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1章 運命の出会い
第10話 全ての原因は愚かな人間に…
しおりを挟む※魔法騎士団の説明は、世界観の方に追加してあります。
「……ご報告いたします。魔法騎士団第5部隊所属、ルインドレッド・リード・カイルラント。狂化した竜を単独討伐しました」
ルドがそう言った途端、周りが騒がしくなった。
「そんなはずない‼︎第5部隊に所属している魔力のない者が災厄と言われる程の竜を、しかも狂化した状態の竜を単独討伐だなんて…。そんな事できるはずがない‼︎」
そんな事を言って騒いでいるのは、どうやら第1部隊、第2部隊のようだ。
エルフについては、ルドのことを貶すような事を言っている者もいる。
目撃者も多数いるし、どっからどうみてもルドが倒した事が分かるのに、何を言っているのだろう。
それよりも、
「一体どこの誰が原因でこんな事が起こったのかしらね?」
私が冷たい声と目線で言うと、私の威圧にやられたのか、周りにいる人達全員が顔面蒼白で、震えている者もいる。
……そう、私は怒っている。
どうしてルドが危ない目に合うような原因をつくった人を、怒らずにいられるだろうか。
……此処には色んな人が集まっている。騒動が気になったのか、貴族達やエルフ達もいた。
「此処で死んでいる竜は、狂化してしまっていたわ。竜が狂化する理由は一つ。それは番を失うことよ。
皆さんご存知の通り竜族の番は簡単に死なないわ。死ぬとしたら、他殺や寿命くらいかしら。それも、竜の隙を狙ったものになるから、だいぶ難易度は高いけれど……。
本当に、なんで成功してしまったのかしら。こうなる事は考えられなかったの?番を無くしたら狂ってしまうのに……」
思わず涙を浮かべ、悲しくなってしまっていると、ルドが抱きしめてくれた。
「フィア、泣かないで。もういっそのこと人間みんな殺してしまおう。そうすれば何も心配する事はないよ」
「それじゃダメよ。だって人間の中に番がいる獣人がいるもの。可哀想でしょう?」
「……そうだね。じゃあどうするの?」
「悪い人だけ罰を与えればいいのよ。」
「じゃあ、見つけないとね」
そう言って、ルドが精霊術を発動しようとした。
「ちょっと待って、ルド」
「どうしたの?」
「私がやるわ。私が罰を与えたいの。だから私にやらせて?」
「そんなに言うなら……いいよ。フィアの好きなようにして?」
「ありがとう、ルド」
そう言って精霊術を発動する。
「精霊達。私が何をしようとしているか分かっているでしょう?私の精霊力を持って行きなさい。そして竜が狂化する原因になった人物を1人残らず此処に連れて来なさい」
体から少し力が抜けていく感覚がしたが、まだ平気そうだ。そこまで精霊力を使わないみたいだ。
そうして精霊達に連れてこられたのは、人間国の貴族達だった。
「それで?貴方達がこの竜の番を殺したの?なんのために?どんな理由があってそんな事をしたの?
番を殺す意味が分からないわけないでしょう⁉︎どうしてそんな事したの‼︎
……なんでそんな酷い事ができるの?こういう事態が起こるって分からなかったの?
どうしてそんな酷い事ができるの……」
涙が次から次へと流れてきて止まらない。
下を向いて他の人達に顔が見えないようにする。
思わず感傷的になってしまったわ……。
……ルドが死んでしまったらと考えたら我慢出来なかったのよ。
私達だって、この竜と同じ状況になるかもしれないもの……。
「フィア」
そんな事を取り留めもなく考えていると、ルドに呼ばれた。
「フィア、こっちを向いて?」
そう言われたので、声のする方へと体ごと向く。
「なーに?ルド」
「もう、また泣いてるよ?今度はどうしたの?心が悲しんでるよ。理由を教えて?何を考えてたの?」
ルドが眉を寄せながら心配そうに私を見るので、ルドの両手を握りながら話す。
「だってルド、私達もこんな結末を迎える可能性があるのよ?その事を考えてたら悲しくなってしまったの。他人事じゃないなって思って……」
ルドの瞳を真っ直ぐ見つめながら言うと、ルドは嬉しそうに微笑んだ。
「嬉しいよ、フィア。俺の事をそんな風に思ってくれて。まぁ、この竜みたいな結末には俺がさせないけど。
安心して?元からそんな要素は俺が消し去ってあげるから。
だから、フィアは安心して俺の側にいて?ずっとフィアが俺の側で笑ってられるように俺がするから」
そう言いながら、ルドの瞳は仄暗く、怪しい光を放っている。
そんな瞳を見ても、恐怖を覚えるどころか喜びを感じる私は、ルドにだったら何をされてもいいと思っている。
そんな甘い、砂糖を吐きそうなほどドロッドロに甘い雰囲気をぶち壊すのは、いや、ぶち壊せるのは、空気を読む事ができない精霊達しかいないだろう。
『ルード、サフィー。コイツらどうするの~?悪いことしたから罰を与えるんでしょ~?早く殺っちゃおうよ~』
ヤっちゃおうよ?今ヤっちゃおうよって言ったわよね⁉︎今のヤは完全に殺だったわ。
精霊達は純粋だから、嫌いな人には信じられないくらい残酷になるのよね……。
好き嫌いがはっきりしているというか、何というか。
好きな人と嫌いな人への接し方にだいぶ差があるのよ。
「そうだったね。フィア、コイツらどうする?どんな罰を与える?」
「そうね。鉱山で死ぬまで働いてもらうのはどう?必要最低限の睡眠に休息、そして食事。今までどれだけ自分達が恵まれていたのか分かるでしょう。強制労働が一番妥当だと思うのだけど……。ルドはどう思う?」
「いいんじゃないかな?フィアの好きにしていいんだよ?それこそもっと重い罰でもいいくらいなんだ……。それくらいの事をコイツらは起こしたんだから」
「いいのよ。肉体よりも精神的にキツイ方が辛いから。平民以下に成り下がれば、自分が高貴だなんて勘違いしている奴等は己のプライドがズタボロになって、死にたくなるでしょう?それが狙いだからいいのよ」
「ふふ、フィアもなかなか容赦ないね」
「こんな私は嫌い?」
「まさか‼︎大好きに決まってるよ‼︎もう、そんな心配しないで……。泣きそうになってたよ?」
「ごめんなさい。どうしても心配になってしまうの。私、貴方に捨てられたら生きていけないもの」
「フィア……」
「ごめんなさい、こんなこと。また後で話すわ。取り敢えず、この人達を移動させましょう?」
思わず本音が出てしまったものの、此処で話す話ではないと切り上げ、それてしまった話を元に戻す。
「絶対後で話を聞かせてね?」
「ええ、必ず話すわ」
……もう話してしまおうと思った。
いつまでもルドに私自身のことを話さないでいるのは辛いし、もう私が耐えられない。
「それでは此処にいる人間の国の貴族達を移動させるわ。精霊達、移動させてくれる?」
『分かった~。任せて~』
精霊達が移動させようとした時……。
「勝手に話を進めるでない‼︎」
人間の国の貴族達が騒ぎ始めた。
「貴様、何様のつもりだ‼︎たかが侯爵令嬢風情が何の権限を持って私達を罰しようとしている‼︎」
「は?」
ルドのドスの効いた声が聞こえたが、貴族達は聞こえていないようで、話し続けている。
「そもそも、親にさえ愛されていないお前が‼︎何を偉そうにしている‼︎一貴族のたかが小娘が我々を罰しようなどと、傲慢過ぎる‼︎そんなだから誰にも愛されないのだろう‼︎この出来損ないが‼︎お前は生まれてくるべきではなかったのだ‼︎」
「……ッ‼︎」
その言葉達が胸に深く刺さる。
【出来損ない‼︎お前なんか生まれてこなければよかったのに‼︎存在する価値すらない‼︎】
この言葉は前世で言われ続け、私の心に深い傷をつけている。
「……ぅ……ッ」
体の震えが止まらない。
体は冷え切り、指先の感覚は無くなってきている。
きっと今の私の顔は、酷く青褪めているだろう。
もうこれ以上立っていられない。
その時……。
そっと、私の体を温めるかのように優しく、でもまるで私が離れていってしまうのを引き止めるかのように、背後から力強く抱きしめられた。
その温もりだけでわかってしまう。
ルドだ。
ルドが抱きしめてくれている。
それだけで、私は生きていられる。
ルドの方へ体ごと向き、私からも抱きしめ返す。
涙が次から次へと流れて止まらない。
「ルドッ……」
「フィア、フィア。良かった…。戻ってきた……」
そう言って、私を更に強く抱きしめてくる。
……と、
「お前ら、俺のフィアをよくも悲しませてくれたなぁ。……ただで死ねると思うなよ。地獄を見せてやる」
……ルドが今までで一番怒っている。
一気に威圧を放ち、地を這うような、絶対零度の声を出す。
周囲は一気に凍りついた。
文字通りルドから冷気が放出され、地面が凍りついている。
……ルドが私のために怒ってくれるのは嬉しい。でも、今は私のことを見てほしい。
……甘えてもいいだろうか?
ルドの興味を引くため、ギュッと腕に力を入れて抱きしめる。
「ん?フィアどうしたの?」
私の思った通り、ルドは甘い声で囁き、優しい瞳で私を見つめてくる。
「ねぇ、ルド。甘えてもいい?我儘を言ってもいい?」
「もちろんだよ。いくらでも甘えてくれていいよ?どんな我儘でも、フィアの望む事なら何でも叶えるよ」
「あのね……、今は私だけを見ていて欲しいの。私だけを見て?ルドの瞳に私以外の人をうつさないで?
……ダメ?」
「………ッ!可愛すぎ、可愛すぎるでしょ⁈あぁもうそんな目で見つめて……。
ねぇ、フィアは俺をどうしたいの⁈食べちゃいたいくらい可愛い……」
「私を食べちゃうの?」
わざとそう聞くと……。
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