3 / 57
第三話
しおりを挟む
「そうなんです! いつもお姉様は優しいんですのよ。さ、お姉様ファーストダンスが始まりますわよ。いってらっしゃいませ」
先生の教え、その5。わかりやすい悪口は言うな。
お姉様はケイリー様にぞっこんで、夜会で仲良くなって即日婚約した。だけど、ケイリー様の評判は最悪だ。
本音を言えば、姉の本性がバレてケイリー様から婚約破棄されないかなーって思ってる。
「そうだね。アイリーン、ダンスに行こうか」
「ええ、よろしくね。シャーリー! 余計な事言わないで大人しくしててちょうだい!」
「余計な事ってなぁに? さ、いってらっしゃいませ」
お姉様は、わたくしを睨みつけながら去って行った。お姉様、ピンチの時ほど笑顔になりましょうよ。さて、今のうちに動きましょう。
先生の教え、その6。敵に気付かれないように、味方を増やせ。
「シャーリー! 今日は素敵ね!」
「エリザベス! ありがとう。ようやくわたくしのドレスを着れたわ」
親友のエリザベスは、公爵令嬢だ。
「ああ、それやっぱりシャーリーが選んだやつなのね。シャーリー、センスは良いのにいつも変なドレス着せられて可哀想だったもの」
「いつも見苦しくてごめんなさい……」
「そんな顔しないで! さ、みんなと過ごしましょう。その格好なら遠慮する事もないでしょ」
「ええ! ありがとう」
今までは、エリザベスに夜会で話しかけないように頼んでいた。
夜会ではわたくしはいつも壁の花。それを見てお姉様がわたくしを笑うのが定番だ。
エリザベスと話してるところを見られて、お姉様がエリザベスに絡んできたら困るもの。
エリザベスは先生の課外授業で仲良くなった。お姉様はサボったから、わたくしとエリザベスが仲がいい事は知らない。2人で通信魔法でおしゃべりするくらい仲良しなのよ。姉はまだ通信魔法使えないし、わたくしが魔法をどんどんできるようになっているのを知って、癇癪起こされたりしたら面倒だから黙っている。
本当はこのままずっとエリザベスの事を秘密にしておきたかった。
だけど、そうも言っていられなくなったのよね。とある事がキッカケで家族の仕打ちに耐えられなくなって、エリザベスに今まで黙っていたけど……と言って姉の事を相談したら、ケイリー様のことを教えてもらえた。上級貴族には有名らしいんだけど、あまり広がってはいないケイリー様の噂、それは……。
ケイリー様には複数の愛人がいるそうだ。
実は愛人の事は姉も知っている。愛人がいても良いと言っていたわ。愛人が1人居るのは事情があるだけで、愛してるのはわたくしだけだからって。
だけど、5人も愛人がいたら事情なんてないわよね。単なる女好きよ。
結婚するときに愛人を認めるか契約するから、愛人を認めてしまえば我が家で養うしかない。人数まで決められないのよね。認めるか、認めないか。それだけ。認めたら愛人の予算も計上されて、愛人を養わないと処罰される。跡継ぎを残す為に決めた契約だからって理由でね。それが、婿養子でも適用されるの納得いかないわ。
わたくしは、結婚前から愛人が居るってどうかと思うんだけど、それでも良いって姉も両親も言うの。惚れた弱み?
貴族にはよくある事だし、わざわざ自分から教えてくれたケイリー様は誠実だからって。
……どこが誠実なのよ。5人よ、5人。
必死で両親にも訴えたが、姉の邪魔をする見苦しい妹と思われて終わったわ。愛人が5人なんてありえないって。エリザベスの名前を出しても、嘘つきで終了。調べようともしないのよ! ふざけないでよ! 姉の結婚なんてどうでもいいし、邪魔なんてするもんですか!
先生の教え、その5。わかりやすい悪口は言うな。
お姉様はケイリー様にぞっこんで、夜会で仲良くなって即日婚約した。だけど、ケイリー様の評判は最悪だ。
本音を言えば、姉の本性がバレてケイリー様から婚約破棄されないかなーって思ってる。
「そうだね。アイリーン、ダンスに行こうか」
「ええ、よろしくね。シャーリー! 余計な事言わないで大人しくしててちょうだい!」
「余計な事ってなぁに? さ、いってらっしゃいませ」
お姉様は、わたくしを睨みつけながら去って行った。お姉様、ピンチの時ほど笑顔になりましょうよ。さて、今のうちに動きましょう。
先生の教え、その6。敵に気付かれないように、味方を増やせ。
「シャーリー! 今日は素敵ね!」
「エリザベス! ありがとう。ようやくわたくしのドレスを着れたわ」
親友のエリザベスは、公爵令嬢だ。
「ああ、それやっぱりシャーリーが選んだやつなのね。シャーリー、センスは良いのにいつも変なドレス着せられて可哀想だったもの」
「いつも見苦しくてごめんなさい……」
「そんな顔しないで! さ、みんなと過ごしましょう。その格好なら遠慮する事もないでしょ」
「ええ! ありがとう」
今までは、エリザベスに夜会で話しかけないように頼んでいた。
夜会ではわたくしはいつも壁の花。それを見てお姉様がわたくしを笑うのが定番だ。
エリザベスと話してるところを見られて、お姉様がエリザベスに絡んできたら困るもの。
エリザベスは先生の課外授業で仲良くなった。お姉様はサボったから、わたくしとエリザベスが仲がいい事は知らない。2人で通信魔法でおしゃべりするくらい仲良しなのよ。姉はまだ通信魔法使えないし、わたくしが魔法をどんどんできるようになっているのを知って、癇癪起こされたりしたら面倒だから黙っている。
本当はこのままずっとエリザベスの事を秘密にしておきたかった。
だけど、そうも言っていられなくなったのよね。とある事がキッカケで家族の仕打ちに耐えられなくなって、エリザベスに今まで黙っていたけど……と言って姉の事を相談したら、ケイリー様のことを教えてもらえた。上級貴族には有名らしいんだけど、あまり広がってはいないケイリー様の噂、それは……。
ケイリー様には複数の愛人がいるそうだ。
実は愛人の事は姉も知っている。愛人がいても良いと言っていたわ。愛人が1人居るのは事情があるだけで、愛してるのはわたくしだけだからって。
だけど、5人も愛人がいたら事情なんてないわよね。単なる女好きよ。
結婚するときに愛人を認めるか契約するから、愛人を認めてしまえば我が家で養うしかない。人数まで決められないのよね。認めるか、認めないか。それだけ。認めたら愛人の予算も計上されて、愛人を養わないと処罰される。跡継ぎを残す為に決めた契約だからって理由でね。それが、婿養子でも適用されるの納得いかないわ。
わたくしは、結婚前から愛人が居るってどうかと思うんだけど、それでも良いって姉も両親も言うの。惚れた弱み?
貴族にはよくある事だし、わざわざ自分から教えてくれたケイリー様は誠実だからって。
……どこが誠実なのよ。5人よ、5人。
必死で両親にも訴えたが、姉の邪魔をする見苦しい妹と思われて終わったわ。愛人が5人なんてありえないって。エリザベスの名前を出しても、嘘つきで終了。調べようともしないのよ! ふざけないでよ! 姉の結婚なんてどうでもいいし、邪魔なんてするもんですか!
96
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
真実の愛がどうなろうと関係ありません。
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。
婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。
「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」
サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。
それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。
サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。
一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。
若きバラクロフ侯爵レジナルド。
「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」
フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。
「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」
互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。
その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは……
(予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)
新しい人生を貴方と
緑谷めい
恋愛
私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。
突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。
2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。
* 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。
姉の婚約者であるはずの第一王子に「お前はとても優秀だそうだから、婚約者にしてやってもいい」と言われました。
ふまさ
恋愛
「お前はとても優秀だそうだから、婚約者にしてやってもいい」
ある日の休日。家族に疎まれ、蔑まれながら育ったマイラに、第一王子であり、姉の婚約者であるはずのヘイデンがそう告げた。その隣で、姉のパメラが偉そうにふんぞりかえる。
「ぞんぶんに感謝してよ、マイラ。あたしがヘイデン殿下に口添えしたんだから!」
一方的に条件を押し付けられ、望まぬまま、第一王子の婚約者となったマイラは、それでもつかの間の安らぎを手に入れ、歓喜する。
だって。
──これ以上の幸せがあるなんて、知らなかったから。
[完結中編]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜
コマメコノカ@女性向け・児童文学・絵本
恋愛
王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。
そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。
「帰ったら、結婚しよう」と言った幼馴染みの勇者は、私ではなく王女と結婚するようです
しーしび
恋愛
「結婚しよう」
アリーチェにそう約束したアリーチェの幼馴染みで勇者のルッツ。
しかし、彼は旅の途中、激しい戦闘の中でアリーチェの記憶を失ってしまう。
それでも、アリーチェはルッツに会いたくて魔王討伐を果たした彼の帰還を祝う席に忍び込むも、そこでは彼と王女の婚約が発表されていた・・・
【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません
ゆうき
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。
そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。
婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。
どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。
実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。
それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。
これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。
☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる