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1章 運命の出会い
第2話 ガーデンパーティー
しおりを挟む翌日……。
ガーデンパーティーをする王宮へやってきた。
ガーデンパーティーの会場は、王城の横の、比較的小さい庭園で行う。その為、そこから近い入り口から入ることが許されている。
基本的に、王宮の入り口は魔法騎士団の建物側の大きな門が入り口だが、ガーデンパーティーやお茶会が庭園で行われる場合、近い入り口から入ることが許される。
王宮は広い為、移動が大変なのだ。
ガーデンパーティーをする庭園に到着すると、王太子主催というだけあって、既に多くの人が集まっていた。
淡い色のドレスを着た令嬢が多くいて、華やかでカラフルだ。
……私と同じくらいの年齢の令嬢が多いわね。
***
少しして……。
「……わぁぁ!綺麗な庭園!お父様!お義姉様!私、あちらの方に行って参りますわ!」
「えっ⁉︎あっ、リーフェ!待ちなさい!まだ挨拶が済んでいないのよ!」
「お花が私を呼んでいるのよ!」
わけの分からないことを言いながら、リーフェは花が沢山咲いている方へと行ってしまった。
……こういうことだったのね。
リーフェは挨拶すらしていなかったんだわ。だから王太子のことがわからなかったのよ。
貴族令嬢としてどうなのかしら?
この先も今の状態では、社交界に出すわけにはいかなくなるわよね?
幼いうちはなんとかなるかもしれないけれど、もうあと1、2年もすれば、幼いという言い訳を使えなくなるというのに……。
教育係は何をしているの?
私には散々厳しくしたのに、リーフェには甘いということかしら?
はぁ、殆ど同じ教育を同じ期間受けている筈なのに……。
まぁ、私の場合はマナーはお母様が教えてくださるから、その差かしら?
……できればお母様からのマナーレッスンは受けたくないのよね。
少しでも気に食わなければ……完璧でなければ、厳しい叱責が飛んでくるの。
……あのヒステリックな叫びは精神的苦痛を強いられるわ。
私のお母様ほど厳しくないにしても、これは甘すぎではないかしら。
と言うよりも、常識がなっていない気がするわ。
常識を学んでいないのか、理解していないのか……。どちらかは分からないけれど、このままではマズイわ。
お父様は……。
「……お父様?リーフェはどうするのですか?」
「……放っておけ」
「ですが、あのままでは…」
「リーフェは今のままでいいのだ」
「………ッ!」
結局何も言わないのか。
"リーフェはそのままでいいのだ”ですって?
何がそのままでいいのよ。
リーフェの行いによって家名が貶められるというのに……。先祖代々続いてきた我がアイラック家に誇りを持っていないの⁉︎
仕事だけはできる、仕事しかできないお父様は、アイラック家を潰したいのかしら?
私が嫁いでリーフェが婿養子をもらって領地を治める予定らしいけれど、リーフェには任せることはできないわ。
私は嫁ぐことになるでしょうけれど、いずれは私の子供にアイラック家を継がせましょう。2番目の子でも、継ぎたいと言う子でもいいわ。
……リーフェには任せることはできないもの。
そんなことをずっと考えていると、主催者である王太子がいらっしゃった。
いらっしゃった、というのはわかったのだが、考え事に夢中で、ろくに話を聞いていなかった。
考え中ということは周りには感じさせずに過ごしていたが……。
「サフィー、挨拶に行くぞ」
「はい」
正直行きたくはないが、行かなければならない。
内心溜め息を吐きながら、王太子の元へと行く。
「お久しぶりに御座います、王太子殿下。本日はこのようなパーティーに招待していただき、誠にありがとう御座います。こちら、私の娘のサーフィリアです。殿下の2つ歳下で御座います」
「お初にお目に掛かります。サーフィリア・ルナ・アイラックで御座います」
「あぁ、エリック・ルイ・アンダーソンだ。よろしく」
「よろしくお願いいたします」
王太子は私の好みではないが、顔が整っている。
透き通るような柔らかい金髪に、澄んだ湖のような碧色の瞳。
……あら?……こんなに王太子は儚げな印象だったかしら?まるで天使のようね。
乙女ゲームではもっと傲慢な態度が滲み出ていたような気がするわ。……俺様キャラだったもの。
今はまだ幼いから純粋なのかしら?
これから変わってしまう何かが起こるということなのかもしれないわね。
……うーん。できれば阻止したいわね。今日少しでも話せる機会があれば、王太子が今どんな状況にあるのかがわかるのだけど。
ここで仲良くなっておくのもいいし、恩を売っておくのもいいわね。
取り敢えず話さないとわからないから、機会を伺ってみましょう。
王太子から離れても他の貴族への挨拶周りがあるので、暫くは何もできない。
それがやっと今終わった。
……疲れた。ずっと笑顔でいないといけないし、気を抜くことが出来ずにずっと緊張状態であった。
さて、王太子はどこにいるのだろうと思った、その時……。
「……アイラック令嬢。あちらで少しお話をしませんか?」
「……ッ!はい、喜んで」
突然話しかけられて、驚いた。
まさか向こうから話しかけてくるとは思っていなかった。
そのまま王太子について行くと、庭園内にあるガゼボに着いた。
ガーデンパーティーが行われている場所からは距離があるので、何を話しても他の貴族には聞こえないだろう。
……ちょうどいいわ。少し王太子と話してみましょう。
少し距離を空けて隣に座り、お互いを見る。
「突然話しかけてすみません。驚かれましたよね?」
「お気になさらず。私も王太子殿下と話してみたいと思っていたので大丈夫ですわ」
丁寧に謝られたので、気にしていないことを伝える。
「理由を聞いてもよろしいですか?何故私と話したいと思われたのかを」
「……はい。率直に言うと、友達が欲しかったのです。
貴女は精霊に愛されている。
精霊に愛されている者は純粋だと聞きます。他の貴族の子息令嬢は、私に取り入ろうとするか、媚びを売るだけなのです。
所詮、私の権力が欲しいだけなのですよ。
私は利害関係のない友人が欲しい。
親にすら愛されていない私ですが……」
そう言うと、悲しそうに目を伏せた。
……なるほど。そういうことだったのね。
親にすら愛されないとか、それは拗れるわ。
私と同じなのね。
それなら、私が選ぶことは1つ……
「ふふ、そんなに落ち込まないでくださいませ。ええ、いいですわよ?友達になりましょう?」
「本当ですか⁈」
そう言った途端、パァッと王太子の顔が明るくなる。
「ええ。1つ伺ってもよろしいですか?」
「なんでしょう?」
「親に愛されていないとは?」
「あぁ。私には弟がいるのです。国王陛下、父上が愛妾に産ませた子供が。
……私と弟は半年しか誕生日が違いません。普通そうなれば、王妃様、母上が愛妾の子供を疎ましいと思う筈です。なのに、母は私を愛してくれなかった。驚くことに、母は弟を愛したのです。
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この国は、人間が治める国。勿論、多少なりとも獣人や魔族などの血が混ざっています。ですが、何故か王族は人間の血が濃くなければならないと思われています。弟は人間の血が濃かった。だから私の両親に愛された。私は一生愛されないのですよ」
王太子から語られた事実は、思っていたよりも重いものだった。
なによりも、私と境遇が似すぎている。
「……私に王家のことを話してしまわれてよかったのですか?」
「貴女とは友人になりたいし、真実を知っていて欲しいと思ったので」
「……そうですか。では、私のこともお教えいたしますわ」
王太子の話を聞くだけというのは公平でないと思ったので、私も愛されていないことを話した。
「私達は境遇が似ていますね」
「はい。私も驚いていますわ」
「良き友人となりましょう?今からは敬語はなしで」
「ふふ、わかったわ。私のことはサフィーと呼んでくださいませ。友人なので、愛称で呼び合いましょう?」
「うん。僕のことはリックと呼んで?これからよろしくね?
サフィーには遠慮せずに聞きたいこと、話したいことを言って欲しいんだ。
勿論、公式の場では、身分を重視しなければならないけど…」
「ええ、わかったわ。では1つ」
「何?」
「私、正直言って、リックの見た目が好みじゃないの。イケメンだとは思うけど。だから、間違っても婚約者にしようとかはしないでね?」
「ふふ、わかったよ。……初めて言われたな。顔が好みじゃないって」
「初めに言っておこうと思ったのよ。言いたいことは言っていいのでしょう?」
「うん、勿論だよ。改めて、これからよろしくね」
「ええ。よろしく」
思ってもみない結果だったが、友人という立場に収まった。
彼とは良い友人になれそうである。
その後もお互いのことを話し、王太子が大精霊から祝福を貰っていることがわかった。
私が精霊王から祝福を貰っていること、何の種族のハーフかということも話した。
お互いに魔力量も規格外で、私の方が圧倒的に魔力量が多いこともわかった。
「サフィーは規格外だね。国王に利用されないように気をつけなよ?僕もできるだけフォローするけど、庇いきれないこともあると思うし」
「ありがとう。私も気をつけるわ」
そうして、時々精霊経由で手紙のやりとりをしようと約束し、今日は別れた。
王太子が思っていたのと違ったのは、嬉しい誤算だった。
友人ができたのは素直に嬉しい。
……これは予感だけれど、リックとはこれからずっと縁が続く気がするわ。
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