7 / 36
1章 運命の出会い
第5話 竜化
しおりを挟む『邪竜について聞いてもいいか?』
私たちが落ち着いた頃を見計らって、火の精霊王が話しかけてくる。
「ええ、いいわよ。確か邪竜は、竜族の血を強く受け継いだ者が、深い悲しみや絶望を感じて世界を滅ぼしてしまうの」
『だが、竜族の血を強く受け継いだとしてもそう簡単に世界は滅ぼせないぞ?』
「その人はね、先祖返りだったみたいなのよね」
『ヒロインとやらはどうなるんだ?』
「上手く行けばヒロインが攻略対象達と力を合わせて倒すの。でも、失敗すれば世界が滅びるわ」
『おぉ、マジか……』
みんなの息を呑む音が聞こえた。
『邪竜になるのが誰か、分からないのか?』
「……ごめんなさい。そこまでは公開されていなかったの」
『いいや、大丈夫だ』
「あ、でも境遇は書いてあったわ」
ふと、公開されていた情報を思い出した。
「確か、邪竜の姿が黒色の鱗に金眼で、人の姿になると黒髪に金眼でエルフの特徴の耳が尖っているらしいわ。えっと……エルフの里で育ったけど、純粋なエルフじゃないからという理由で迫害されていたよ…うな……」
黒髪に金眼……?
みんなしてルドを見る……。
「それって俺だよね?」
ですよねー。
そもそもこの世界で黒髪っていう時点で珍しいし、そこにエルフの特徴の耳が尖っていて金眼というと、ルドしかいない。
「えっ、ルドって竜化することができるの?」
『気にするところはそこなの⁉︎』
「やったこともないし、できたこともないよ」
『でも、当てはまるのはルドしかいないわよね…』
『そうだな……』
……じゃあ、これからルドが絶望するような何かが起こるということ?
だったら……
「私が守るわ!ルドを絶対に傷つけさせない!」
私がルドを守って絶望させなければいい。
「………うん…」
ルドは私の言葉に返事をするものの弱々しく、膝から崩れ落ちた。
「……ルド⁉︎」
『あぁ~言っちゃったわね』
水の精霊王が苦笑しながら言う。
「どういうことかしら?」
『男が好きな女から堂々と守る宣言をされるのは、結構クるものがあるわよね。支えるとか、助けになりたいとかならまだしも…』
……全然そんなこと考えていなかったわ。
『ルードは精霊魔法が使えないの』
「……え?でもエルフの特徴を持っているわよね?」
「……ああ。エルフは基本、人間より魔法が得意な者が多いんだけど、何故か俺は一切使うことができないんだ……」
ルドが泣きそうになりながら言う。
コンプレックスになっているみたいだ。
『守って貰っちゃえば?だってこのままだとサフィーの方が強くなるよ?年々魔力が強くなっていってるし』
……風の精霊王。
今のルドにそれを言ってはいけないわ。
風の精霊王の言葉を聞き、ルドが更にうなだれてしまった。
「あら?でもゲームでは邪竜の姿で魔法を使っていたわよ?だから魔法が使えるはずなのだけど…」
「うーん、でも使えないんだよね」
ルドが邪竜ならば、どういうことなのだろうと、試しにルドの状態を見てみることにした。
精霊魔法で見てみると……。
………封印されているわ。
結構精密にされている。
決してバレないように、そしてこの封印が解かれないように。
私の魔力量が桁外れに多いから見ることができるものの、普通の人が見てもわからないわ。
一体誰がこんなことをしたのかしら?
少し探ってみましょう。
ほんの少しだけ漂っている魔力に触れ、その記憶を覗き見る。
誰がこの封印をしたのか……。
……エルフだった。
この封印をしたのは、エルフの森の者全員のようだ。
私のルドになんてことを……。
フツフツと怒りが湧き上がり、殺気が漏れ出てしまった。
『ど、ど、ど、どうしたのじゃ?』
『急にどうしたの?サフィーちゃん』
精霊王達がビクッと反応し、何があったのか聞いてくる。
「腹立たしいことに、ルドに封印が施されてたわ。エルフの森の者達全員から。本当に許せない……」
怒りで目の前が真っ赤になり、どうやって報復してやろうかと、そのことばかり考えてしまい、周りの声が聞こえなくなってしまった。
するとルドがフィアを抱きしめ、
「フィア、落ち着いて?封印のことなんかどうでもいいよ。それよりもフィアがソイツらのことばかり考えているのが気に食わない。……俺のことだけ考えていて?……俺のことで頭いっぱいにしていて?」
ルドに抱きしめられたことで少し落ち着き、深呼吸をしてから話し始める。
「だって許せなかったんですもの。私のルドに対して封印するなんて。しかも、自分達が封印したからルドが魔法を使えなかったのに、わざわざそれをネタにしてルドを冷遇していたのでしょう?考えることがクズなのよ。どうせ純潔のエルフじゃないルドが、自分達より上にいくのが許せなかっただけだわ。醜い嫉妬よ」
「ふふ」
「もう!私がこんなに怒っているのに、ルドはなんでそんなに笑っているの?」
「愛されているなぁって。……嬉しいよ。フィアが俺のために怒ってくれているのは」
ルドの瞳が、本当に愛おしいというように蕩けている。
恥ずかしくなり、両膝をついてしゃがんでいるルドへ、ギュッと抱きつく。
「ふふ、フィア可愛い」
そんなことを言うので余計に恥ずかしくなり、グリグリとルドの胸元へ頭を擦り付ける。
ルドは内心、そんなことしても余計に可愛いだけなのに…と思いつつも、フィアが落ち着くように、トントンと背中を軽く叩いてあげる。
「……ふぅ。恥ずかしいわ。封印を早く解いてしまいましょう?」
『封印って解けるの?』
「ええ。今から解いてみるわ。ルド、正座して座って?」
「わかった」
両膝をついてしゃがんでいた体勢から、正座をしてもらう。
そうしてやっと目線が同じになる。
ガシッと肩を掴み、キスをした。
「んんッ⁉︎」
ルドが驚いて目を見開いた時に口を少し開いたので、遠慮せずに舌を突っ込んだ。
「ンッ……んぅ…ン……んぁ…ぁ…はぁ」
「んぅ……んッ……んぁ…ぁ…ぁ…はぁ」
時間が経つにつれルドが私の口の中を蹂躙してくる。
気持ち良すぎて足が震えてくる。
足がプルプルしていると、ルドが最後にジュッと私の舌を吸って終わりにした。
「ンンッ⁉︎……ぁ……はぁ…はぁ…」
名残惜しそうに離れ、呼吸を落ち着ける。
ルドが顔を真っ赤にさせてこちらを見つめてきた。
「ファーストキスがいきなりディープなのって……。急にどうしたの?」
「もう少しすればわかるわ」
「……え?」
すると……。
ピカーーー!
ルドが光り輝き、姿を変える。
竜だ。
光が収束し、落ち着くと……。
『ルードが竜になったわ!』
《フィア、どういうこと?》
念話になっている。
「キスした時に私の魔力をあげたでしょう?」
《つまり?》
「運命の番の魔力で、桁外れの魔力量がないと解けない封印になっていたのよ」
《………》
反応が何もない。
もしかして……。
「私とのキスが嫌だった?」
不安になり眉尻を下げて聞いてみる。
するとルドが元の姿に戻って、力強く抱きしめてきた。
「そんなことない!とても嬉しかったんだ!ただ…俺の封印を解くためにしょうがなくキスしたのかなって思って……」
ルドが不安そうにこちらを伺いながら言う。
……運命の番相手に、しょうがなくキスするなんてことあるわけないのに。
本当に愛しい人……。
ルドが愛しすぎて、フワッと花が綻ぶような笑みを浮かべる。
「……私はしたくてキスしたのよ。役得だと思ったわ。ルドが相手なのに嫌々キスすることなんてないわ」
「……嬉しいよ。俺もフィア相手に嫌々キスすることは無いからね?」
「ええ」
二人で見つめ合い、触れるだけのキスをする。
『仲睦まじいのはいいんだが、そろそろいいか?』
……二人だけの世界に入っていたようだ。
精霊王達が顔を真っ赤にさせながら言ってきた。
『本当にルードが竜になったな』
「ええ、とっても綺麗な漆黒の鱗に、金色に輝く瞳……。漆黒に金色の瞳…竜…?…あっ」
「フィア?」
『サフィーちゃん?』
「………」
思い出してしまった……。
どうして思い出してしまったの?
悪役令嬢の……ヒロインが王太子ルートを選んだときの死に方。
それは、邪竜の生贄になること。
断罪された後に王太子の命令によって邪竜の生贄にされるのだ。
……私はどうすればいいの?
やっと出会った運命の番なのに……。
これからずっと一緒にいる約束をしたのに……。
もし強制力が働いたら?
ルドになら殺されてもいいけど、そうしたらルドが狂ってしまうわ。
私の愛しい人をそんな風にしたくない……。
パニックになり震えがおさまらず、涙が溢れて視界がボヤけてくる。過呼吸になり、苦しくなって自分で自分を抱きしめていると…。
「落ち着いて、フィア」
ルドが耳元で囁き、ギューっと強く抱きしめてくれた。それでもなかなか落ち着くことができなくて、チュッ、チュッと至る所にキスをして、頭を撫でてくれた。
ルドがおでこをコツンと当てて、右手で頬を撫でてくる。
「フィア、どうしたの?俺に教えて?」
「説明したくないから、私の記憶を覗いて」
ルドは精霊魔法が使えるようになったから、記憶を覗くことができるはず……。
自分の口からこんなこと話したくない……。
運命の番に殺されるなんて…。
ルドが目を閉じて、精霊魔法を発動する。
記憶を見たのだろう、眉間に皺を寄せている。
「何で俺のフィアがこんな目に遭うわけ?原因になるもの全て潰してこようかな」
険しい顔をしながらルドが過激なことを言う。
なんだかそれに安心してしまって、ホッと息を吐いた。
「フィアは強制力?が起こることが不安なの?」
「ええ、私たちは運命の番でしょう?私が死んでしまったらルドが狂ってしまうもの。私はルドにだったら殺されてもいいけれど、ルドが苦しい思いをするのは嫌だわ」
「ふふ。フィアはもっと自分のことを考えた方がいいよ。でも嬉しいな。フィアが俺に殺されてもいいくらい愛してくれてるんだって知れて」
ルドはその瞳に仄暗い光を宿しながらも、蕩けるような瞳で私を見つめる。
あぁ、私はこんなにもルドに愛されている。
10
あなたにおすすめの小説
【完結】地下牢同棲は、溺愛のはじまりでした〜ざまぁ後の優雅な幽閉ライフのつもりが、裏切り者が押しかけてきた〜
うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
悪役令嬢の役割を終えて、優雅な幽閉ライフの始まりだ!! と思ったら、なぜか隣の牢との間の壁が崩壊した。
その先にいたのは、悪役令嬢時代に私を裏切った男──ナザトだった。
一緒に脱獄しようと誘われるけど、やっと手に入れた投獄スローライフを手放す気はない。
断れば、ナザトは「一緒に逃げようかと思ったけど、それが嫌なら同棲だな」と言い、問答無用で幽閉先の地下牢で同棲が開始されたのだった。
全4話です。
転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜
具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、
前世の記憶を取り戻す。
前世は日本の女子学生。
家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、
息苦しい毎日を過ごしていた。
ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。
転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。
女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。
だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、
横暴さを誇るのが「普通」だった。
けれどベアトリーチェは違う。
前世で身につけた「空気を読む力」と、
本を愛する静かな心を持っていた。
そんな彼女には二人の婚約者がいる。
――父違いの、血を分けた兄たち。
彼らは溺愛どころではなく、
「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。
ベアトリーチェは戸惑いながらも、
この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。
※表紙はAI画像です
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
モブ令嬢、当て馬の恋を応援する
みるくコーヒー
恋愛
侯爵令嬢であるレアルチアは、7歳のある日母に連れられたお茶会で前世の記憶を取り戻し、この世界が概要だけ見た少女マンガの世界であることに気づく。元々、当て馬キャラが大好きな彼女の野望はその瞬間から始まった。必ずや私が当て馬な彼の恋を応援し成就させてみせます!!!と、彼女が暴走する裏側で当て馬キャラのジゼルはレアルチアを囲っていく。ただしアプローチには微塵も気づかれない。噛み合わない2人のすれ違いな恋物語。
心が読める私に一目惚れした彼の溺愛はややヤンデレ気味です。
三月べに
恋愛
古川七羽(こがわななは)は、自分のあか抜けない子どもっぽいところがコンプレックスだった。
新たに人の心を読める能力が開花してしまったが、それなりに上手く生きていたつもり。
ひょんなことから出会った竜ヶ崎数斗(りゅうがざきかずと)は、紳士的で優しいのだが、心の中で一目惚れしたと言っていて、七羽にグイグイとくる!
実は御曹司でもあるハイスペックイケメンの彼に押し負ける形で、彼の親友である田中新一(たなかしんいち)と戸田真樹(とだまき)と楽しく過ごしていく。
新一と真樹は、七羽を天使と称して、妹分として可愛がってくれて、数斗も大切にしてくれる。
しかし、起きる修羅場に、数斗の心の声はなかなか物騒。
ややヤンデレな心の声!?
それでも――――。
七羽だけに向けられるのは、いつも優しい声だった。
『俺、失恋で、死んじゃうな……』
自分とは釣り合わないとわかりきっていても、キッパリと拒めない。二の足を踏む、じれじれな恋愛模様。
傷だらけの天使だなんて呼ばれちゃう心が読める能力を密かに持つ七羽は、ややヤンデレ気味に溺愛してくる数斗の優しい愛に癒される?
【心が読める私に一目惚れした彼の溺愛はややヤンデレ気味です。】『なろうにも掲載』
ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。
ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。
ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。
竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。
*魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。
*お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。
*本編は完結しています。
番外編は不定期になります。
次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
乙女ゲームに転生したので、推しの悲恋EDを回避します〜愛され令嬢は逆ハーはお断りです!
神城葵
恋愛
気づいたら、やり込んだ乙女ゲームのサブキャラに転生していました。
体調不良を治そうとしてくれた神様の手違いだそうです。迷惑です。
でも、スチル一枚のサブキャラのまま終わりたくないので、最萌えだった神竜王を攻略させていただきます。
※ヒロインは親友に溺愛されます。GLではないですが、お嫌いな方はご注意下さい。
※完結しました。ありがとうございました!
※改題しましたが、改稿はしていません。誤字は気づいたら直します。
表紙イラストはのの様に依頼しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる