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「治す? 君がミミーをかい?」
疑いの眼差しで眉を寄せるリードに、カトレアは自分の両拳を握って意気込んでみせる。
「ええ! これでもわたくし、治癒魔法の心得がございますの。国の認定証もありますわ。きっとお役に立てるかと」
この国では魔力を持って生まれてくる者が少なく、魔法使いは貴重な存在だ。更に、治癒魔法は通常の精霊魔法よりも難しく、術者は国から保護されている。
「それは凄いじゃないか!」
リードは手を叩いて喜んだ。
「父さんがカトレアとの婚約を決めた時、『魔力持ちは不気味だが何かと役に立つ』って言ってたけど、本当だね!」
「あら、アンダーソン閣下ったら、歯に衣着せぬ褒め方をなさるのね」
カトレアはオホホと上品に笑い飛ばす。
「それじゃ、僕の家に行こうか。あ、その前に角のパティスリーに寄らなくちゃ。ミミーがお土産にケーキ買ってきてって言ってたから。ミミーはそこのザッハトルテが大好物なんだ」
「まあ! わたくしもですわ。美味しいですよね」
「うん。あ、今回はミミーの分しか買わないよ。ミミーの看病の為に欲しがる物をたくさん買ってあげてたら、お小遣いが寂しくなっちゃって。でも、体が弱くて食の細いミミーには好物を食べさせてあげたいじゃん? カトレアは元気だからお見舞いの品はいらないもんね」
一回の台詞の中に三度も従妹の名前を出した婚約者に、カトレアは「リード様は本当にお優しいですわ」とニコニコする。
「それなら、わたくしが皆様の分を買わせて頂きますわ。婚約者のお家を訪問するのに何も持たずに参れませんもの」
「ああ、手土産は常識だよね。じゃあ、僕はベイクドチーズケーキで!」
「はい、畏まりました」
二人のやりとりに物凄い顔でドン引きする店員に、カトレアはカットケーキ五個と焼き菓子の詰め合わせを注文する。カットケーキはアンダーソン家は当主夫妻と令息とその従妹の四人家族+カトレアの分だ。そして、
「随分買ってるけど、その焼き菓子は何?」
「使用人の皆様への差し入れですわ」
「うちの使用人に? なんで?」
「嫁ぎ先にお勤めの方々には今後お世話になりますから、ご挨拶代わりに」
笑顔で答える婚約者に、リードは露骨に眉を顰めた。
「そういう点数稼ぎ、好きじゃないな。僕らは貴族だよ? 平民に諂ってどうするの?」
「気分を害されたなら申し訳ありません。使用人にも友人と同等の敬意を払うのが我が家の家風でして」
「公私混同だね。アンダーソン家はそんなに甘くないよ。郷に入っては郷に従え、だよ。母さんに君の浪費癖を矯正してもらわなくっちゃ」
「精進しますわ」
大股でさっさと歩いていくリードの後を、二つのケーキ箱を両手に抱えたカトレアが足早に追いかけて行った。
疑いの眼差しで眉を寄せるリードに、カトレアは自分の両拳を握って意気込んでみせる。
「ええ! これでもわたくし、治癒魔法の心得がございますの。国の認定証もありますわ。きっとお役に立てるかと」
この国では魔力を持って生まれてくる者が少なく、魔法使いは貴重な存在だ。更に、治癒魔法は通常の精霊魔法よりも難しく、術者は国から保護されている。
「それは凄いじゃないか!」
リードは手を叩いて喜んだ。
「父さんがカトレアとの婚約を決めた時、『魔力持ちは不気味だが何かと役に立つ』って言ってたけど、本当だね!」
「あら、アンダーソン閣下ったら、歯に衣着せぬ褒め方をなさるのね」
カトレアはオホホと上品に笑い飛ばす。
「それじゃ、僕の家に行こうか。あ、その前に角のパティスリーに寄らなくちゃ。ミミーがお土産にケーキ買ってきてって言ってたから。ミミーはそこのザッハトルテが大好物なんだ」
「まあ! わたくしもですわ。美味しいですよね」
「うん。あ、今回はミミーの分しか買わないよ。ミミーの看病の為に欲しがる物をたくさん買ってあげてたら、お小遣いが寂しくなっちゃって。でも、体が弱くて食の細いミミーには好物を食べさせてあげたいじゃん? カトレアは元気だからお見舞いの品はいらないもんね」
一回の台詞の中に三度も従妹の名前を出した婚約者に、カトレアは「リード様は本当にお優しいですわ」とニコニコする。
「それなら、わたくしが皆様の分を買わせて頂きますわ。婚約者のお家を訪問するのに何も持たずに参れませんもの」
「ああ、手土産は常識だよね。じゃあ、僕はベイクドチーズケーキで!」
「はい、畏まりました」
二人のやりとりに物凄い顔でドン引きする店員に、カトレアはカットケーキ五個と焼き菓子の詰め合わせを注文する。カットケーキはアンダーソン家は当主夫妻と令息とその従妹の四人家族+カトレアの分だ。そして、
「随分買ってるけど、その焼き菓子は何?」
「使用人の皆様への差し入れですわ」
「うちの使用人に? なんで?」
「嫁ぎ先にお勤めの方々には今後お世話になりますから、ご挨拶代わりに」
笑顔で答える婚約者に、リードは露骨に眉を顰めた。
「そういう点数稼ぎ、好きじゃないな。僕らは貴族だよ? 平民に諂ってどうするの?」
「気分を害されたなら申し訳ありません。使用人にも友人と同等の敬意を払うのが我が家の家風でして」
「公私混同だね。アンダーソン家はそんなに甘くないよ。郷に入っては郷に従え、だよ。母さんに君の浪費癖を矯正してもらわなくっちゃ」
「精進しますわ」
大股でさっさと歩いていくリードの後を、二つのケーキ箱を両手に抱えたカトレアが足早に追いかけて行った。
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