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番外編
第56話 改革の狼煙と、アリアナの遠隔指導
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私、アリアナが提示した厳しい条件を、エスタードの使節団は重い表情で本国へ持ち帰った。数日後、ガルディアにもたらされた返答は、「全ての条件を受諾する」という、レオンハルト殿下の悲壮なまでの決意を示すものだった。
その知らせを聞いた私は、安堵と共に、これから始まるであろうエスタードの苦難の道に、改めて身の引き締まる思いがした。
そして、その数日後。エスタードの王都広場で、歴史的な出来事が起こった。レオンハルト王太子殿下が、やつれ果てた姿で民衆の前に立ち、これまでの度重なる失政と、民に塗炭の苦しみを与えたことに対し、涙ながらに謝罪の言葉を述べ、そして国の再建を固く誓ったのだ。その様子は、ガルディアに派遣された密使によって、詳細に私とライオネル様のもとへ報告された。
「……彼も、ようやく覚悟を決めたようだな」
報告書を読み終えたライオネル様が、静かに呟いた。その声には、ほんの少しだけ、安堵のような響きが混じっているように感じられた。
こうして、エスタード王国の改革は、まさに崖っぷちの状況から、静かに、しかし確かな一歩を踏み出した。
ライオネル様の承認のもと、私はガルディアから、農業、経済、行政、そして医療の各分野における最高の専門家たちを選抜し、彼らを「エスタード復興支援チーム」として派遣することを決定した。彼らは皆、私の信頼する、実務経験豊かな者たちばかりだ。
私自身は、ヴァルテンベルク公爵夫人としての立場もあり、また幼い子供たちの育児もあるため、ガルディアを長期間離れることはできない。そのため、私はガルディアの公爵邸に留まり、専門家チームからの定期的な報告を受け、書簡や、新しく開発された遠距離通信用の魔道具(限定的なものだが)を通じて、彼らに具体的な指示や助言を与えるという形で、エスタードの改革を遠隔から支援することになった。
まず、私たちが最優先で取り組んだのは、深刻な食糧危機からの脱却だった。ガルディアから、改良された収穫量の多い種籾や、効率的な農具が大量にエスタードへ送られた。専門家チームは、現地の農民たちに新しい農法を指導し、荒れ果てた農地の再整備を急ピッチで進めた。
そして、驚くべきことに、あのレオンハルト殿下が、自ら泥にまみれ、農民たちと共に鍬を握っているという報告まで入ってきたのだ。かつての彼からは、到底想像もできない姿だった。彼は、言葉だけでなく、行動で国民にその覚悟を示そうとしているのかもしれない。その報告を聞いた時、私の胸には、ほんの僅かだが、彼に対する見方が変わるような、小さな変化が芽生え始めていた。
もちろん、改革は始まったばかりだ。食糧配給システムの構築、不正を働いた貴族の資産の調査と没収、公正な税制の導入準備……やるべきことは山積みで、そのどれもが困難を伴うだろう。
けれど、狼煙は上がったのだ。絶望の淵にあったエスタードに、再生への小さな炎が灯った。その炎を、大きく育てていくことができるかどうか。それは、エスタード自身と、そして、それを導こうとするレオンハルト殿下の、これからの努力にかかっている。
私は、遠いガルディアの地から、故郷の未来を案じつつ、専門家チームを通じて、的確な助言を送り続ける。それは、かつて彼に手放された私が、今度は彼に手を差し伸べるという、何とも皮肉な巡り合わせだったのかもしれない。しかし、そこに個人的な感情はもうなかった。ただ、一人の人間として、苦しむ人々を救いたい。そして、私の知恵と経験が、少しでもその役に立つのであれば、と願うばかりだった。
その知らせを聞いた私は、安堵と共に、これから始まるであろうエスタードの苦難の道に、改めて身の引き締まる思いがした。
そして、その数日後。エスタードの王都広場で、歴史的な出来事が起こった。レオンハルト王太子殿下が、やつれ果てた姿で民衆の前に立ち、これまでの度重なる失政と、民に塗炭の苦しみを与えたことに対し、涙ながらに謝罪の言葉を述べ、そして国の再建を固く誓ったのだ。その様子は、ガルディアに派遣された密使によって、詳細に私とライオネル様のもとへ報告された。
「……彼も、ようやく覚悟を決めたようだな」
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ライオネル様の承認のもと、私はガルディアから、農業、経済、行政、そして医療の各分野における最高の専門家たちを選抜し、彼らを「エスタード復興支援チーム」として派遣することを決定した。彼らは皆、私の信頼する、実務経験豊かな者たちばかりだ。
私自身は、ヴァルテンベルク公爵夫人としての立場もあり、また幼い子供たちの育児もあるため、ガルディアを長期間離れることはできない。そのため、私はガルディアの公爵邸に留まり、専門家チームからの定期的な報告を受け、書簡や、新しく開発された遠距離通信用の魔道具(限定的なものだが)を通じて、彼らに具体的な指示や助言を与えるという形で、エスタードの改革を遠隔から支援することになった。
まず、私たちが最優先で取り組んだのは、深刻な食糧危機からの脱却だった。ガルディアから、改良された収穫量の多い種籾や、効率的な農具が大量にエスタードへ送られた。専門家チームは、現地の農民たちに新しい農法を指導し、荒れ果てた農地の再整備を急ピッチで進めた。
そして、驚くべきことに、あのレオンハルト殿下が、自ら泥にまみれ、農民たちと共に鍬を握っているという報告まで入ってきたのだ。かつての彼からは、到底想像もできない姿だった。彼は、言葉だけでなく、行動で国民にその覚悟を示そうとしているのかもしれない。その報告を聞いた時、私の胸には、ほんの僅かだが、彼に対する見方が変わるような、小さな変化が芽生え始めていた。
もちろん、改革は始まったばかりだ。食糧配給システムの構築、不正を働いた貴族の資産の調査と没収、公正な税制の導入準備……やるべきことは山積みで、そのどれもが困難を伴うだろう。
けれど、狼煙は上がったのだ。絶望の淵にあったエスタードに、再生への小さな炎が灯った。その炎を、大きく育てていくことができるかどうか。それは、エスタード自身と、そして、それを導こうとするレオンハルト殿下の、これからの努力にかかっている。
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