いつか優しく終わらせてあげるために。

イチイ アキラ

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 明るい金茶色の髪に、泣きぼくろ。
 けれども顔立ちは。
 その、亡き王に似た顔立ちは。
 
「初めまして。帝国のハイリエル領より参りました、ギルベルトと申します」

 かつては王子として皆の前に立っていたヨアヒムは、しれっと新しい名前と身分で挨拶をした。
 ルドルフが帝国から連れてきた側近のひとりとして。


「キミの、新しい家名はハイリエル家ね?」
「ハイリエル家……ああ、わかりました」

 本当に察しの良い奴だなとルドルフはもうヨアヒムを受け入れていた。察しの良いのは悪いことではない。これから自分の配下になる人間が、出来の良いのはありがたいことなのだと、考えることにした。
 何せこれからまだまだ新体制つくりで忙しくなる。

 この国をルドルフの国にするために。

「お祖母様の、そのまたお祖母様のご出身、でしたね……?」
 ほくろと髪の色程度で騙せるか。
 それはやっぱり無理があるだろう。
 だからそこに、もっと大きな理由をつけたした。

 「ギルベルト」が「ヨアヒム」に似ていても仕方がない、理由を。

 ヒントはまだ城のあちこちにあった王ユリアンと、その母アーデルハイドの肖像画。

 ヨアヒムは父親であるユリアンに、もとを辿れば祖母のアーデルハイドに似ていた。

 大きな理由――血筋、だ。

 この国は帝国の属国。もとを辿れば帝国こそに主流のある家も多く。

 アーデルハイドの祖母は帝国より、この属国のザルムワーレン公爵家に嫁いで来た方だった。
 そしてその祖母の実家こそ、ハイリエル家――と、いうわけだ。

「ハイリエル家の今のご当主も、会ってびっくり。キミに似てた」
 特に目が垂れ目気味なところとか。
 手回ししてきたルドルフは、その辺りにも血の流れを感じてきたらしい。
 ヨアヒムはハイリエル家の遠縁として、籍を作られた。

 ギルベルト・ハイリエル。

 そうして、この国の亡くなった先の王妃のご親戚のギルベルトは、ルドルフがかつて遠乗りでハイリエル領で出会って知己となりスカウトされ、側近として以前より働いていた――と、戸籍を作られた。

 ルドルフはひっそりと、ヨアヒムの愛情が深いのはそのハイリエル家の「血」だろうなとも思い至っていた。

 ヨアヒムのロベリアへの愛情はすでにもうお腹いっぱいなくらいに。
 そのヨアヒムの父の、話に聞いたユリアンのガブリエーレへの執着も。

 そして祖母のアーデルハイドの……死は。
 彼女が産後、自ら回復を望まなかったのは、またヨハンへの愛だったのかもしれない。
 愛するヨハンが子を望んだから、彼のために孕みはしたが――やはり無理だったのだろう。

 ハイリエル家から、公爵家とはいえ帝国の属国に嫁に出したのはまた、その祖母君がザルムワーレン家の子息に惚れ込んだから……とも、ハイリエル家には残っており。
 幸い、それは帝国からの押し付けとはならず、ザルムワーレン家の子息とは互いに想いあっていたとある。

 ――エリーゼのようにはならず。

 その祖父母の慕い合う姿をみていたから、アーデルハイドもまた、ヨハンを愛し――そのように歳を重ねたかったであろうに。

 現在のハイリエル家の当主は、そうした背景と、縁があるヨアヒムのことに同情して。
 彼もまた愛する人がいたから、この重たい気持ちがわかるのか。
 そうして「ギルベルト」は二十年前からハイリエル家の一族の端に存在していたこととなった。
 今後は「ギルベルト」の実家として、この国やルドルフとも縁がまた繋がれることは、悪いことでもないとして。


 ヨアヒムはほくろと髪色だけでなく、小道具として銀縁の眼鏡を追加もした。回復中、毒が抜けるまでの間に髪も伸ばして。
 しかし、やはりその顔は――王子にあまりにも、瓜二つ。

 けれども。

「人違いです」
「よくある顔です」
「まぁ、遠縁ですし」

 と。
 あまりにも堂々とされると、人は逆に納得してしまう。隠したい、やましいことがあるなら、もっと、こう……あれだ。こんな自信満々でいられるかしら……と。
 側に置くルドルフや、今や同僚のハーゲンの方が、頑張って挙動不審にならねばならないほどに。
 
 下町の顔役たちは「へえ、今日からギルベルトさんね。解った、色々解った。今後ともよろしく」と、あっさりと受け入れているのがさすがと言うべきか。
 そんな彼らも、ヨアヒムの生存を喜んでくれているからこそ。
 ヨアヒム――ギルベルトがかわらず繋ぎとなるならば、ルドルフの政の世にも協力しようとなってくれたりと。
 


 そうして。
 ルドルフは国王となり。
 その傍ら、宰相位には側近の中より――ギルベルトが就いた。

 
 そんな帝国貴族にして国王ルドルフの宰相。懐刀――しかも暗殺者も自分で撃退する腕前――として、ギルベルトは国に、王に尽くした。

 そんな彼に、ルドルフに保護されていた先の王子妃ロベリアが下賜されるのは、そんなに遠い未来ではなく。

「もう一度結婚式しようねロベリア。今度は二人きりでも良いね。あ、でもお姉さんとお父さんは呼びたいよね?」
「は、はい……」
「まって。もう少し国が落ち着いてからにして。っていうか、再婚早すぎるのはロベリアの外聞とか悪いこともあるから、あと数年まって。せめて三年! 僕も色々急ぐから頑張るから! ね! 舌打ちしない! 殺気飛ばすな! 僕、国王だからね!?」
 


 後の世に、玉座に付くルドルフと傍らに控える宰相のギルベルトの絵が城に残された。その宰相が先の王家の最後の王子に似ているとは、誰もが思ったが――それはまた、歴史の中に。
 それよりも国王ルドルフと親友・・だったという宰相ギルベルトの治世は帝国に頼りにされるほどであったとか。


 数百年後、再び麻のように乱れた帝国を制したのは――このルドルフ王の子孫であったという。

 





 こうして…俺達の戦いはこれからだ! なエンディングとなりました、とさ。
 彼らはこれから大変です。ルドルフがとくにw(きっと彼の子孫も嫌々)結局、親の因果とかは彼もでしたから…。
 玉座は重いですけど、その椅子取りゲームで先に座るハズだった経験者がしっかり助けるでしょう。
 この話は少しずつ明るくなっていくように書いたつもりですが、如何でしょうか。これで広げた伏線、風呂敷きをたためられていたら。
 
 ふー……。

 ……さて。
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