78 / 105
78 追撃の星条旗
しおりを挟む
一方の米艦隊は、単縦陣にて日本艦隊の追撃を行っていた。
艦隊の前衛は、アレキサンダー・R・アーリー大佐率いる第一駆逐戦隊(フェルプス、ウォーデン、モナハン、エイルウィン、モーリー)が務め、それに続くようにウィリアム・W・スミス少将率いる巡洋艦部隊、その後方にウィリス・A・リー少将直率の戦艦ワシントン、ノースカロライナが続き、後衛としてギルバート・O・フーバー大佐の第二駆逐戦隊(アンダーソン、クヴィン、モリス、ラッセル)が配置されていた。
「前衛のアーリー大佐より、距離一万七五〇〇ヤード(約一万六〇〇〇メートル)にて敵艦隊と思しき反応を探知したとのこと!」
ワシントン艦橋にその報告がもたらされたのは、日本側が米艦隊を視認するよりも一分から二分ほど前のことであった。
「敵艦隊、本艦隊に接近している模様!」
「……ジャップは、こちらを迎え撃つつもりのようだな」
報告を聞いて、リーはそう判断した。
会敵時刻は、想定よりも一時間以上早かった。
ジャップは日没時までこちらの上空に索敵機を貼り付けて自分たちの動向を把握しようとしていた。恐らくはそこから、こちらがジャップ艦隊の追撃を目論んでいると読んだのだろう。
そうでなければ、ワシントン以下の艦艇は逃げるジャップ艦隊を追うという展開になっていたはずだ。
そもそも、空母戦の後に水上艦艇で敵残存艦艇を追撃するという戦術をとったのは、ジャップの方が先であった。
インド洋での追撃戦では、ジャップ艦艇の砲撃によって空母ハーミスが沈められている。
だからこそ、ジャップはその二の舞になるまいとあえてこちらを迎え撃つ態勢を整えていたのだろう。
「良かろう、望むところだ」
砲術一筋で生きていたリーにとって、この夜戦はまさしくジャップと砲撃戦で雌雄を決するまたとない機会であった。
自軍の空母五隻が沈められ手放しで喜ぶことは出来なかったが、それでも静かな興奮と闘志が体に漲ってくるのをリーは感じていた。
ジャップの戦艦は、巡洋戦艦改装のコンゴウ・クラスが四隻。
戦艦の数だけで言えばこちらが劣勢であるが、ワシントンとノースカロライナは十六インチ砲を搭載した最新鋭戦艦である。
ノースカロライナは主砲二門が使用不能になっているものの、第一次世界大戦期の旧式艦に遅れを取るとは思っていなかった。コンゴウ・クラスの何隻かも、すでに空襲によって損傷していると判断されていたからである。
さらにこちらにはレーダーがあるのだ。
合衆国海軍は緒戦の東南アジア戦線で何度か夜戦を経験しているが、バリクパパン沖海戦など一部の例外を除き、ジャップ艦隊に敗北している。
しかし今回は合衆国海軍にとっては未だ慣れぬ夜戦といえど、十分な勝算はあるとリーは考えていた。
敵艦隊はこちらに向かって進んでいる。このまま反航戦に持ち込んでジャップ艦隊の脇をすり抜け、損傷空母の撃沈に向かう。
第一駆逐戦隊の敵艦隊探知からおよそ三分。艦隊の先頭を進む駆逐艦フェルプスが、敵艦隊との距離が一万五〇〇〇ヤード(約一万三七〇〇メートル)を切ったことを報告してきた。
未だレーダーによる探知のみで視認は出来ていなかったが、リー少将はここで先制すべきであると判断した。
「アーリー大佐およびスミス少将に射撃許可を出せ。まずは探知したジャップ艦を排除する。本艦およびノースカロライナは、星弾射撃による援護を行え」
「アイ・サー!」
リーの命令は、TBSによってただちに駆逐艦フェルプス座乗のアーリー大佐と重巡アストリア座乗のスミス少将に伝達される。
二一四五時(日本時間:一八四五時)、米艦隊はレーダーで探知した艦影に対して、一斉に射撃を開始した。
艦隊の前衛は、アレキサンダー・R・アーリー大佐率いる第一駆逐戦隊(フェルプス、ウォーデン、モナハン、エイルウィン、モーリー)が務め、それに続くようにウィリアム・W・スミス少将率いる巡洋艦部隊、その後方にウィリス・A・リー少将直率の戦艦ワシントン、ノースカロライナが続き、後衛としてギルバート・O・フーバー大佐の第二駆逐戦隊(アンダーソン、クヴィン、モリス、ラッセル)が配置されていた。
「前衛のアーリー大佐より、距離一万七五〇〇ヤード(約一万六〇〇〇メートル)にて敵艦隊と思しき反応を探知したとのこと!」
ワシントン艦橋にその報告がもたらされたのは、日本側が米艦隊を視認するよりも一分から二分ほど前のことであった。
「敵艦隊、本艦隊に接近している模様!」
「……ジャップは、こちらを迎え撃つつもりのようだな」
報告を聞いて、リーはそう判断した。
会敵時刻は、想定よりも一時間以上早かった。
ジャップは日没時までこちらの上空に索敵機を貼り付けて自分たちの動向を把握しようとしていた。恐らくはそこから、こちらがジャップ艦隊の追撃を目論んでいると読んだのだろう。
そうでなければ、ワシントン以下の艦艇は逃げるジャップ艦隊を追うという展開になっていたはずだ。
そもそも、空母戦の後に水上艦艇で敵残存艦艇を追撃するという戦術をとったのは、ジャップの方が先であった。
インド洋での追撃戦では、ジャップ艦艇の砲撃によって空母ハーミスが沈められている。
だからこそ、ジャップはその二の舞になるまいとあえてこちらを迎え撃つ態勢を整えていたのだろう。
「良かろう、望むところだ」
砲術一筋で生きていたリーにとって、この夜戦はまさしくジャップと砲撃戦で雌雄を決するまたとない機会であった。
自軍の空母五隻が沈められ手放しで喜ぶことは出来なかったが、それでも静かな興奮と闘志が体に漲ってくるのをリーは感じていた。
ジャップの戦艦は、巡洋戦艦改装のコンゴウ・クラスが四隻。
戦艦の数だけで言えばこちらが劣勢であるが、ワシントンとノースカロライナは十六インチ砲を搭載した最新鋭戦艦である。
ノースカロライナは主砲二門が使用不能になっているものの、第一次世界大戦期の旧式艦に遅れを取るとは思っていなかった。コンゴウ・クラスの何隻かも、すでに空襲によって損傷していると判断されていたからである。
さらにこちらにはレーダーがあるのだ。
合衆国海軍は緒戦の東南アジア戦線で何度か夜戦を経験しているが、バリクパパン沖海戦など一部の例外を除き、ジャップ艦隊に敗北している。
しかし今回は合衆国海軍にとっては未だ慣れぬ夜戦といえど、十分な勝算はあるとリーは考えていた。
敵艦隊はこちらに向かって進んでいる。このまま反航戦に持ち込んでジャップ艦隊の脇をすり抜け、損傷空母の撃沈に向かう。
第一駆逐戦隊の敵艦隊探知からおよそ三分。艦隊の先頭を進む駆逐艦フェルプスが、敵艦隊との距離が一万五〇〇〇ヤード(約一万三七〇〇メートル)を切ったことを報告してきた。
未だレーダーによる探知のみで視認は出来ていなかったが、リー少将はここで先制すべきであると判断した。
「アーリー大佐およびスミス少将に射撃許可を出せ。まずは探知したジャップ艦を排除する。本艦およびノースカロライナは、星弾射撃による援護を行え」
「アイ・サー!」
リーの命令は、TBSによってただちに駆逐艦フェルプス座乗のアーリー大佐と重巡アストリア座乗のスミス少将に伝達される。
二一四五時(日本時間:一八四五時)、米艦隊はレーダーで探知した艦影に対して、一斉に射撃を開始した。
7
あなたにおすすめの小説
【アラウコの叫び 】第1巻/16世紀の南米史
ヘロヘロデス
歴史・時代
【毎日07:20投稿】 1500年以降から300年に渡り繰り広げられた「アラウコ戦争」を題材にした物語です。
マプチェ族とスペイン勢力との激突だけでなく、
スペイン勢力内部での覇権争い、
そしてインカ帝国と複雑に様々な勢力が絡み合っていきます。
※ 現地の友人からの情報や様々な文献を元に史実に基づいて描かれている部分もあれば、
フィクションも混在しています。
また動画制作などを視野に入れてる為、脚本として使いやすい様に、基本は会話形式で書いています。
HPでは人物紹介や年表等、最新話を先行公開しています。
公式HP:アラウコの叫び
youtubeチャンネル名:ヘロヘロデス
insta:herohero_agency
tiktok:herohero_agency
【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記
糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。
それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。
かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。
ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。
※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。
対ソ戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。
前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。
未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!?
小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!
【アラウコの叫び 】第2巻/16世紀の南米史
ヘロヘロデス
歴史・時代
【毎日07:20投稿】 動画制作などを視野に入れてる為、脚本として使いやすい様に、基本は会話形式で書いています。
1500年以降から300年に渡り繰り広げられた「アラウコ戦争」を題材にした物語です。
マプチェ族とスペイン勢力との激突だけでなく、
スペイン勢力内部での覇権争い、
そしてインカ帝国と複雑に様々な勢力が絡み合っていきます。
※ 現地の友人からの情報や様々な文献を元に史実に基づいて描かれている部分もあれば、
フィクションも混在しています。
HPでは人物紹介や年表等、最新話を先行公開しています。
公式HP:アラウコの叫び
youtubeチャンネル名:ヘロヘロデス
insta:herohero_agency
tiktok:herohero_agency
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
対米戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
大本営から特命を受けてサイパン島に視察に訪れた柏原総一郎大尉は、絶体絶命の危機に過去に移動する。
そして21世紀からタイムリーㇷ゚して過去の世界にやって来た、柳生義正と結城薫出会う。
3人は協力して悲惨な負け方をした太平洋戦争に勝つために様々な施策を試みる。
小説家になろうで、先行配信中!
蒼穹の裏方
Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し
未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。
幻の十一代将軍・徳川家基、死せず。長谷川平蔵、田沼意知、蝦夷へ往く。
克全
歴史・時代
西欧列強に不平等条約を強要され、内乱を誘発させられ、多くの富を収奪されたのが悔しい。
幕末の仮想戦記も考えましたが、徳川家基が健在で、田沼親子が権力を維持していれば、もっと余裕を持って、開国準備ができたと思う。
北海道・樺太・千島も日本の領地のままだっただろうし、多くの金銀が国外に流出することもなかったと思う。
清国と手を組むことも出来たかもしれないし、清国がロシアに強奪された、シベリアと沿海州を日本が手に入れる事が出来たかもしれない。
色々真剣に検討して、仮想の日本史を書いてみたい。
一橋治済の陰謀で毒を盛られた徳川家基であったが、奇跡的に一命をとりとめた。だが家基も父親の十代将軍:徳川家治も誰が毒を盛ったのかは分からなかった。家基は田沼意次を疑い、家治は疑心暗鬼に陥り田沼意次以外の家臣が信じられなくなった。そして歴史は大きく動くことになる。
印旛沼開拓は成功するのか?
蝦夷開拓は成功するのか?
オロシャとは戦争になるのか?
蝦夷・千島・樺太の領有は徳川家になるのか?
それともオロシャになるのか?
西洋帆船は導入されるのか?
幕府は開国に踏み切れるのか?
アイヌとの関係はどうなるのか?
幕府を裏切り異国と手を結ぶ藩は現れるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる