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3章 転生者
第31話 魂 *ルド視点
しおりを挟む……パリンッ。
ハッ。
「……は?嘘だろ?何があった⁉︎」
ゴチャゴチャとうるさい女が何かを言っているが、そんなものどうでもいい。
今まで、大事に大事に大切に、少しずつ俺の魔力をフィアに渡して回復してきたのに。
それが…それが、どうして…フィアの魂が傷ついたんだ!
……コイツか?
この女のせいなのか⁉︎
この女は殺してしまいたいが、今はそんな時間はない。
精霊たちにお願いして、精霊界の牢屋に入れておいてもらう。
転移してフィアのいる場所へと瞬間的に移動する。
するとそこには、精霊王たちが集まっていた。
「何があった⁉︎」
『ルード、落ち着け。サフィーはルードと女が一緒にいて、そのショックと衝撃で悪い方へと考えすぎて、魂が傷ついた。
ルードが女のことを好きになると思ってしまったみたいだ。
魂の一部分がかけてしまっている。
これは回復しないと消滅してしまうぞ』
「……は⁉︎なんでそんな勘違いを……あぁ、強制力だとでも思ったのか。
……ヒロインなんて女、さっさと消してしまえばよかった」
「カイルラント侯爵、今はそんなことよりも、サフィーの方が優先よ。
魂を回復するなんて、どうすればいいのかしら?」
パリンッ。と音がしたと同時にフィアは倒れてしまった。
フィアが倒れてしまった現場にいたメンバーは、気が気でないようで、非常に心配している。
「ルード、もし医者が必要なら言って?王宮医師を呼び出すから」
「……メラルダ嬢、リック、ごめん、ありがとう。でも、大丈夫。フィアはなんとかする」
『ええ、そうね。方法は一つしかないわ』
魂が欠けたなんて、いったいどうすればいいのか。
周囲が途方に暮れている中、精霊王たち、ルドは検討がついているようで、力強い眼差しでアイコンタクトを取り合っていた。
「これから、早くて2、3年の間。長くて10年ほどかな。
……その間、俺たちは精霊界に籠る」
「「「「「え?」」」」」
どういうことだと検討がついていない、その場にいた者達が思う。
「ルード?精霊界って長時間いて平気なの?
いや、そもそも行くことはできるの?」
「あぁ。俺達は行くことができる。
精霊の花園に家があるしな。
普通、精霊以外が長時間精霊界にいるのは良くないが、俺は半分精霊みたいなものだし、俺の番であるフィアも大丈夫だ。
一応、2、3年で戻る予定だ。
……結婚式には間に合わせたいし。
だが、フィアが望めばもっと早く帰ってくる。精霊界とこちらの世界では流れる時間が違うし、調節が可能だから、戻ってくる時間を決めたら連絡する。それまでは頼んだ」
「分かった。特別部隊はしばらくは3人で活動することにしよう。サフィーの親には上手く言っておくよ。あとは…サフィーの妹の処遇はどうする?監視付きで泳がせておくのも手だけど」
「後で転移させておくから、監視付きで泳がせておいてくれ」
「分かった。
2人が精霊界に籠る間は連絡が繋がらないっていう認識でいいのかな?」
「そうだな。基本的には繋がらない。
だが、こちらから何かあったら連絡するつもりではある」
「うん。それじゃあ、気をつけて行っておいで?」
「あぁ、実家に帰るようなものだから、そこまで心配しないでくれ。
フィアは必ずどうにかするから」
そう言って精霊の花園へ転移する。
この場にいる者達へ説明している間にも、フィアの魂に亀裂が入っている。
急がなければ。
精霊の花園へ転移すると、そこにはルドの父と母がいた。
『ルイン、サフィーちゃんは?』
「大分ヤバイかもしれない」
『急がないとだな』
「うん」
『このまま転移するぞ』
ほとんど精霊たちしかいないその世界は、自然で溢れていた。
精霊の花園は、一面花畑のようになっていて、一部に森が広がっている。
ちなみに、その森の中にルドとフィアの家が建っている。
精霊界は精霊の花園に比べ、花畑の範囲は狭い。
その分森が広がり、滝や山がある。
少数だが竜族もいるので、洞窟や岩山、大きな湖や川もある。
何故竜族がいるかというと、比較的、精霊の運命の番が竜族であることが多いからだ。
もちろん違う種族が番の精霊もいる。
だが、長い時を生きる精霊の番は、魔力量の多い、竜族の場合が多いのだ。
そして、精霊と番になった者は、精霊界にいても特に影響は受けなくなる。
番契約をした時に、体が作り替えられるからだ。
寿命を同じにするために作り替えると言っても過言ではない。
そのため、自然と体を作り替えるのに耐えられる者が運命の番に選ばれている。
ルドたちは花畑に転移し、その先にある森へと向かって行く。
森の中に入ると少し薄暗くなったが、少し歩いて行くと、湖が見えてきた。
湖に木漏れ日がかかっていてキラキラと輝き、どこか神聖な、澄んだ空気が辺りを漂っていた。
湖の近くの草むらに一輪の大きな花が咲く。
その花は透けているように見えるが、木漏れ日に反射し、七色にも見える。
人2人分の大きさのある花の上に、フィアをそっと優しく乗せる。
その隣に自らも横たわり、フィアを優しく抱き寄せる。
『ルイン、大丈夫か?』
「うん、問題ないよ。父さん」
『優しくゆっくりよ?サフィーちゃんのペースに合わせるの』
「うん。わかったよ。母さん」
『無事に2人揃って出てくるのを待っているぞ』
『完璧に治してきなさい。今後、サフィーちゃんが悲しまずに済むように』
「うん。綺麗に治してくる」
そう言って花びらで2人を包み、ルドの魔力でいっぱいにする。
魔力で花弁の中を満たすと、花が浮かび上がり、湖にトプンッと沈んだ。
外の世界とは完全に隔離され、外から干渉されることはない。
真実、2人だけの世界になった。
フィアは、いつ目覚めるだろうか……?
「フィア、俺はいつまでも待つから、ゆっくり治して……?
……綺麗に治そうね。過去の事なんて思い出さないくらい幸せにするから…」
その言葉を最後に、2人はしばらく眠りについた……。
***
*ルドの父視点
ルドとフィアがちょうど眠りについた頃……。
「……はぁ。眠りについたか。まさかこんなに悪化するとは思っていなかったな…」
「そうね…。サフィーちゃんは大丈夫かしらね」
「そこは大丈夫だろう。運命の番だからな。
ただ…何年かかるか……。当初より回復するために必要な期間は伸びるだろう?
大体…100年から300年といったところか。まぁ、精霊界の時間はあって無いようなものだからな。
ただ…時間を変えるのも限度があるからな。100年を1年にすることはできるが、それ以上の年数を短くすることはできない。
出来て、100年を1年にだな。
300年以上かかると、2人の結婚式に間に合わない可能性が高い。
頑張って300年で戻ってこれればいいのだが…」
「信じましょう?魂を修復するのは時間がかかりますわ。本来できないことを、運命の番だからできるかもしれない……。
本来は神がするべきこと。
神の間違い、失敗から彼女の過酷な生が始まっていますわ。それを治すというのは時間がかかることでしょう。
治った暁には、2人が今まで以上の幸せを掴めることでしょう。
私たちはそれを見守ることしかできませんわ。
まぁ、多少は協力しますが……。
ふふ、そんなに心配なさらないで?
きっと2人の愛の力で解決しますわ」
湖に沈んだ2人がいつ出てくるのかはわからない。
無事に出てきてくれることを祈り、見守ることしかできない……。
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