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2章 トラウマ
第19話 トラウマの症状 ※ルド視点
しおりを挟む※トラウマについての症状が出ますが、あくまで想像であり、過大表現しています。ご了承ください。
……5日後。
フィアがやっと目を覚ました。
毎日看病し、寝る時は一緒に寝て、体を拭いたりマッサージをしたり、服を着替えさせたりしていた。
時々、もうこのまま目を覚まさないんじゃないかと怖くなる時もあったが、今日、ようやく目を覚ましてくれた。
「……ん」
フィアの瞼が震え、サファイアのように深く輝く青色の右目と、キラキラと輝く金色の左目が開く。
「……フィア?」
「……ル…コホッ」
「フィア、大丈夫だよ。
……5日も眠っていたんだ。喉が乾いてるでしょう?まずは水をゆっくり飲もう?」
まずは水を飲ませようと、フィアの体をゆっくり起こし、横抱きにするようにして抱きかかえ、ベッドの上に座った。
……コクリ……コクリ。
「……ありがとう、ルド。……私、どうなったの?」
「俺が助けてすぐに意識を失ったんだよ。
……どこまで覚えてる?」
「……ルドが助けに来てくれたのは覚えてる。でもその後、何故か怖くて、必死にそれを振り切ろうと思って暴れてたの。そうしたらルドの声が聞こえてきて、頭を優しく撫でてくれて安心したのは覚えてるわ」
……フィアの口調が戻った。
ということは、心が少し落ち着いて来たのだろう。
前世の口調に引き摺られることが無くなってきているのは良いことだ。
「……何が怖かったとかは覚えてない?」
「……分からないわ。ただ怖くて、嫌で嫌でしょうがなかったの」
「……そっか」
……フィア自身の防衛本能で記憶から消し去っているのかもしれない。
それほど男性がトラウマになってしまっているのだろう。
しかし、男性であるルドは番のため怖がられていない。
むしろ安心できると頼られている。
番に求められて嬉しくない者はいない。
フィアに怖がられなくて良かったと、内心とても安心している。
だが、このままフィアのトラウマについて黙っていることはできない。
自覚するのは時間の問題だろうし、フィアのトラウマがどの範囲まで大丈夫でどこからダメなのか把握しておかなければ、対処することもできない。
こちらが対策を取らなければ、それで一番辛いのはフィアなのだ。
「フィアが怖いと感じたのは、男がフィアに触ったからだよ。触られたことを本能的に感じとって、フラッシュバックを起こしたんだ」
「……え?」
「攫われて、その時起こったことがトラウマになっているんだよ」
「……あ、あ、あ、あぁぁぁぁぁぁ」
その時のことを思い出してしまったのだろう。トラウマをできれば思い出させたくないが、こればかりはしょうがない。
「フィア、フィア。安心して。大丈夫だから」
フィアを力強く抱きしめて安心させる。
「できればフィアにあの時のことを思い出させたくないけど、どこまでが平気で、どこからがダメなのかを知りたいんだ。協力して貰えないかな?」
「……うん。……私のためだよね?……いいよ。協力する。でも、一つだけ条件を付けてもいい?」
「……いいよ。俺が叶えられるなら、なんでもするよ」
「……ありがとう。……あのね、それをする時に、絶対にルドに側にいて欲しいの。側にいて、すぐに抱きしめて欲しいの。ダメ?」
「……グッ……。(可愛すぎてどうにかなりそう。)もちろんいいよ。元々ずっと側にいるつもりだったし」
「本当に?でもルドにも仕事があるでしょう?私はもう目覚めたし、休めないんじゃない?」
「大丈夫だよ。フィアが眠っていた5日間で、大体後始末は終わったから。
とは言っても、俺はほとんどフィアの側でできる仕事をしていただけだから、報告書を書いたり読んだりするくらいだったけどね」
「……そうだったの。……大変だったでしょう?他国も絡んできていたし」
「魔王と連絡が取りやすかったから、そこまで大変じゃなかったよ。なんか意気投合しちゃったしね」
「……ふぅん。そう」
「フィーア?どうしたの?そんなに拗ねて」
「……いいえ?ただ、ルドが私の知らないうちに知らない人と仲良くなってるから…」
「……不安になっちゃった?」
「……うん」
フィアが俯きながら頷く。
……可愛い過ぎる。
フィアのヤキモチほど可愛いものはない。
チュッ。
思わず触れるだけのキスをしてしまった。
「フィア、安心して?きっと会ってみれば分かるけど、俺と考え方がちょっと似てて、面白いヤツなんだ。……たまにフィアとのことで揶揄ってくるけど、フィアのことを心おきなく惚気られるのは楽しい」
「……えっ?惚気るって?」
「うん。フィアは寝ていても可愛いし、ほっぺの触り心地はすべすべで気持ち良いし、たまに口元を動かしてるのもとてつもなく可愛い「ちょっとストップ!」」
フィアが顔を真っ赤にしながら止めてきた。
「えー、まだまだ言い足りないよ?」
「も、もういいわ。もう十分わかったから」
「ふふ、本当?なら良かった!」
顔を真っ赤にしているフィアを抱きしめながら、蕩けるような顔で微笑む。
***
しばらく抱き合ったあと、話しやすいようにと少し隙間をつくった。
「フィア、明日の昼間に色んな人に会って貰うので大丈夫?」
「うん、わかったわ。頑張る」
「ふふ、そんなに固くならないで。俺もずっと側にいるし」
「ありがとう、ルド」
***
次の日の昼。
「フィア、心の準備はできた?」
「ええ、ルドがいるから大丈夫よ」
「じゃあ、1人ずつ確かめていくね?どう感じるか教えて?絶対に我慢はしないでね?」
「ええ、分かったわ。ちゃんと伝える」
いきなり男性が来るのは流石に無理だと思って、まずは10歳くらいの幼女を応接室に呼ぶ。
「……失礼します」
「……どうぞ」
***
全ての確認が終わった。
「お疲れ様、フィア。怖かったでしょう?」
「……怖かったけど、ルドがすぐ安心させてくれたから大丈夫だったよ?」
「ふふっ…強がって。よく頑張ったね。いい子」
ソファでぴったりと横にくっつきながら、優しくフィアの頭を撫でて、まだ強張ってしまっている体をリラックスさせようとする。
結果。
現時点で、
フィアよりも年下の子供なら、男女問わず触られても大丈夫。
同じくらいの歳の女の子だと、ビクつくが触られてもなんとかなる。
同じくらいの歳の男の子では、過呼吸、体の震え、発汗の症状。
成人女性は、少し過呼吸の症状があり、体の震え、発汗の症状。
成人男性は、視界に入り近づいてきた途端、過呼吸、体の震え、発汗の症状があり、悲鳴を上げてしまう。
そのほか、精霊、ルドの父と母はまったく平気であった。
だんだんと落ち着いてきたのか、フィアの体から力が抜けてきて、ルドに寄り掛かり、頭をルドの肩にのせる。
「……落ち着いた?」
「……うん。ありがとう、ルド」
「いいよ。強がっちゃうフィアも好きだから」
「もうっ!揶揄わないで」
「ふふ、それだけ信頼されてると思って嬉しいよ」
「………」
プイッとフィアが顔を横に向けてしまった。
「……拗ねた?」
「………」
「フィーア」
「………」
いくら呼んでもこっちを向いてくれない。
「ごめんって。……許して?フィア、こっち向いて?……お願い」
「……ん」
やっとフィアがこっちを向いてくれた。
頬が少し赤い。
「揶揄ってごめんね?機嫌なおして?」
「………いいわよ。もう」
フィアが伏し目がちになりながら、拗ねたように言う。
「仲直りしよう?……なんでもするから許して?」
「……何をしてくれるの?」
「……フィアが望むことならなんでも」
「……じゃあ、今夜、私を抱きしめながら眠って」
……随分可愛いこと言うなぁ。
「そんなことならいくらでもするよ」
「ふふ、本当?嬉しい」
そう言ってフィアは蕩けるような笑顔をルドに見せた。
しばらく抱き合っていると……。
「……あ、ルド、仕事は?」
突然フィアが聞いてきた。
……そういえば5日間の間で色々決まったんだっけなぁ。
「ああ、そのことなんだけどね。狂化した竜を倒した時に少佐になったでしょ?ドラゴンスレイヤーをこのまま第5部隊に配属させたままにはできないからっていうので、フィアが眠ってた5日間の間に、特殊部隊っていうのができたんだ」
「特殊部隊?」
「うん。簡潔にいうと、第1部隊から第5部隊の間で対処できない事案を解決する部隊かな。まだ細かいところは決まりきってないんだけど、大体はそんな感じ。この事件も特殊部隊が担当してるよ」
「そうなんだ。他国とか絡んでくると、特殊部隊の担当になるってことなの?」
「うーん。まぁ、今回の場合は直接俺に関係してきたって部分も多いけど、何よりもバエルと俺が一番連絡が取りやすくて早いし、早期解決ができるからっていうのが一番の理由かな」
「そっか。特殊部隊はどんな人がいるの?」
「それは今度紹介するよ。だから今は俺のことに集中して?この話はもう終わり」
ギュッとフィアを抱きしめる力を強くする。
「ふふ、急に嫉妬しちゃったの?」
「……うん。だってフィアに俺以外のこと考えて欲しくなくて」
「……大好きよ、ルド」
「俺も愛してるよ」
そしてまたしばらくの間抱き合った。
ーーーーーーー
・次の話はいつもより長めになっています。
分けることができませんでした……。
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