私と運命の番との物語

星屑

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1章 運命の出会い

第4話 精霊の花園で……

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突然景色が変わって驚いていると……。



『水を差すようで悪いが、こちらも話を聞かせて欲しい』



……と、火の精霊王が言った。


精霊の花園へ転移させられたようだ。



精霊は個であり全。

つまり、1人の精霊が見聞きした事は、他の精霊も知っているということ。



「突然精霊の花園に連れてきて欲しくなかったわ」

『しょうがないだろう?俺達が話しかけられないくらい、2人の世界に入っていたんだから』

『砂糖吐きそうになるくらい甘々だったぞ』

「「………」」



何も言えない。

火の精霊王だけでなく、土の精霊王まで同意してきた。


2人して顔が真っ赤になる。



『さて、サフィーちゃん。全部話してもらうわよ?』



光の精霊王が言った。というか3人だけじゃない。火、水、風、土、光、闇の6属性の精霊王達が集まっていた。



「みんないるのね」

『当たり前だろう?俺達が祝福している者の話だからな』

『誤魔化してはいかんぞ?前世のことを全て話すのじゃ』

「……前世?」



ルドが首を傾げる。

これは話すしかなさそうだ。



「……実は…」



……はい。全て話しました。話すだけでこんなに疲れるなんてね……初めてよ。

乙女ゲームについての話もしたわ。

本当に恥ずかしかった……。

何故運命のつがいに、私が前世で好んでやっていた乙女ゲームの話をしなくてはならないのかしら……。

幻滅されたり拒絶されたらどうすればいいの?

……普通に死ぬわ。



「ルド」

「どうしたの?」



私が呼び掛けると、優しく微笑んでくれた。

……よかったわ。まだ嫌われていないみたいね。

でも確認しておかないと不安だわ。



「……嫌いになった?」

「なんで?」

「だって私、悪役令嬢なのよ?嫌いになられて当然だわ…」



私はルドの反応が怖くて俯いてしまう。

嫌ってはいないだろうと思っていても、もし嫌われたら…と、やはり反応を直接見るのは怖くなってしまった。



……ルドから何も反応が返ってこない。

これは、もしかして嫌われたのだろうか。

優しいから、私を傷つけないように表情に出していなかったが、もしかして心の中では嫌っていたのだろうか。

そうだとしたら……。


だんだん立っているのが辛くなって、座り込んでしまった。涙が滲んできて、膝を抱ええて誰にも顔を見られないようにした。


……出会ったばかりなのに。

……これからお互いを知っていくつもりだったのに。

私はこれからどうすればいいのかしら。

もう悲しくて死んでしまいそう。



「……ぅ……ヒック。……ゥゥ……フゥッ……ゥ…」



考えている内に更に涙が溢れてきて、声を押し殺して泣いてしまう。


……すると、焦ったような声が聞こえてきた。



「フィア⁉︎どうしたの⁉︎」

『ルードが何も言わないからでしょう!何も返してくれないのら嫌われたと思うに決まっているじゃない!もう、ルードのせいよ!』



ルドと光の精霊王が何か言っているようだが、もう呼吸が苦しすぎて何も聞こえない。

もう、無理……。

気を失いそうで、ふらっと体が傾いた、その瞬間……。



「フィア!大丈夫⁉︎……ゆっくりと呼吸をして」

「……ヒュー……ヒュー……」



ガシッと逞しい腕が私を支え、背中を撫でてくれる。

ルドの匂いが体を包み込み、落ち着いてきた。



「……スゥー……ハァー……」

「そう、上手。そのままゆっくり呼吸をして?」



ルドが優しく声を掛けてくれる。



「……ン、ありがとう。もう大丈夫」

「……落ち着いた?」

「うん」



ルドが心底安心したという笑みを私に向ける。



「ごめんね。不安にさせたよね?フィアを嫌ってないよ。ただ少し驚いていただけなんだ。本当にごめんね。まさかフィアが前世の記憶を持っていて、中身がちゃんと大人だとは思っていなかったんだよ。これからどうやってフィアを捕まえていようか考えていたからね……」

「……へ?」



予想外のこと過ぎて、変な声が出てしまった。

気にするのはそこなの?

乙女ゲームのことについては何とも思っていないのだろうか。



「フィアはまだ幼いでしょう?これからどんどん綺麗になっていくだろうし、今でも可愛いんだ。絶対に虫が寄ってくるに決まってる。フィアが寄ってくる虫に靡いてしまったらどうしようかと考えていたんだ。俺はフィアとは結構歳の差があるでしょ?学園にも一緒に通うことはできないし、俺の仕事中はフィアと一緒にいられない。だから、事前に虫を排除することは難しいんだ。フィアは貴族だし、身分は俺と釣り合わない。権力でフィアを守ることはできないし、本当にこれからどうしようか考えていたんだ。いっそのこと、フィアを攫ってどこか静かなところで暮らそうかなって。誰にも邪魔されない場所に家を建てて、フィアが家からでないようにすれば誰にもフィアを見られなくて済むし。部屋から出さないのもいいな。あぁ、そうしよう!うーん、でもそうなるとどこがいいかな?食糧調達は大丈夫。俺は剣は扱えるから、獲物を仕留めるのは平気だと思うし。やっぱそうなるとまずは家かな……」

『ストップ、ストップ!サフィーちゃんを監禁する気⁉︎それこそ嫌われるわよ⁉︎』

「えっ、でもフィアを誰かに取られたくないし。年齢差があるんだよ?悠長に構えてられないよ」

『サフィーちゃんのことを考えて!自由がないなんて可哀想でしょう!』



ルドってヤンデレだったのね……。

不思議とルドに監禁されるのは嫌ではない。

痛いことさえされなければ平気そうだ。



「私は痛いことさえされなければ平気だけど……」

『サフィーちゃん⁉︎そんなこと言ったら本当に監禁されるわよ⁉︎』



水の精霊王が先程からルドを必死に止めようとしているが、私自身はそれほど嫌ではない。

ルドが頬を赤く染めながら、



「本当?嬉しいな。でも、フィアも色々なことがしたいでしょう?監禁は最終手段にしようかな。それまでは俺と一緒に色んなことをしようね」

「うん。楽しみ」



お互いに微笑み合い、和やかな空気が流れた。



「あ!でもフィア、何か1つお願いを聞くよ。さっきは酷いことをしてしまったからね。なんでも言って?俺の出来る限りのことはするから!」

「えっ?大丈夫だよ。誤解だってわかったんだし」

「だーめ。俺の気が済まないから。仲直りしよう?」

「じゃあ……抱きしめて欲しいな」

「……喜んで!」



そう言った途端、ぎゅーっと力強くルドが抱きしめてくれた。



「……幸せ」

「ふふっ、俺も幸せ」



心が温かくなり、幸せを噛み締めていた。



『甘々ね』

『砂糖吐きそうだ』

『ラブラブだの~』

『胸焼けしそう…』



などという声が聞こえ、2人して照れて顔が真っ赤になってしまった。


……パン、パン!



火の精霊王が手を叩いた。



『このままじゃいつまで経っても話が終わらないぞ』

「「確かに」」

『本題に戻る』



……すっかり忘れていた。



「一通り話したよね?あとは何を話せばいいの?」



何を話せばいいのか考えていると、私自身も気づいていなかったことをルドが教えてくれた。



「……ねぇ、フィア。気づいてる?口調が変わってるよ?」

「……っ⁉︎本当だ。いつの間にか前世の時の口調になってる。気づかなかった……」

『ショックを受けたからじゃないか?強いストレスを感じて、咄嗟に今世より年齢が上の、前世の人格が強く出たんだと思うぞ。絶望しかけて、心を守ろうとしたんじゃないか?つがいに嫌われたり、捨てられそうになるのは、誰でも狂ってしまいそうになるらしいからな』



火の精霊王が言った言葉に、衝撃を受ける。



「フィア、フィア。本当にごめん。それほどフィアを傷つけたんだね……。俺が誤解されるようなことをしたから……。これからはそんなことをしないようにする。だから、俺を見捨てないで?フィアがいなくなってしまったら、俺は本当に狂うから……。フィアを絶対に幸せにする。今日みたいなことは起こさないようにするから。だから……」

「ふふ、大丈夫よ。見捨てたりなんかしないわ。私の最愛の人……。私も同じくらい愛しているわ。気にしなくていいのよ。私たちは出会ったばかりなのだもの。これからも勘違いすることもあるし、早とちりすることもあると思うわ。でも、信じて?私は貴方のことを1番愛しているの。それだけは変わらないわ。これからも沢山話して、誤解しないようにしましょう?」

「ふふ、うん。ありがとう。俺も愛しているよ。これからずっと一緒にいようね。永遠に一緒に……」

「ええ、もちろんよ」



心が落ち着いたからか、今世の口調に戻った。

お互いの匂いに包まれて、安心している。

心から落ち着ける場所は、この人の腕の中だと気づいてしまった。


前世では良いことはあまりなかったが、今世では運命のつがいのおかげで幸せな人生が歩めそうだと、そんな確信めいた予感がした。



のちに、偶然とも必然とも言えるこの出会いが、乙女ゲームの展開とは全く異なった結末へ辿り着く。


偶然と偶然が重なり合い、多くの人にとって幸せな結末へと導かれて行く。


この出会いから変わる、私と運命のつがいとの物語……。






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