ポメった幼馴染をモフる話

鑽孔さんこう

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仁のため、俺のため

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「んぅー…!」

一心不乱に口内を味わっていると、仁が弱々しく鳴いた。

「どうした?」
「酸素が薄くて頭クラクラする…」

唇を離して頭を開放すると仁が後ろに倒れ込む。
そして視認できない速さでポメラニアンに変身した。
まずい、気付けなかった。
病人に無理させたな。

「すまん」

散らばった服を集め、畳んでベッドの隅に置く。 
同じく横に寝そべって、手のひらを腹の上に軽くのせた。

「キャフ…」

チロリと舌が出て、前足が手招きするようにチョイチョイと動く。
気持ちよさそうだな、良かった。
胸元に抱き寄せれば服越しにフワフワとした感触が伝わってくる。
手の平で頭を優しくぽんぽんと撫でると、仁が体を伸ばして押し返してきた。
小さな足がピンと伸び、首元を無防備にさらけ出す姿が無性に本能をくすぐる。
思う存分堪能したいからバイトを休ませたいが…。
「代わりに入れる人いますか?」って送りゃ「恩の売り時だ」とばかりに数秒で3、4人が手を挙げてきやがる。
しかし、その後出勤が被った時、デートの誘いだの告白だののとっかかりにされる可能性がある。
…仕方ねぇ。
愛する彼氏のために、だな。

「仁、可愛い。綺麗だ。人でもポメでも愛らしさは変わらねえ。仁の全てが好きだ。愛してる」
「キャゥ、ゥゥッ…」
「顔隠しても尻尾が揺れてんな。目も爪も尻尾も、俺だけが愛でていいって、至福だな…」
「キャフー…」
「いい香りがする…キスしても良いか?」
「ワフ」

もふもふの額に鼻を埋めたまま問えば、嬉しそうに許可してくれる。
一撫でして毛並みを整え、耳、鼻、口、喉とくまなく唇を落としていく。
何度唇を離しても溢れる思いでまた惹き寄せられる。
ふわふわの毛並みにも、その奥の体にも、お腹を終えたら引っくり返して背中も。
興が乗って肉球、尻尾とリップ音を立て、お尻に顔を近付けたところで鼻っ面に蹴りを受けた。
仁は追加で何発か蹴りを繰り出しながら俺の包囲網を抜けると、ベッドの端まで行って犬歯を剥き出しにした。

「ヴヴゥ゙ッ…ワウッ!」
「一回だけ…」
「ゥ゙ゥゥー!」
「今は諦めるか」
「キャンキャンッ!キャゥ~ッ!」

口が裂けてももうやらないとは言えねぇ。
しかし、かなり怒らせちまったし、一回穏便に済ませるべきか…?
…尻タブに頬ずりすんのがそんなに許されねぇのかな。
すっと仁に目を向けると、再度唸られる。

「ん、もうやらねぇから。おいで」
「ゥゥゥゥ…」

『触れれば切る!』みたいな状態だな。
そうなれば。
予備動作をつけて立ち上がり、ブラッシング道具を取りに行く。
視界の端に座った跡のシーツの窪みへポテポテと歩く仁が見えた。
単純で可愛いな。

「適当に歌うか」
「!ヮㇷッ」

最近仁がおすすめしてきた、覚えたての歌を口ずさむ。
仁もちょくちょく「ワゥ~」と一緒に歌ってくれる。
歌いながら、仁を膝の上においてブラッシングをしていると、お互いに心が落ち着いてくるのが分かった。
サラフワの毛を撫でればレポートやバイトに追われていることが些事に思えてくる。

「俺は仁のおかげで楽しく人生送れてんだ」
「…ヮフ?」
「ははっ!すまん、変な事言った」

ブラシを通し続けていると、仁が前足で拒否するように押し返した。

「どうした」
「キャウ、ウゥゥ」

ブラシを持っているのとは反対の、直接撫でてていた手へぐいぐいと体を押し付けてくる。
手で撫でてほしいってことか?

気ぃ遣いすぎだぜわがままだな、ダーリン」

喉で低く笑いながら目を合わせて囁やけば、仁が耳を押さえて丸まった。
ころっとした毛玉のようになった彼氏を優しく持ち上げて、わざとリップ音を立てて頭にキスをする。
膝に下ろしてワシャワシャと撫でていれば、ポンと人型に戻った。

「彼氏がイケメンでえっちだ…」
「仁がそうさせたんだが?」
「オレが育てました…」

首筋まで赤く染めた仁が俺の膝の上から退き、「はわわわ」と言いながら服の山へ這いずっていった。
腰を砕いちまったか。悪ぃな。
服を着始めた仁からさり気なく目線をそらして、机の上にある時計を確認する。
出勤まであと1時間半ぐらいだな。
出勤準備の手伝いでもするか。
それと。

「仁、満足できたか?」

目線をそらしたままで仁の答えを待つ。
視界の端で「み゙」と停止した姿が見えたもんで、片眉を上げて継ぐ言葉を探す。

「バイトから帰ってきたらシャワー浴びてそのまま寝かせて、良いんだな?」

より分かりやすく誘導すると、ぽふんと赤面した。
やっぱり仁の横顔は綺麗だ。
まつ毛長ぇよな…。これで雑誌のモデルじゃ無ぇってことにかなり違和感を感じるが…。
本音を言えば世の中の誰にも仁のことを見せたく無ぇから、今のままでいいか。
じっと待っていると、仁の両手が二回ほどグーパーと動いた。
少し唸った後チロリと横目で俺を見てくる。

「優しく甘やかしてほしいかもなぁ…」
『原型留めなくなるまで甘やかすぞ?!良いんだな?!』

可愛い発言にぐるりと首を回して仁の顔を確認すれば、口元は照れで変に歪んでおり、目がすいっすい泳いでいる。
目線を無理矢理合わせに顔を近付けて目を追いかけると、仁が頭突きをしそうな勢いで立ち上がり俺の胸の前をするりと通って逃げ出した。
捕まえようと思えば容易いが、仁もそろそろバイトの準備がしたいだろう。
一息ついてから、バイト用の間食でも作ろうかとゆったり仁の部屋を出たところで、仁が胸元に当たってきた。
上から見えるつむじと赤くなった耳が可愛い。

「やっと一枚まで減った、からっ…」

小さく深呼吸をしている音が挟まる。

「もっとおっきいヤツ買うの、忘れないように」

胸元に箱を押し付けられている感触がする。
言わずもがなのアレである。
そーいやぁ仁が買ってきてくれた分はサイズが少し小さいんで、メーカーを変えるかって話をしたんだったな。

「ん、帰ってくるまでに買っとくな」

少し強めに抱きしめて自分の胸板に仁の顔を押し付ける。
優しく襟足を撫で上げ、仁がピクリと震えながら一呼吸したのを確認して、解放した。
頭をぽんぽんと撫でて胸元の箱を自分のポケットに突っ込む。
何歩か進んだ背後で、何かを堪える様な「むうう~…っ」という声が聞こえる。

きっとバイト中も俺の事を考え続けるだろう。
邪魔くさい前髪を片手でかき上げて、仁を『甘やかす』策略を組み上げ始めた。
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