ポメった幼馴染をモフる話

鑽孔さんこう

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驚きと

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「ただいま」

午後の授業が一時間で終わり、宣言通り爆速で家に帰ってきた。
息切れと大きく上下する肩をそのままに大きな歩幅で進む。
家の中は蒸し暑いながらも清爽な気に満ちている。
玄関を抜けたあたりで、頬に薄いラベンダーの香りと踏み切り音の上澄みが吹き抜けていって、そちらに顔を向ける。
居間の掃き出し窓に掛かるカーテンが少し揺れて、外の涼風をささやかに取り込んでいた。
仁が調子が悪いのを押して開けてくれたんだろう。
んでもって弁当ケースはゴミ箱にスローインか。
ちゃんと完食してんな。
感心感心。
仁は恐らく寝てっだろうから…。
様子見て、調子が悪そうなら病院に連れてこう。

「…居ねぇ?」

起こさないようにと静かに仁の部屋のドアを開けたものの、ベッドの上がもぬけの殻でつい声が出る。
追加でなんか買いに行ったのか?
いや、この部屋にクーラーが利いてた痕跡が無い。つまり部屋に滞在してないってことか。
しかも仁の性格上、窓を開けたまま買い物には行かねぇ。

「俺の部屋か」

直ぐ様俺の部屋へ移動すると、思った通り仁がクーラーのついた涼やかな部屋でタオルケットをかけて寝ている。
枕元にノートパソコンが開かれてっから、課題を出し終わって寝落ちしたな。
背負っていたリュックを床に置き、足音静かに枕元へ近付く。
ベッドに手をついてスリープになっているパソコンを閉じざまに、仁の寝顔を盗み見て堪能する。

微かな寝息をたて、少し丸まって寝る姿は精霊のように儚くて綺麗だ。
新緑の木漏れ日の中で眠ったら神隠しに遭いかねない。
絶対に守るからな。

などと決意を固めたところで、精霊の瞼がゆったりと開かれるのに気付き更に顔を近づける。
薄く膜が張った瞳が高速瞬きで俺の顔を捉える。
反射的に反対方向へ寝返りを打とうとするのを肩を抑えて妨害した。

「寝起きの高純度はキツい…」
「見るに堪えねぇか?」

笑い交じりに問うと、顔を両手で覆って首を横に振ってくれる。
そういうところが好きなんだよな。

「体調はどんな感じだ?」
「大分マシ」

言いながら仁が起き上がり足を床に下ろして座る。

「とりあえず飲んどくか」

机に置かれていたスポーツドリンクを開けて渡そうと仁を見ると、なーんか期待した目をしてる。
なんだ?飲み物に関係した動作ってなんかあったか…?
期待を裏切りたくない一心で頭を働かせると、一つの答えが弾き出された。

『…やんのか…。というか仁はどこでその知識を得たんだ?俺なんてSNSで恋愛漫画の一コマが流れてきたのを片手間に見て知ってるだけだぞ。ショート動画で一回見ただけのやつを期待通りにできるか?』

コンマ数秒でものすごい量の葛藤と言い訳をしたものの、仁のためにと腹を括る。
手に持ったペットボトルをぐっと傾け自分の口に流し込むと、赤面しながらも目を輝かせている仁へ、体を向ける。
仁の後頭部を支えながら斜め上を向けさせ、ゆっくりと唇を密着させた。
お互いにぎこちなく開いた唇から細く注がれていくのが感じられて、舌を添えて流し込んでみたりと工夫をしているのが頭の隅では馬鹿らしい。
それでも、困り眉で目ぇ閉じてンクンクと喉を鳴らす仁が愛しくて、自分の思考なんてそっちのけで貪欲に求める。
仁が上手く鼻呼吸できず「はふっ…」と唇の隙間から息継ぎをした。
つぅ…と口端から垂れてしまうのをぐっと唇を押し付けて止めれば、仁の腰が控えめに前へ動かされた後、両足がキュッと閉じられる。
それを見て左手で胸あたりをサワリと撫でてやると、体が跳ねて小さな悲鳴が上がった。
できた隙間から垂れてしまった水滴を指で拭き取ってやる。
お互いに緩く唇を貪り合うのが気持ちいい。
熱くてとろけるような唇に溺れそうになる。
流し込むものがなくなって、グレープフルーツのような後味が仁の舌を吸う度に漂った。

『マジで仁を喰ってるみてぇだ…』
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