56 / 57
辺境伯夫人は頑張ります
19
しおりを挟む
あれから、我々はすぐに王城に移動して今までの事を報告した。エリザベスは、泣いて喜んでいたわ。
王太子殿下はお悩みを国王陛下達に打ち明けられ、殿下を追い詰めた貴族達は国王陛下が呼び出して釘を刺した。
そもそも、エリザベスと王太子殿下は結婚してまだ半年。お子を急かすなんて馬鹿げてる。
国王陛下から今回の件の褒美を与えると言われたわたくしは、全てフレッドにお任せした。
フレッドはハンス王子が来たらすぐに受け入れて保護する事と、わたくし達夫婦が必ず一緒に暮らせるよう魔法契約で縛る事を希望した。
即座にフレッドの希望は叶えられた。これで、わたくし達が離れる事は絶対にない。国王陛下、王妃様、王太子殿下、エリザベスの名が刻まれた契約は国中に告知された。
今回の事は公に出来ないので、戦争を回避した辺境伯夫婦への褒美として魔法契約をしたと伝えられている。あながち嘘ではないから、堂々とお話ししているわ。武勇伝を望まれた場合は、機密に触れるのでって言えばみんな諦めてくれる。フレッドがわたくしを溺愛しているのは有名だし、褒美の内容がおかしいと思う方もおられなかった。
そうそう、結局ハンス王子は傷だらけで亡命して来たわ。何も持っていないハンス王子が逃げても行くところはないと思われていたのか、なんとか逃げ出せたって聞いた。彼は、記録玉を持って民の助命を嘆願した。
それがきっかけとなり、隣国の名は地図から消えた。元々、無茶な国家運営をしていたところに飢饉が起きて、民は食べる事もままならなかった。ハンス王子の訴えを聞いた各国が民衆を支援すると、元気になった民衆は王族への憎しみを募らせ、あっさりと国は倒れた。
飢饉を救ったハンス王子を次の統治者にと望む声もあったが、彼は固辞した。責任は、自分にもあるからってね。
その為、各国で話し合いが行われ国は分割された。辺境に面している一部が友好国になり、我が国の領地も増えた。フレッドが領主になる事になったので、領地が少しだけ増えた。もっとたくさん領地を望んでも構わないと言われたが、これ以上は統治出来ないとフレッドが固辞した。
フレッドの目的は、広い領地やお金ではない。自分の手で守れるのはどこまでだろうと毎日真剣に考えて、結論を出したのだ。
以前よりも国境は安全になった。
民は国が分割される事を嫌がったが、ハンス王子が必死で民を説得したそうだ。彼が言うならと、民衆も国が分かれる事を受け入れた。行き来を自由としたので、家族が会えなくなるような事もない。
彼の行動は、勇気ある告発として伝説となっている。国際会議で必死に民を助けて欲しいと訴えた姿は人々の心を打ち、今では彼を顔だけ王子なんて呼ぶ人は居ない。王族ではなくなってしまったハンス王子だが、見た目の美しさも相まって以前より人気だ。
だが、彼は以前のように女性と遊ぶ事はなくなった。
エリザベスによると、城の研究者になって恩返しがしたいと必死で学んでおられるそうだ。フレッドが言うには、以前のようにチャラチャラとしたご様子はなく、とても素敵な好青年になっておられるそうだ。
わたくしが隠し持っていたもうひとつの記録玉は、フレッドが保管しているが、使う必要はなさそうだ。
「シャーリーが落ち着いてるし、きっと何か対策を立ててるんだろうとは思ってたけど、まさか2つも用意してたとはね」
「ハンス様が記録玉を持って来て下さったから、必要なかったけどね」
「シャーリーがこの記録玉をすぐ出せば、彼は終わりだった。なんで、彼を救おうと思ったの?」
「……わたくしに、似てたから。過去の自分を救いたかった。単なるエゴよ。しばらく待ってハンス様が亡命して来られなければ、この記録玉を王家に提出するつもりだったわ」
王太子殿下はお悩みを国王陛下達に打ち明けられ、殿下を追い詰めた貴族達は国王陛下が呼び出して釘を刺した。
そもそも、エリザベスと王太子殿下は結婚してまだ半年。お子を急かすなんて馬鹿げてる。
国王陛下から今回の件の褒美を与えると言われたわたくしは、全てフレッドにお任せした。
フレッドはハンス王子が来たらすぐに受け入れて保護する事と、わたくし達夫婦が必ず一緒に暮らせるよう魔法契約で縛る事を希望した。
即座にフレッドの希望は叶えられた。これで、わたくし達が離れる事は絶対にない。国王陛下、王妃様、王太子殿下、エリザベスの名が刻まれた契約は国中に告知された。
今回の事は公に出来ないので、戦争を回避した辺境伯夫婦への褒美として魔法契約をしたと伝えられている。あながち嘘ではないから、堂々とお話ししているわ。武勇伝を望まれた場合は、機密に触れるのでって言えばみんな諦めてくれる。フレッドがわたくしを溺愛しているのは有名だし、褒美の内容がおかしいと思う方もおられなかった。
そうそう、結局ハンス王子は傷だらけで亡命して来たわ。何も持っていないハンス王子が逃げても行くところはないと思われていたのか、なんとか逃げ出せたって聞いた。彼は、記録玉を持って民の助命を嘆願した。
それがきっかけとなり、隣国の名は地図から消えた。元々、無茶な国家運営をしていたところに飢饉が起きて、民は食べる事もままならなかった。ハンス王子の訴えを聞いた各国が民衆を支援すると、元気になった民衆は王族への憎しみを募らせ、あっさりと国は倒れた。
飢饉を救ったハンス王子を次の統治者にと望む声もあったが、彼は固辞した。責任は、自分にもあるからってね。
その為、各国で話し合いが行われ国は分割された。辺境に面している一部が友好国になり、我が国の領地も増えた。フレッドが領主になる事になったので、領地が少しだけ増えた。もっとたくさん領地を望んでも構わないと言われたが、これ以上は統治出来ないとフレッドが固辞した。
フレッドの目的は、広い領地やお金ではない。自分の手で守れるのはどこまでだろうと毎日真剣に考えて、結論を出したのだ。
以前よりも国境は安全になった。
民は国が分割される事を嫌がったが、ハンス王子が必死で民を説得したそうだ。彼が言うならと、民衆も国が分かれる事を受け入れた。行き来を自由としたので、家族が会えなくなるような事もない。
彼の行動は、勇気ある告発として伝説となっている。国際会議で必死に民を助けて欲しいと訴えた姿は人々の心を打ち、今では彼を顔だけ王子なんて呼ぶ人は居ない。王族ではなくなってしまったハンス王子だが、見た目の美しさも相まって以前より人気だ。
だが、彼は以前のように女性と遊ぶ事はなくなった。
エリザベスによると、城の研究者になって恩返しがしたいと必死で学んでおられるそうだ。フレッドが言うには、以前のようにチャラチャラとしたご様子はなく、とても素敵な好青年になっておられるそうだ。
わたくしが隠し持っていたもうひとつの記録玉は、フレッドが保管しているが、使う必要はなさそうだ。
「シャーリーが落ち着いてるし、きっと何か対策を立ててるんだろうとは思ってたけど、まさか2つも用意してたとはね」
「ハンス様が記録玉を持って来て下さったから、必要なかったけどね」
「シャーリーがこの記録玉をすぐ出せば、彼は終わりだった。なんで、彼を救おうと思ったの?」
「……わたくしに、似てたから。過去の自分を救いたかった。単なるエゴよ。しばらく待ってハンス様が亡命して来られなければ、この記録玉を王家に提出するつもりだったわ」
68
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
真実の愛がどうなろうと関係ありません。
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。
婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。
「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」
サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。
それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。
サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。
一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。
若きバラクロフ侯爵レジナルド。
「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」
フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。
「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」
互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。
その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは……
(予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)
新しい人生を貴方と
緑谷めい
恋愛
私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。
突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。
2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。
* 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。
姉の婚約者であるはずの第一王子に「お前はとても優秀だそうだから、婚約者にしてやってもいい」と言われました。
ふまさ
恋愛
「お前はとても優秀だそうだから、婚約者にしてやってもいい」
ある日の休日。家族に疎まれ、蔑まれながら育ったマイラに、第一王子であり、姉の婚約者であるはずのヘイデンがそう告げた。その隣で、姉のパメラが偉そうにふんぞりかえる。
「ぞんぶんに感謝してよ、マイラ。あたしがヘイデン殿下に口添えしたんだから!」
一方的に条件を押し付けられ、望まぬまま、第一王子の婚約者となったマイラは、それでもつかの間の安らぎを手に入れ、歓喜する。
だって。
──これ以上の幸せがあるなんて、知らなかったから。
[完結中編]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜
コマメコノカ@女性向け・児童文学・絵本
恋愛
王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。
そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。
「帰ったら、結婚しよう」と言った幼馴染みの勇者は、私ではなく王女と結婚するようです
しーしび
恋愛
「結婚しよう」
アリーチェにそう約束したアリーチェの幼馴染みで勇者のルッツ。
しかし、彼は旅の途中、激しい戦闘の中でアリーチェの記憶を失ってしまう。
それでも、アリーチェはルッツに会いたくて魔王討伐を果たした彼の帰還を祝う席に忍び込むも、そこでは彼と王女の婚約が発表されていた・・・
【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません
ゆうき
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。
そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。
婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。
どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。
実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。
それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。
これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。
☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる