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第42話 甘やかな日々
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ライオネル様からの情熱的な愛の告白と、私たちの初めての口づけ。あの夜の出来事は、まるで美しい夢のようだったけれど、それは紛れもない現実だった。私たちは、互いの愛を確かめ合い、未来を共に歩むことを誓い合ったのだ。
その日から、公爵邸の雰囲気は、どこか以前とは違う、温かくて甘やかな空気に包まれるようになった。もちろん、ライオネル様の執務は相変わらず多忙を極め、私も彼の手伝いを続けていたけれど、私たちの間には、確かな愛情と信頼感が、以前にも増して深く流れているのを感じていた。
そして何よりも、ライオネル様の私への態度が、明らかに変わったのだ。
以前の彼は、感情を表に出すことが少なく、その愛情表現もどちらかと言えば不器用で分かりにくいものだった。けれど、あの夜以来、彼は驚くほど素直に、そして積極的に、私への愛情を示してくれるようになったのだ。
例えば、朝、私が執務室へ向かうと、机の上に一輪の美しい薔薇が飾られていることがある。それは、私が庭園で特に気に入っている種類の薔薇だったりするのだ。私が以前、何気なく「この薔薇が好きだわ」と呟いたのを、彼は覚えていてくれたらしい。
また、私が少しでも体調が悪そうな素振りを見せると、彼は執務を中断してでも私の元へ駆けつけ、心配そうに私の顔を覗き込む。「無理はするな、アリアナ。君の健康が、私にとって何よりも大切なのだから」と、真剣な表情で言う彼の言葉は、私の心を温かくする。
時には、公務の合間のほんの僅かな時間を見つけては、私の部屋を訪ねてきてくれることもあった。そして、ただ私の顔を見て、少しだけ言葉を交わし、私の手を優しく握りしめてから、また慌ただしく執務に戻っていく。その短い時間でさえ、彼が私をどれほど大切に想ってくれているかが伝わってきて、私の胸は幸せでいっぱいになるのだ。
(まるで、恋する少年のようだわ……)
そんな風に思うと、少し可笑しくて、そしてどうしようもなく愛おしい気持ちになる。あの冷徹と噂されたヴァルテンベルク公爵が、私の前ではこんなにも優しい表情を見せ、不器用ながらも一生懸命に愛情を伝えようとしてくれている。そのギャップが、たまらなく魅力的だった。
私もまた、彼への愛情を素直に表現するようになっていた。彼が執務で疲れている時には、そっと温かいお茶を淹れて差し上げたり、彼が好きな歴史書の話を一緒にしたり。そんな何気ない日常の一つ一つが、私たちにとってはかけがえのない、愛おしい時間となっていた。
周囲の人々も、私たちのそんな変化を温かく見守ってくれているようだった。執事のクラウスさんは、私たち二人を見るたびに、目尻に優しい皺を寄せて微笑んでいる。侍女たちも、どこか楽しそうに私たちの世話を焼き、ゲルハルト将軍やエルンスト様でさえ、以前よりもずっと穏やかな表情で私たちに接してくれるようになった。
そして、私たちの結婚式の準備も、本格的に進み始めていた。ライオネル様は「君の望む、最高の結婚式にしよう」と言ってくれ、式の形式や招待客のリスト、そして何よりもウェディングドレスのデザインに至るまで、全て私の意見を尊重してくれた。
エスタードでの婚約時代には、自分の意見など何一つ反映されなかった。全てが決められた通りに進められ、私はただそれに従うだけだった。けれど、今は違う。私は、自分の意思で、自分の未来を選び取ることができるのだ。その喜びを、今、私は噛みしめていた。
毎日が、まるで陽だまりの中にいるように温かくて、幸せで、そしてきらきらと輝いている。こんな日々がずっと続けばいいのに、と心から願わずにはいられなかった。
もちろん、エスタードのレオンハルト殿下の影が、完全に消え去ったわけではないことは分かっている。けれど、今の私には、ライオネル様の深い愛情という、何よりも強い盾がある。だから、もう何も怖くはない。
私たちは、間もなく正式な夫婦となる。その日を心待ちにしながら、甘やかで、穏やかな愛の日々を、大切に紡いでいくのだった。
その日から、公爵邸の雰囲気は、どこか以前とは違う、温かくて甘やかな空気に包まれるようになった。もちろん、ライオネル様の執務は相変わらず多忙を極め、私も彼の手伝いを続けていたけれど、私たちの間には、確かな愛情と信頼感が、以前にも増して深く流れているのを感じていた。
そして何よりも、ライオネル様の私への態度が、明らかに変わったのだ。
以前の彼は、感情を表に出すことが少なく、その愛情表現もどちらかと言えば不器用で分かりにくいものだった。けれど、あの夜以来、彼は驚くほど素直に、そして積極的に、私への愛情を示してくれるようになったのだ。
例えば、朝、私が執務室へ向かうと、机の上に一輪の美しい薔薇が飾られていることがある。それは、私が庭園で特に気に入っている種類の薔薇だったりするのだ。私が以前、何気なく「この薔薇が好きだわ」と呟いたのを、彼は覚えていてくれたらしい。
また、私が少しでも体調が悪そうな素振りを見せると、彼は執務を中断してでも私の元へ駆けつけ、心配そうに私の顔を覗き込む。「無理はするな、アリアナ。君の健康が、私にとって何よりも大切なのだから」と、真剣な表情で言う彼の言葉は、私の心を温かくする。
時には、公務の合間のほんの僅かな時間を見つけては、私の部屋を訪ねてきてくれることもあった。そして、ただ私の顔を見て、少しだけ言葉を交わし、私の手を優しく握りしめてから、また慌ただしく執務に戻っていく。その短い時間でさえ、彼が私をどれほど大切に想ってくれているかが伝わってきて、私の胸は幸せでいっぱいになるのだ。
(まるで、恋する少年のようだわ……)
そんな風に思うと、少し可笑しくて、そしてどうしようもなく愛おしい気持ちになる。あの冷徹と噂されたヴァルテンベルク公爵が、私の前ではこんなにも優しい表情を見せ、不器用ながらも一生懸命に愛情を伝えようとしてくれている。そのギャップが、たまらなく魅力的だった。
私もまた、彼への愛情を素直に表現するようになっていた。彼が執務で疲れている時には、そっと温かいお茶を淹れて差し上げたり、彼が好きな歴史書の話を一緒にしたり。そんな何気ない日常の一つ一つが、私たちにとってはかけがえのない、愛おしい時間となっていた。
周囲の人々も、私たちのそんな変化を温かく見守ってくれているようだった。執事のクラウスさんは、私たち二人を見るたびに、目尻に優しい皺を寄せて微笑んでいる。侍女たちも、どこか楽しそうに私たちの世話を焼き、ゲルハルト将軍やエルンスト様でさえ、以前よりもずっと穏やかな表情で私たちに接してくれるようになった。
そして、私たちの結婚式の準備も、本格的に進み始めていた。ライオネル様は「君の望む、最高の結婚式にしよう」と言ってくれ、式の形式や招待客のリスト、そして何よりもウェディングドレスのデザインに至るまで、全て私の意見を尊重してくれた。
エスタードでの婚約時代には、自分の意見など何一つ反映されなかった。全てが決められた通りに進められ、私はただそれに従うだけだった。けれど、今は違う。私は、自分の意思で、自分の未来を選び取ることができるのだ。その喜びを、今、私は噛みしめていた。
毎日が、まるで陽だまりの中にいるように温かくて、幸せで、そしてきらきらと輝いている。こんな日々がずっと続けばいいのに、と心から願わずにはいられなかった。
もちろん、エスタードのレオンハルト殿下の影が、完全に消え去ったわけではないことは分かっている。けれど、今の私には、ライオネル様の深い愛情という、何よりも強い盾がある。だから、もう何も怖くはない。
私たちは、間もなく正式な夫婦となる。その日を心待ちにしながら、甘やかで、穏やかな愛の日々を、大切に紡いでいくのだった。
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