覚えたフォッグは、深夜に秘密裏に城に侵入して極秘保管してある魔導書を全て覚えた。
他にも、仕事の合間に様々な準備を行った。
準備には、1年かかった。
その間、1度たりとも王太子はリリーに話しかけなかった。
パーティーのエスコートだけはしたが、すぐに他の女の元へ行ってしまう。そのくせ、王妃の勧めで露出の多いドレスを着て、派手なメイクを施すようになったリリーを見る目は、欲に塗れていた。
リリーは、最初こそ王太子と仲良くなろうと必死だったが、フォッグが来てからは割り切って接するようになった。
リリーがフォッグに向ける目には好意が溢れていたが、決して悟られないように振る舞った。
そのうち、フォッグは完璧令嬢の完璧執事だと呼ばれるようになった。
フォッグは、不審に思われない程度にリリーの悪評を取り除こうとした。
妹がリリーに虐められたと言えば、証拠を用意してリリーの潔白を証明した。
だがその振る舞いは、リリーの評判を回復する事は出来なかった。
生意気だと言われ、父がリリーに離縁状を、フォッグに解雇状を叩きつける機会が増えた。その度に2人は必死で謝罪して許しを乞うた。すると満足そうに笑いながら父親は書類を破り捨てる。
リリーの仕事ぶりが認められるようになり嫉妬した母親の口添えで、離縁状も解雇状も父親の魔力が込められたものになった。リリーやフォッグが魔力を込めれば撤回は不可能。無理矢理魔力を込めさせる事は可能だから、脅しの道具としてよく使われる。
これを渡されるという事は、必死で謝らないといけない。そう思わせる事が出来るアイテムなのだ。
だけどリリーやフォッグにとっては自由への大事なプラチナチケット。だが、王家にとってはリリーの身分が無くなるのは困る。
見張りから報告された国王は、脅しに使った書類は必ず処分するようにと厳命した。父親は、リリー達を許した後は必ず書類を破り捨てる。
たが、破られる前にフォッグが時を止め、偽物とすり替えていた。
大量の離縁状と解雇状が手に入った。魔力を込めた瞬間に、リリーもフォッグも自らの身分を失う。
必要な書類を手に入れ、全ての準備を終えてから、いつものように時を止めて、フォッグはリリーに聞いた。
「お嬢様、自由になりたいですか? あの王太子が好きなら、オレはこれからもお嬢様を支えます。だけど、もしお嬢様が自由を求めるなら……どうかオレを選んでくれませんか?」
フォッグは丁寧に説明した。今までリリーがやってきた事は全てやらなくて良くなる。だけどそれは、リリーが義務を放棄するという事。
今までのように、綺麗なドレスは用意できないかもしれない。美味しいものも食べられないかもしれない。学んできた事も、無駄になる。
「だけど……オレはお嬢様を……いや、リリー様を愛しています。不自由な暮らしはさせません。仕事も家も見つけてあります。国が変われば、オレは迫害されずに生きていけるって分かりました。国王が魔族の血を引いてる国もあるんです。オレ達の移住許可は取れています。お嬢様が納得出来る形で仕事を片付けたら、一緒に暮らしませんか? オレは王太子殿下みたいに偉くないし、何も持っていません。でも、ずっとリリー様の側に居ます。他の女性に目移りなんてしません。一生、あなただけを愛します。どうか、オレを選んでくれませんか?」
その日リリーは、初めてフォッグと手を繋いだ。
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