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しおりを挟む「わたしには何でもお願いを叶えてくれるおじさまがいるの!」
宝石のような明るいオレンジ色の瞳を輝かせて彼女は言った。
自分の後ろ盾を、そうとは知らないままに。
そして彼女は願ったのだ。
「王子さまと結婚したい!」
その王子さまには幼い頃からの、愛する婚約者がいるとは思いもしないで。
――知った後にも。変わらず。
「痛み分け……ってことにしましょうね?」
帝国の第四王子ルドルフの、ヨアヒムへの悼む言葉のあとに続けられた、そんな言葉の意味を。ガブリエーレはわからず、失礼ながらと問いかけた。
今この場にはガブリエーレとルドルフだけがテーブルに。
これから王妃でなくなるものと。
これから王にならねばならないものの。
その話し合いが。
帝国からもかなりの人間が入ることになった。
乗っ取り――ではないと……この時まで、ガブリエーレは思っていた。
帝国は元々、この国の上にあるのだから、と……。
「貴方は息子さんを、この国の血統を」
「え?」
「そして私は、伯母を」
伯母?
「まあ、私というよりお爺さまの、子と……いうべきでしょうかな」
王家の色――帝国の王家も金の髪と青い瞳であったはず。
だが、目の前の王子は金の髪に――黄玉のような明るいオレンジ色。
――記憶の中にある、忌々しい誰かの色。
「私が王様になれば、お爺さまももう手出しいたしませんから」
だから、手打ち。痛み分け。
「私は帝位を継ぐ上の兄様たちと仲良いし、可愛がってもらっていますから、安心してくださいな」
そう言って帝国の王子は、オレンジ色の瞳を揺らめかせた。
帝国の王族らしい美しい金の髪とともに。
帝国の王族もまた、この国の元であるように金の髪に青い瞳が主であるという。
しかし政略結婚などで他国の姫を娶ったりするうちに、多少の色違いな子が生まれることもある。
「僕の母方の祖父、ヴォルフラム王弟殿下もそうした色でね」
ヴォルフラム王弟殿下は兄たる王とは母は別。ヴォルフラムの母の側妃たるその方の瞳は、この黄玉色であった。それは嫁いできた彼女の国の色であり――その方は栗色の髪に黄玉の瞳をしていたらしい。
数十年前。
帝国は帝位を巡って争いが起きた。
それを制したのは第一王子ディードリヒであった。そして腹違いながらも第三王子ヴォルフラムは、ディートリヒと仲が良く、彼の側についた。
知略と武勇に優れていたヴォルフラムは、将軍として活躍し、兄の助けとなり、他の兄弟や叔父たちと戦い勝利したのだ。
そんなヴォルフラムには愛する女がいた。
彼女は城に勤める身分低いメイド――侍女ですらない使用人であったが、ヴォルフラムには癒しであった。
けれども戦火が酷くなり。彼女はヴォルフラムの「弱点」と成りうる存在になり。
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己の子を宿し、さらに弱点となった女を。
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産まれたのは女の子と守役に聞いて、ヴォルフラムは、何も知らない平和なこの国で、幸せに暮らして欲しいと願うことにした。
母の身分も低く、帝国にあってはまた火種にも成りうる存在だ。
自分は、兄のために有力貴族の娘と婚姻をしなければならない。
引き取ることは難しいが――哀れなその子の願いは叶えたいと、常に。
そのまま、匿われた男爵家にてその女の子は偽られながら育てられることとなり――いつしかその国の男の子に恋をした。
その国の王子さまに――恋を。
その王弟の子の名を、エリーゼという……――それは亡くなった母と同じ名前を付けられた。
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