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1章 運命の出会い
第3話 出会い
しおりを挟む庭園を見ようと思い、ガゼボから歩いていた。
王太子とは友人になったし、少しは乙女ゲームから離れることはできたかしら?
少し変わったからといって、油断はできない。乙女ゲームのヒロインであるリーフェの行動によって変わってしまうのだから。
「はぁ。誰か私の破滅エンドを変えてくれるような運命の人はいないのかしら?」
独り言にしては大きな声で言ってしまった。
すると……。
『あ!サフィーやっと僕達に気づいた~』
『もう~、ずっと側にいるのに気づがないんだもん~』
「あら、ごめんなさい?」
今精霊達に気づいた。
私は元々精霊達と話すことができた。
そのお陰であの家にいても生きていられた。
いつも精霊達が遊んでくれたし、ずっと一緒に居てくれたから寂しくなかった。
「本当にごめんなさい」
『いいよ~。何かずっと考えているみたいだったから、聞こえなかったんでしょ~?』
『頭の中覗こうかと思ったけど、サフィーが無意識に拒絶していたから、勝手に見ちゃダメだと思って、気づくの待ってたんだ~』
「ありがとう」
『いいよ~』
『何があったか話してくれるんでしょ~?』
「ええ、頭の中を覗いてみて。説明するのは難しいから」
私はいつも精霊達に頭の中を覗いてもいいと許可しているから、精霊達は私の思っていることや記憶を覗くことができるの。
だから、精霊魔法を使う時は無詠唱でできるのよ。
これはとっても便利だけど、できる人は少ないの。
何故か?
それは精霊達がエネルギーの塊だからよ。
簡単に言えば、体がもたないのよ。
私は精霊王達から祝福を貰っているから体が強化されているのだけど、普通の人がやったら自殺行為よ。
あ、ちなみに、精霊達の姿を見たり、話したりすることができるのは、魔力量が多くないとできないのよね。
竜族はみんな魔力量が多いからできる人がほとんどらしいわ。
少しして……。
『サフィーは前世の記憶を思い出したんだね~』
「そうなのよ」
『うーん、サフィーはこれからどうしたいの~?』
「そうね……とにかく破滅エンドを回避したいわ。恋愛結婚もしたいし。どこかに私好みの人はいないのかしら?」
『じゃあ、僕達がサフィー好みの人を探してこよっか?』
「本当⁉︎お願いしていいかしら?」
『まっかせて~!』
『どんな人がいいの~?』
「黒髪で一途な爽やか系イケメン‼︎」
『りょ~かい‼︎行ってくる~!』
精霊達が探しに行って数十分後……。
庭園を眺めていると……
『サフィー!サフィーが言ってた人見つかったよ~』
「本当⁉︎」
『うん!でも死にかけてるよ~』
『死んじゃいそう~』
『早く行かないと~』
「死にかけてる⁉︎一体どういうこと……いいえ、それよりも早く助けないと!せっかく見つかった私好みの人を死なせる訳にはいかないわ!精霊達!その人の所へ案内して頂戴!」
『こっちだよ~』
自分の体の周りに風を起こし、空中に浮かぶ。
精霊達のあとを着いて行った先にあったのは、湖だった。
近くには魔法騎士団の訓練場もある。
「見つけた!」
倒れている人の近くに降りてその人を見ると、服が切り裂かれ、火傷の痕や切り傷が多く、出血を多量にしていた。
出血が多く、気絶している。
……このままでは失血死してしまうわ。
素早く治癒魔法と回復魔法を発動し、火傷を治して切り傷も塞ぎ、出血を止めていく。
傷のなかったまっさらな肌に戻していく。
落ち着いたので倒れていた人の顔を見ると、そこには私の好みドンピシャなイケメンがいた。
体は引き締まっていて、艶やかな黒髪に整った顔。そして白磁のような肌。エルフの特徴である耳も尖っている。
……瞳はどんな色をしているのかしら?
「…んッ」
目蓋が震えて目を開ける……と同時に何かが飛んでくる音がした。
その音の方を見ると鋭い刃物が見えた。
間に合わない!
そう思った時、腕を強く引っ張られ、キンッという音がした。
「……大丈夫ですか?」
助かった……。
それにしても、目を開けた瞬間に対応できるって凄いわね。
「はい。助けていただきありがとうございます」
深く頭を下げ、お礼を伝える。
本当に危なかった。危うく死んでいるところだった。
「頭を上げてください。ご無事でなによりです。さっきの刃物は私を狙ったものだったので……。それに、助けららたのは私の方ですよ。怪我を治していただき、本当にありがとうございます」
そこでお互いにしっかりと顔を見た。
ドクン……。
金色の瞳だったのね。美しいわ。
「ふふ、ありがとうございます。でも、貴女の瞳の方が美しいですよ」
と言って、サフィーの頬を愛おしそうに撫でる。微笑んだ顔もとても美しい……と見惚れた。
「……?声に出していましたか?」
「ふふっ。ええ」
その途端、私の顔は真っ赤になった。
「……恥ずかしいですわ」
そんなやり取りをしていると、この場所に着いた時から感じていた、甘い香りが強くなってきた。
爽やかでスッキリしているのに、どこまでも私を溺れさせようと包み込むような甘い香り。
まるで目の前にいる人を表しているような……。
甘い匂い?え?それってもしかして……。
「「あなたが私の運命の番?」」
2人の声が重なった。
「やっと出会えた……!私の名前はルインドレッド・リード・カイルラント。愛しい私の運命の番?貴女の名前を教えて頂けますか?」
私を力強く抱きしめながら、蕩けるような笑みを浮かべて言った。
「私の名前はサーフィリア・ルナ・アイラック。運命の番に出会えて嬉しいですわ」
「ふふっ。私も嬉しいです」
暫くお互いに蕩けるような笑みを浮かべ、出会えたことの幸福を噛み締めていた。
少し落ち着き、顔を見れるくらいまで離れた。
「カイルラント様…」
「ふふ、名前で呼んで頂けますか?」
「はい…貴方がよろしければ、1つお願いしたいのですが…」
「なんでしょう?……貴女のお願いであれば、私のできる限りの範囲で叶えますよ」
「ふふ、ありがとうございます。……愛称で…貴方だけの愛称で呼ばれたいのです……。お願いできますか……?」
身長差もあり、上目遣いでお願いしてみた。
是非とも愛称で呼ばれたいのである。
「なんと可愛らしい……!ふふ、よろしいのですか?貴女は貴族令嬢でしょう?婚約者などもいらっしゃるのでは?」
心配そうな、悲しそうな顔をしながら問いかけてくる。
思わず手を取り、両手で握り締めてしまう。
「いいえ!私には婚約者はいませんわ。貴方以外と結婚する気はありませんわ!私は貴方に愛称で呼ばれたいのです!」
「ありがとうございます。では……フィア、と。……いかがですか?」
「ええ!とても嬉しいですわ!親しい方にはサフィーと呼ばれているので」
「ふふふ。では、私のことも愛称で呼んでいただけますか?」
「よろしいのですか?では…ルド、と」
「ふふ。ありがとうございます」
愛称で呼んでもらうのがこんなに嬉しいとは思っていなかった。
もう一つお願いしてもいいだろうか……。
「もう1つ……もう1つだけお願いしてもよろしいですか?」
恐る恐る聞いてみたが、ルドは微笑んでくれた。
「ええ、いいですよ」
「えっと……敬語なしで話して欲しいですわ!」
するとルドが驚いた顔をした。
ダメだっただろうか……。
だがすぐに破顔し、満面の笑みで言ってくれた。
「もちろん、フィアがいいのであればそうしますよ。ただ、フィアも敬語なしでね?」
「ありがとう!私も敬語なしで話すわ!」
またしてもギュッと抱きしめ合い、幸せな時を過ごす。
「ルドの匂いって、爽やかでスッキリしてるのに、まるで私を取り込んで包み込むような甘い匂いなのね」
「それを言うならフィアの匂いも、清涼感があるスッキリとした感じなのに、まるで俺を誘うような匂いがするよ」
「ルドを誘う?」
「うん。とても蠱惑的な匂いだ」
「ふふ、きっとルドだけを誘っているのね」
「ふふ、俺は好きだよ?俺だけを誘っているなんて、最高だね」
「ふふ、ルドが好きならよかったわ。私もルドの匂いが好きだもの」
「ありがとう。嬉しいよ」
お互いに微笑んでいると……
突然景色が変わった。
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