私と運命の番との物語

星屑

文字の大きさ
32 / 36
3章 転生者

第30話 ……パリンッ。

しおりを挟む




嫌というほどルドの気持ちを理解させられ、ヒロインに対する漠然とした不安が薄れた。



そんな日から1週間ほどして……。


今日は学園の生徒が魔法騎士団に見学に来る日だ。

そして共に、ヒロインの出会いイベントでもある。

だが、私はいまいちヒロインが誰と出会うイベントなのかわかっていない。

生徒達は団体行動をするらしいが、エスティとリックは抜け出して私達がいる方に来るらしい。

そんな自由行動をしていいのか?と思ったが、エスティ曰く、途中から行きたい部隊の方に行っていいので、行きたい部隊ごとに分かれて団体行動するらしい。

特別部隊は一般にはあまり知られていなくて、希望する人がいなかった為、2人で行動することになったらしい。

エスティとリックは先生からそんな部隊があるのかと聞かれたらしいが、王太子であるリックが言うのだから、ということで信じてもらえたらしい。

……それは、側から見たら2人は婚約する予定で、2人で行動したいからそんなことを言い出したと思われてしまうのではないだろうか。


と言ったところ、全然好みじゃないから無理だと言っていた。

エスティ、本人がいる前でそれは酷くないだろうか。

まぁ、リックは爆笑していたからいいが。

サフィーと同じこと言ってるって笑ってたな。

確かに言った覚えはあるが、笑い過ぎじゃないだろうか。



そんなことを思い出していると、各部隊に分かれる時間なったようで、エスティとリックがやって来た。

この1週間、エスティから乙女ゲームのことを聞く時間がなくて、ヒロインと誰が出会うイベントなのか分かっていない。



「エスティ!今日のイベントってヒロインは誰と出会うの?」

「サフィー、ごめんなさい。さっき思い出したのだけど、出会いイベントはもう既に全て終わっていたの。今日のイベントは仲を深めるためのイベントよ」

「そうなの?誰と仲を深めるのか覚えてる?」

「確か…魔法騎士見習いかしら?実際に騎士と剣の打ち合いをして、カッコイイところを見せるっていうシチュエーションだった気がするわ」

「そう……ならこちらの方には来ないかしら?」

「絶対とは言い切れないわよ?」

「そうよね……遭遇しないことを祈るわ」



騎士と打ち合いをするなら訓練場の方に行くだろうし、攻略対象がそっちに行けば、ヒロインも同じ場所に行くはず……。



と思っていたが、予想外のことが起こってしまった……。


魔法騎士団の建物の、訓練場とは真逆の位置に、木が生えて所々に休憩するためのベンチが置かれている林がある。

普段そこは、昼食を食べる人がいたり、魔法騎士団で働く者のちょっとした気分転換に使われている。

その場所は特別部隊の執務室からよく見えた。


何故その話をしているのかというと、ルドがそこにいるからだ。

さらにヒロインであるリーフェもそこにいた。


何故…?

なんで…2人が一緒にいるの……?




お昼前になり……。

ルドは訓練があると言って特殊部隊の執務室から出たが、執務室に戻るにあたり、出来るだけリーフェに会わないようにと遠回りして帰って来ようとしたが、その努力も無駄に終わってしまったようだ。


だが、フィアはリーフェとルドが一緒にいるということに動揺し過ぎて、ルドが避けようとしていたが避けられなかったということに気づくことができない。

その動揺と衝撃、嫉妬で曇りきった目では、その場面が、まるで隠れて密会しているようにしか見えない。

また、つがいであるルドが心底リーフェを避けたがっていた、鬱陶しいと感じていることが、ありありとフィアに伝わっているはずなのに、その場面を見てしまった衝撃が強すぎて、他のことを考えることができない。


ルドが…ルドがリーフェのことを好きになってしまった?

ヒロインだから?

強制力……?

どうして……どうして……ッ?




ミシミシミシッ。




思い込みとは、時に残酷である。

一度考えたことは消えてくれない。

その無限ループに嵌まってしまったフィアは、ただでさえ前世で傷ついていた魂に、大きな亀裂をいれてしまう。



……まだ転生して13年。


本来であれば、その世界の魂は同じ世界で転生し続ける。

そうすると、たとえ前世の記憶を持っていようとも、転生した時点で魂がこの世界に馴染んでいる。

だが、手違いにより別の世界へと転生してしまったフィアは、魂自体に数多くの傷を抱えていた。

その影響か、魂がこの世界に馴染むのに時間がかかっていた。


前世の記憶を持つ者は少ない。

だが、いないわけではない。

同じ世界で生きてきた記憶を持つ者は、ごく少数だが、いるにはいる。

だが、転生者の、異世界の記憶がある者はいないに等しい。

なぜなら、魂は基本、同じ世界で転生し続けるからだ。



手違いで転生した魂は、違う世界で転生した分だけ魂に傷を受ける。

原因としては、その世界の魂たちに受けいられないため、過酷な環境で生きる可能性が高いからだ。

転生するごとに傷を受けた魂は、回復するのにも時間がかかる。

分かっているだけで、エスティは3回、フィアは10回ほど違う世界で転生し続けていた。

エスティはこの世界に転生し、生活するだけで、ある程度は回復し、魂がこの世界に馴染んだが、フィアは傷が多過ぎたため、回復が遅い。

運命のつがいに出会えたため、普通よりは回復が早いが、それでも魂が馴染むにはいたっていない。


ルドは知っていて、フィアには伝えていなかった。

フィアの心、魂に、思い出すことで傷を深くしないために……。





……パリンッ。




ルドが愛してくれなくなったら…私は……。


今度こそ……消滅してしまう。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】地下牢同棲は、溺愛のはじまりでした〜ざまぁ後の優雅な幽閉ライフのつもりが、裏切り者が押しかけてきた〜

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
悪役令嬢の役割を終えて、優雅な幽閉ライフの始まりだ!! と思ったら、なぜか隣の牢との間の壁が崩壊した。 その先にいたのは、悪役令嬢時代に私を裏切った男──ナザトだった。 一緒に脱獄しようと誘われるけど、やっと手に入れた投獄スローライフを手放す気はない。 断れば、ナザトは「一緒に逃げようかと思ったけど、それが嫌なら同棲だな」と言い、問答無用で幽閉先の地下牢で同棲が開始されたのだった。 全4話です。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。 ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。 ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。 竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。 *魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。 *お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。 *本編は完結しています。  番外編は不定期になります。  次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

モブ令嬢、当て馬の恋を応援する

みるくコーヒー
恋愛
侯爵令嬢であるレアルチアは、7歳のある日母に連れられたお茶会で前世の記憶を取り戻し、この世界が概要だけ見た少女マンガの世界であることに気づく。元々、当て馬キャラが大好きな彼女の野望はその瞬間から始まった。必ずや私が当て馬な彼の恋を応援し成就させてみせます!!!と、彼女が暴走する裏側で当て馬キャラのジゼルはレアルチアを囲っていく。ただしアプローチには微塵も気づかれない。噛み合わない2人のすれ違いな恋物語。

悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。 女神『はい、あなた、転生ね』 雪『へっ?』 これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。 雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』 無事に完結しました! 続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。 よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。 思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。 何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

処理中です...