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3章 転生者
第29話 もう、嫌というほどわかったわ…
しおりを挟む2週間ほどして……。
3人は王太子であるリックの執務室に呼び出されていた。
「ルードは昨日会ったばかりだけど、サフィーは久しぶりだね。メラルダ公爵令嬢は、実質はじめましてだよね。
シンフォル国王太子、エリック・ルイ・アンダーソンだよ。パーティーで見かけることはあったけど、挨拶は初めてだよね。これからよろしくね」
「はい。エスティアナ・ティナ・メラルダですわ。どうぞよろしくお願いいたします」
「うん、よろしくね。
堅苦しいのはここまでにして、僕のことはリックと呼んでね。
2人の友人なら僕とも友人になって欲しい。
規格外の2人だからね…。
常識を持った人が側にいてくれれば、精神的な安定を持てるかもしれないし、色々協力してもらえるかもしれないし」
「ふふ、大変そうですわね」
「あはは…。今回が初めてだけど、どこからその情報を得たの?って聞いたら精霊たちからだって言うし。調査する規模も、芋づる式にドンドン出てくるから広がっていって大変なんだよ。
友人っていうことで頼ってくれたのはとても嬉しいんだけど、正直毎日大変だよ。でも、これで膿を出せると思ったら気合が入るよね」
「申し訳ありませんわ。私の家の問題ですのに……」
「そこは気にしなくていいよ。メラルダ嬢の叔父に関しては、家の問題として解決する範囲を超えてしまっているからね。
それに、裏にいた黒幕も徐々にだけどわかってきたし、証拠も集まってきた。この調子で行けば黒幕の貴族も捕まえることができるよ」
「もうそこまで辿り着いたのか?予想より早いな」
「ふふっ。ルードの手伝いで精霊たちの協力が得られるからね。通常だったらもっと時間が掛かっていたと思うけど、精霊たちのおかげで情報はドンドン集まってくるからね。助かっているよ」
「ふふ。役に立ったなら良かった。
今回は結構無理を言ったと自覚しているから、協力は惜しまない気でいたんだ。
なるべく早めにフィアの不安を取り除きたいと思っている」
「やっぱりルードの基準はサフィーなんだね。
この件をなるべく早く解決しろって言うから、なんでそんなに急いでいるのか不思議だったけど、今分かったよ。
サフィーの友人のことでサフィーが不安になって、そのことばかり考えているのが不満だったんだろう?
クスクス。相変わらずの独占欲だな。常に自分のことを考えて欲しいなんて」
「まぁ……」
ルドがそんなことを考えているとは思っていなかった為、驚きが強い。
それでもリックが先程言っていた言葉がジワジワと染み込んできて、その言葉の意味をしっかり理解した時、歓喜とも愛しさとも判別がつかない感情が、身体中を駆け巡っていった。
それにより顔が徐々に赤くなっていく。
「クスクス。今照れるの?サフィー」
「かわいいなぁ」
「………」
「ルード、さらに照れてるからその辺にしてあげて。首まで真っ赤になってるから」
「ふふ。リック様、その発言も追い打ちをかけていますわよ。これ以上は可哀想ですわ」
恥ずかしいことを言わないで欲しい。
リックはフォローしようとしているのだろうが、首まで真っ赤になっているのはわざわざ言わなくていいと思う。
余計恥ずかしい。
「……っと、話が脱線してしまったけど、戻すよ?
まず、メラルダ嬢の叔父は明日捕縛する。尋問をして協力した人物や誰かに命令されたのかなどを聞いていこうと思う。それで黒幕が出てくればいいけど、出て来なかったらまた更に証拠を集めて行くしかないかな」
「分かった。この事件は魔法騎士団所属、特別部隊も対応させてもらう。他の部隊じゃこの先の対応が大変になることもあるかもしれないからね」
「分かった。そうしようか。
この話はここにいる者と特別部隊に所属している者だけの話で留めておこう。これ以上この件を知っている者が増えると、どこかから黒幕に話が漏れる可能性が高いからね」
「そうね」
「分かりましたわ」
話が一通りまとまり、その後はエスティの叔父を捕縛してから決めることになった。
***
……翌日の正午。
昨日に引き続き、リックの執務室に集まった。
集まったメンバーは特別部隊の隊員の、ルド、シャル、アレックス、エドワードとリック、エスティ、私である。
「昨日に引き続き呼び出してごめんね。
今日メラルダ嬢の叔父を捕縛して、尋問した結果、黒幕にシルド公爵がいることが分かった。ただ、もっと証拠を固めて裁判にかける必要があるから、もう少し時間がかかりそうなんだ。メラルダ嬢の叔父の処罰は、死ぬまでの強制労働で決まりそうだよ」
「……はい」
「ターヴェント嬢の両親の件は、シルド公爵を捕縛して尋問すれば、犯人がシルド公爵だと裏付けできると思う。
ルード、その時は協力してくれるかな?精霊の力を借りて、嘘がつけないようにして欲しいんだ」
「ああ、協力する。ウチの隊員が関係していることだしな」
「ありがとう」
シャルの両親の件も犯人が特定できたようでよかった。
「サフィーの言った通りになったわね」
「そうね。エスティとシャルの両親の死が犯人が同じだったなんて……」
「サフィー様、ありがとうございました。貴女様のお陰で、両親の無念を晴らせます」
「私だけではないわ。みんなの頑張りのおかげでしょう?」
涙ぐんでいるシャルへと、貴女の頑張りでもあるのだと伝える。
実際、今回の件を調べるにあたって、シャルは仕事の時間が終わっても必死に調べていたそうだ。
あまりにも無理をするので、番であるアレックスが強制的に家へ連れ帰り、無理矢理寝かせた。
2人は今は婚約して一緒の場所に住んでいるようで、私達の結婚式と蜜月が終わった後に結婚式をすると話していた。
お祝い事が続くのは良いことだと思う。
「あ!」
「どうしたの?エスティ」
「どうしましょう、すっかり忘れてたわ」
「何を忘れていたの?」
「サフィー、貴女も忘れているでしょう?ヒロインの出会いイベント」
「あ……!」
「「「イベント?」」」
ルドには前世の話をしていたが、今ここにいる他のメンバーには何も話していない。
今後も何かと協力して貰うだろうし、迷惑もかけるかもしれない。
ここで話しておくのが正解かもしれない。
「フィア、話すの?」
「うん、今後協力して貰うこともあるだろうし、協力者がいるのは心強いと思うの」
「そうね。私も一緒に説明するわ」
「うん、そうだね。ここでみんなを巻き込んでしまおうか」
エスティも一緒に説明してくれると言うし、ルドも肯定してくれた。
それに安心感を抱きながら、覚悟を決める。
「話は長くなるのだけど、実は……」
一通り前世の話をし、これまでのことを全て話した。
みんなの反応はというと、何故か妙に納得した顔をしている。
「……その反応は予想していなかったわ」
「サフィーは出会った時から妙に大人びていたからね。前世の記憶があることは納得したよ。ただ、乙女ゲームもいうものはどうしようか、という話になるけど…うん。まぁ、地道に一つずつ変えていくしかないかな。
強制力?というもの今は特に感じていないのだろう?なら、この世界は類似した世界ということでいいのではないかな?私達は”生きて”いるからね」
リックのその言葉なにハッとさせられる。
イベントは乙女ゲームのように起こるかもしれない。
だが、強制力が働いていないこの世界ならば、いくらでも結果を変えることができる。
「サフィー、みんなが協力してくれるなら、乙女ゲームのような結末にはならないわよ。
少しは安心しても良いのかもしれないわね。
もちろん、油断はできないけれど……」
「そうね。ヒロインはどうにかしなければならないけれど、少しは安心できるかもしれないわ。
でもやっぱり、それが1番不安なの。
……ルドを取られたらどうしようって思ってしまうのよ。なにせ、相手はヒロインだもの……」
「フィア、俺を信じて?
俺の番はフィアだけだし、俺が愛しているのもフィアだけだよ」
「わかっているわ。わかっているけど……」
「それでも不安なんだね?」
「うん……」
はぁー、とルドが大きな溜め息を吐いた為、嫌われてしまったのかと、呆れてしまったのかと思い、ビクッと震えてしまった。
「ふぅーん。じゃあ、分からせるしかないか」
「ふぇ?」
そう言ってルドは私を横抱きにして、みんなに話しかける。
「今日はここまで。この後何かあったら連絡して。俺達は屋敷に帰るから。フィア、覚悟しててね?」
色気全開の笑みでルドが私に言い、首まで真っ赤になった。
……この後ひたすらキス攻めされて、嫌でもルドが私しか眼中にないのだと理解させられた。
焦らされた時間は拷問だったし、ひたすら甘い言葉を囁かれ、脳内を甘く蕩けさせられた。
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