スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの

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最終章 町の名はパラフ。プラハじゃないです。……どう言う事?

7-3 目覚めてゴキブリになるのは絶対に嫌です。

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 今まで起きた事を順にフランツに話した。最初に行ったのはポリの町で、ポリではノポレオンと言う魔王を退治した事。次に行ったコイロでは、王様の墓を掃除した事。何処に行った話をしても、フランツは興味深そうに目を輝かせて聞いてくれていた。

「……って言う事は。眠ったり、意識を失うと別の町に飛ばされてたって事だよな」

「ああ、そうだよ」

「それとそのハル君って人が書いた小説の世界をイスケは旅して来たって事だろ?」

「ああ、そうだよ」

「凄いよな。俺も誰かを旅させられるような、そんな話を書けたらいいのに」

 そうだった。フランツは作家だ。いや、まだ若いから作家志望か。……でも、知る限りフランツの作品は、不条理な世界で起こる事ばかりだったような。……あ、でも、考えてみれば俺も不条理な世界を旅してるんだっけか。

「そうだ。今、思い出したけど、こないだ言っていた『変身』は?」

「ああ。何か巨大なゴキブリってのを見た事がないから、細かい描写が難しくて。それに巨大ゴキブリなんて皆んなの嫌われ者だろ?」

「そうだな。俺は普通の小さなゴキブリでも嫌なのに、それが巨大だなんて、考えただけでおぞましいよ」

「そうだろ! 皆んなに嫌われるんだよ。ゴキブリに変身したってだけで」

「そりゃそうさ。ゴキブリなんてこの世から消えてしまえばいい」

 特におかしな事を言った覚えはないけど、何故かフランツが目を伏せた。

「……もし、イスケが朝目覚めてゴキブリに変身してたら?」

「おい、やめてくれよ」

 本当にやめてほしい話だ。もしハル君がそんな話を書いたら、俺はゴキブリに変身させられるのか? それは絶対ダメ、ダメ、ダメのダメーーー。フランツにも止めさせないと。って、それはダメ、ダメ、ダメのダメーーーだ。『変身』と言えば、フランツの代表作になる小説だ。その執筆の協力はしても、邪魔をする訳にはいかない。

「……おーい、帰ったぞ!」

 ツランフが帰って来たようだ。

「あ、おかえり」

「イスケちゃんに、フランツちゃん。ちゃんとい子ちゃんにしていたかなー?」

 ニヤニヤ笑うツランフにイラッとさせられる。何が良い子ちゃんだ。ちゃんちゃん、うるさいんだよ。

「それで何処に行ってたんだ?」

 フランツがツランフが手にする紙袋に目を落としている。

「ああ。紙とペンを買いに行ってたんだ。……突然、お前達が現れただろ? 何か面白い話が書けそうな気がして」

 んー。何か面倒くさくて、よく分からないや。フランツが作家なら、ツランフも作家って事か。

「……ツランフ。もしかしてお前も小説を書くのか?」

「お前って、じゃあ、フランツお前も書くのか?」

 あら。急にフランツとツランフが意気投合したじゃありませんか。仲良くなってくれるのは良い事ですけど、俺を置いてきぼりにだけはしないでください。はい。お願いしますね。

「……なぁ、ツランフ。もし朝起きたら突然、自分の姿が巨大ゴキブリになってたら、どう思う?」

 フランツの頭の中はまだ『変身』で、止まっているらしい。また巨大ゴキブリの話だ。

「あ? 巨大ゴキブリになってたらだって。そりゃ嫌に決まってるだろ。……さっきも広場に一匹出て、皆んなに石をぶつけられてたよ」

 ん? さっきも? ですか? 広場に一匹出て? ですか? ちょっとちょっと待ってください。フランツは間違いなく巨大だと言いましたよ。それにツランフだって、巨大って言い返しましたよね?

「おい、広場に巨大ゴキブリが居たのか?」

「ああ、それがどうした? あ、父さん達が帰って来た。二人にも紹介するよ」

 ツランフが部屋を出て行こうとする。

「なぁ、何で帰って来たって分かるんだ?」

「階段を上る音さ。あれは父さん達で間違いない」

 フランツの質問に答え、ツランフが部屋を出て行った。
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