Archaic Almanac 群雄流星群

しゅーげつ

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第二部 擾乱のパニエンスラ

37.掌中で揺れる灯火

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 双角羊が暮れに臨む頃、クロスキャンプの北門広場にバスター一行は集っていた。


 周囲はイベリスとの往来の為の馬屋が立ち並び、隊商がゾロゾロ列を成し門を潜って行く。
グロリアはリコとクロエの貸馬の手配で輪を離れた。


 「おいクロエ、本当に通行証が無くても何とかなるのか? イベリスは警備が厳重だぞ?」
 「心配しなくても大丈夫だってば。あそこは親父と行った事あるから。鍵もあるし」

 「鍵?? 何の鍵だよ」
 「内緒。そんなことよりリコ、アンタはその王子をどうやって探す訳?」

 「えーっと……わかんない。誰かに聞くしかないかなぁ」
 「王子ってくらいだし官用馬を使ってんじゃねぇか? 断角した部分に金冠されてっから、
まぁ見りゃすぐ分かるだろ。馬房に居ないようならまだ来てねぇってこった」

 「わかった、さがしてみる。えっと……バスター兄ぃ、色々ありがと。はいコレ」 
 バスターはリコから受け取ったウィッグを被って、気恥ずかしそうに頭を掻く。


 「あー……まぁ、なんだ……悪かったな、昨日は言い過ぎた。だが、あと一つだけな」

 「え? なに?」


 「リコ坊の……才能はスゲェもんがある。だが相手が人だと力を十分に発揮出来ねぇんだ。
もしそういうのを相手にしなきゃなんねぇ時は……せめて先に仲間に伝えてやれ」


 「う……うん。け、けど……本当にそれで良いのかな?」

 「どうだろうな……聖樹が何て言うかは分からんが、今はとりあえずそれしかねぇだろ? 
出来ねえもんは出来ねえ、それはそれで良い。リコ坊にはまだ先があんだからな」

 にっこり笑って大きく頷いたリコを見て、クロエが言いづらそうに小口を開く。

 「ね、ねぇ……やっぱりアンタも来てくれない? 多分危なくないからさ」
 「……いや。俺にはやらなきゃならん事があるからな。危なくないなら要らないだろ」

 「そ、それもそうね。あ、アンタはグロリアをちゃんと送ってあげなさいよ」
 「分かってるさ。あとリコ坊、もってけ。ほんのお詫びの印だ。今朝調整してもらった」
 そう言ってバスターは腰に付けていた物をリコに手渡した。


 「例の三人組の弓使いが持ってたもんだ。手首に装着出来るから弓と併用出来るはずだぜ。
毒矢しか無かったから矢は渡せんが、威力は弱いから牽制に使えるだろ」
 「あ、ありがと。袋に入れとくよ……あ、グロリアさん」


 「借りて来ました、向こうの馬房に預けてくださいね。二人とも……気を付けて」


 「分かった! ありがとう! バスター兄、グロリア姉! またね!!」

 一頭の馬に相乗りしたリコとクロエは、多くの危機を共にした兄姉に別れを告げた。


 バスターとグロリアは、二人の姿が見えなくなるまで、小さな背中を見送り続けた。




 人の歩みが夕餉の営みに変わる頃、景色の奥に石壁が見え始め、更に一刻ほど走り続ける。

 クロスキャンプからイベリスまでは荒涼とした平野が続き、暗くなり始めた景色の中でも、
往来の少ない一本道を馬は軽快に砂利を蹴り、遮る物も無く真っ直ぐ進む。


 やがて辿り着いた馬房は街の外壁が見える場所にポツンと佇み、広範囲を背高い柵が覆う。
僅かに植えられた飼葉を害獣から守ってる様子が伺えた。

 馬房の窓からうっすらと漏れる灯かりが、柵の際に繋がれていた一頭の馬を照らしている。
手綱を軽く引いたリコは緩やかに常歩する馬から少し身を出して、馬場を凝視した。

 「なに? どうしたの? 馬が気になんの?」
 「あれじゃないかなぁ、バスター兄ぃが言ってたの。ほら頭のとこ」 
 綺麗な黒毛の馬の頭に二つ小さな金具がついているのが後ろに居るクロエにも見えた。 

 「金色っていってたから、多分これがエリアスの乗って来た馬だよ」
 ふーんと首を傾げたクロエは、ほっと声を上げ、鞍から飛び降りる。

 その声に導かれたのか、馬房から大柄な男が一人、姿を見せた。
男は特に急ぐ様子も無く、手元に持つ鞍を揺らしながら近づいてくる。

 筋肉質で肩幅の広い男は、腰に手をあて背を後ろに反らしながら、馬に跨るリコではなく、
首の上に乗る頭を見て声をかけた。

 「アンタがリコかい?」
 「はい! エリアスは中にいますか?」

 「おいおい坊主……ここは馬を預ける場所だ、どう見ても宿じゃねぇよな」
 モルドと名乗った大男は、既にイベリスに向かったエリアスの伝言を口頭でリコに渡して、
隣ではクロエがせっせと荷を下して馬を丸裸にしていた。


 「ここから徒歩で行くしかないが通行証は持ってんのか? 急がにゃもうすぐ閉まるぞ?」

 ドンッ と背後から弓と矢筒、腰袋、水筒をハイ、ハイと渡したクロエはリコの手を引く。

 「持ってまーす! じゃぁ馬お願いします! 行ってきまーす!」
 早口に続けて駆け出すクロエの勢いに引かれながら、リコはよろめきつつ後を追った。



 「ど、どうしたのさ? 急に」
 無言で走り続け、馬房の明かりが届かない場所まで来ると、クロエはふぅと溜息をついた。

 「アンタね……通行証なんて持ってないでしょ? アンタの友達も忘れてるみたいだけど、
手形も持たずに街に行くとか、誰が見ても怪しいに決まってんでしょ!」
 そうだっけ? という顔をするリコを細目で訝しんで、クロエは大きく指を差す。


 「とっとといくわよ! ほら! あっち!」
 門前へと続く街道から右に外れて、明らかに何も無い石壁に向かって荒野を歩き出した。



 外堀りに突き当たり、覗き込みながらクロエが先導した道先にあったのは降り階段だった。
綺麗な水がそよそよと流れる用水路に沿った煉瓦敷きの細道に降り立ち、門側へ戻る。 

 壁側へ架かる橋を渡ると、水は壁にぽっかりと開いた薄暗い穴に向かって流れ込んでいる。
穴は鉄格子で塞いであり、鉄扉がついていた。

 辛うじて残る夕日を吸い込むような深淵の前に佇む鉄柵には、錠前がついている。


 「……どうするの? なんかおっきい鍵がかかってるけど?」
 クロエは鼻で笑って得意げにポケットに右手を忍ばせる。

 取り出した白い鍵を錠に差し込んで力を込めてクッとまわすと、鍵は音もなく砕け散った。


 「なんで君がこんなとこの鍵を持ってるの?? まさか……また」
 クロエは軋む格子扉を開き、潜りながら小声で答えた。
 「ぬ、盗んでないわよ! そんなことどうでもいいでしょ! ほら、行くわよ」


 言われるままに身をかがめて軋む扉を潜ると、僅かに射す外光が照らす細道が続いていた。
森夜とは違う湿った闇が二人を包み、異臭にリコは思わず掌で口を押さえる。

 「んーっと……あ、これこれ……っと」
 手探りで水路の壁を探るクロエは、聞き取れない程小さな声で何かを唱える。

 ボッと小さな油皿から紐が出ているだけの簡素な壁掛けランプが周囲を薄く照らした。




 「ずいぶん慣れてるね、なんで? どこにあるか知ってるの?」
 質問が続くのを遮るように『こっちよ』と言いクロエは細い苔道を急ぐ。

 リコはもう一方の手を強く握りしめて、勇気を絞り一歩足を踏み出した。


 迷うことなく分岐を辿っては、要所で灯かりを点け進み、進んでは点け、また進んだ。


 水路は入り口から徐々に低く、奥へ向かう程に深くなり、滑りやすさと悪臭が増していく。
入口には無かった手すりが床に取られそうになる足と、行き場の無い手に安心感を与えた。

 壁の所々に開いた排水口からは時折汚水が流れ落ちて、水路に跳ねて飛沫を作っている。


 「なんか臭いね……ん? なにあれ」
 天井を見上げると、所々小さな光が差し込み、街の騒めきが零れ落ち抗内にも届いていた。

 聞き耳を立てるよりリコの気を引いたのは、天井にぶら下がる……何か。 
 薄明かりに照らされるそれ、の一つが落ち――ずに、飛び去っていった。

 「なにあれ? コウモリかな? なんか普通のより随分大きいけど」
 「近寄ると危ないわよ。あれ血を吸うらしいから」

 クロエは闇の中を、気にせずズンズン歩いて行き、間隔で備え付けられている油皿を一つ、
また一つと、光の道を作り闇を塗りつぶしては、増える分岐を迷わず進む。

 「ねぇ、これ、他の道はどこに繋がってるの?」


 都市に水路がめぐらされているのであれば、少なくとも上と同じ位の広さはあるのだろう。
分岐を進み橋を渡り、角を折れ段を降る、リコですら順路を覚えるだけで精一杯だった。

 「知らない。この道しか知らないし。うろうろして迷っても知らないわよ」
 「まぁ、森に比べたら目印はあるからね。はぐれても多分入口には帰れるよ」

 「あっそう。じゃぁ、はぐれたら遠慮なく捨ててく――」
 不意に足を止めたクロエとぶつかりそうになったリコは、小さな両肩を手で受け止めた。

 左側下方に緩やかに流れる、水流が続く道の先は若干明るくなっている。
 「待って、なんか……聴こえない?」

 逸って先を見るリコとは別に、クロエが注視しているのは右に続く通路の奥の方だった。


 「そっちじゃなくて……こっち……は、確か領主館だったかな」

 ゆっくり進む少女の後ろにリコが続くと、通路の左側には山積みにされた樽と並んだ木箱、
右奥には上に登る階段があった。周囲は水路からの明かりしか無く、かなり暗い。


 闇の中で、振り向くクロエと目で合図したリコは階段の前まで来る。

 確かに人の声はするが聴こえる距離ではない。話し声にも聴こえる。 

 数段上がると更に左に折れるように階段、それをゆっくりとのぼる。


 踊り場のようになっている空間で首を振るクロエを見て、リコは足を止め、
耳を澄ませて、階段の先の扉を見つめる。


 ……どうす……だ?……の王子様は……
 ……帝国に……と一……引き渡すん……
 ……れて奴……れる……お気の毒な……
 ……あえず……は頑……て見張りだ……


 「これって……」
 そう言うとリコは少しづつ靴底を前に擦る。 


 獲物を追うときのように足音を殺して、壁に手を当てながら階段をゆっくり上がる。

 小さく、ちょっと――と、声にならない音を飲み込んだクロエが深呼吸して見守る。

 ――鉄扉の前で床と壁に手をついたまま――目を閉じて、耳に意識を集中させた。



 ……そ、ねみーな。酷使しやがってあの豚……
 ……! 誰かに聞かれたら殺されるぞ、お……
 ……質な豚野郎がこんなとこまで来るかっ……
 ……からちゃんと見てろよ。寝んじゃねぇ……


 カツカツという乾いた靴底が響き、小さな鼓動が騒めき動きが止まる。

 軋む扉を追いかけて、覆いかぶさるように重い音が続く。



 はぅぅぅっと、深く吹く二人の息を水のせせらぎが流し、人差し指を唇に当てたクロエは、
ゆっくり階下へ降り、リコも同じようにして水路まで戻った。

 「なんだろ……? あそこ――……は確か領主館の地下牢に繋がってたと思うけど」

 「多分……僕の友達が捕まってるみたい」


 「……助けようてんなら、入って衛兵から鍵を奪うくらいしか無いわよ?」
 少し考えるような素振りを見せたリコは、クルっと振り返って再び通路奥へと向かう。

 「そっか。ありがとう、やってみる」
 「ちょ、ちょ、待って。いくらなんでも今はダメよ! 騒げば上から兵士が降りてくるわ。
うーん……あと四刻もすれば動きやすくなるかもだけど……」


 「分かった。じゃぁここで待つよ」
 水路から少し離れた乾いた床に荷物と腰を下ろして、リコはクロエを見上げる。


 クロエはそんなリコを見下ろして、視線は外して、呟いた。
 「……アタシは手伝わないよ」
 「そうなの?」

 「言ったでしょ! アタシは妹を探しに来たんだから……手遅れになったら困るの!」

 「そっか、そうだね。ここまで本当に助かったよ。ありがと」


 クロエは後ろを向いて、囁くよりも更に小さく、ぽつりとこぼした。
 「……いいけど、別に……こ、これ。鍵、あげる。ゆっくり挿して軽く回すのよ」


 クロエはポケットから白鍵三本を取り出し、リコに差し出した。 



 「なにこれ?」
 答えずに強い視線を向けなおす少女は、顔を赤らめて……泣きそうに言った。

 「私の目的は港の倉庫なんだから! とりあえず……入り口は絶対に閉めないでね!」
 リコはクロエの手を両手で握って鍵を受け取ると、小さな顔の涙目を見つめる。


 「分かった。クロエも気をつけてね、また会おうね!」

 「な……き、気をつけんのはそっちでしょ! もう……じゃあね!」


 一瞬の静寂を潰すかのように足で踏みつけながら、クロエは勢いよく振り返った。


 振り払うように駆け、暗闇から水路の光へ消えて行くお下げ髪をリコは見送る。
 少女が灯して行った小さな灯りは、外気にあおられて、周囲を揺らし滲ませる。

 受け取った手の温もりも、小さな鍵もすぐに冷くなり、ポケットに押し込んだ――



 リコには、この感情を、どう言葉にすればいいのか分からなかった。
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