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しおりを挟む――そうして。
その日、帝王ディートリヒは弟であり、長く頼りになる家臣であったヴォルフラムを、呼び出していた。
相談があるからお茶を、と。
相談とは。
ディートリヒが弟を呼び出したのは、孫娘のヒルデガルドの将来の話のためだ。弟にとっても孫娘にあたるから。
縁なもので、弟は帝国内で影響力のある公爵家に婿入りし、その娘は自分の息子に側妃として嫁いできた。
帝国内のパワーバランスのためでもあるが、従兄妹同士で仲が良かった子らが結ばれたことは、また良かったと思う。
姪は正妃である属国の姫にも、きちんとわきまえた体をとってくれている。これは弟ではなく公爵家の躾が良かったのだと、ディートリヒは察していた。息子にも幼馴染みばかりではなく、正妃や他の側妃にも気を使うように命じてある。
そのために次男であるのに王太子に選んだのだ。
長男ではそうした機微はできない。
戦乱の後、制した自分の跡を整えるには――姫たちを「妃」という人質に。
次男には幸い、その数人の女性を同時に愛する器があった。
本が恋人の長男では、また新しい災いの種になりかねない。当の本人が跡取りから外れて一番安堵しているようでは。
跡取り息子には、頼りになる属国の姫を正妃に。またその牽制になる国の姫を人質としても第一の側妃に。
そして帝国内の、弟の婿入り先であった有力貴族の、ライゼンバルグ公爵家の娘を第二の側妃に。
第二の側妃――それが弟の娘になったのは偶然ではなく。
姪こそが一番の人質。
公爵家に対してというより、弟に対して。
まぁ、息子と姪は従兄妹として仲が良く、幼馴染みとして想いあってもいたから、弟は政略とはあまり思わず、娘の恋が実ったと思っているだろう。
戦場では本当に頼りになった弟だが。
その実、一番めんどくさい相手でもあった。
自分が気に入った相手への、情が深いのだ。
そのおかげで。腹違いとして避けずに可愛がったおかげで――自分の味方になったのは良しとする。
まぁ、可愛い弟だ。
そうは思ってはいる。
だから、属国に隠し子がいることは見逃してやっていたのに。
「ヒルデガルドの輿入れですか? あの子ももうそんな歳に……」
「時が経つのは早いものよな」
ヒルデガルド。
それはディートリヒの孫娘ではあるが、ヴォルフラムの孫娘でもある。
第二側妃のエリーザベトの娘だ。
そのエリーザベトとは、ヴォルフラムの娘。ヴォルフラムと幼い頃からの許婚のライゼンバルグ公爵家の跡取り娘との子だ。
息子には王子は何人かいるが、姫は現在このヒルデガルドのみ。
帝国唯一の姫として、ディートリヒだけならずヴォルフラムも可愛がっていた。
その兄の第四王子ルドルフはこの度、属国の跡継ぎが途絶えたために、統治者として降ることとなった。
そして明らかになる弟の愚行。
あの属国は敵にもならず、むしろ良い関係を結んでくれていたというのに。
先の戦乱の時には中立を、どの王子にも付かず、上手く戦火も逃れてくれて。その上で終わった後には帝国本土の復興にも資材の援助を良くしてくれた国だ。
真に、属国とはこうあろうべきに。
もしも歳が合えばヒルデガルドの降嫁先にもなったろうに。
それほど、帝国にはありがたい国であった。
ヴォルフラムの愛人がその国に逃れたのは知っていたが。子も産まれたが、愛人は亡くなったとあり、子は養子に出したとあったから。
名前に、少しばかり……エリーザベトが気の毒になったが。
良い国に養子に出したな……などと。
弟も公爵家に婿入りしたからには、きちんと身綺麗にしたのだとばかり。
それが、まさか。
頼りになった属国に迷惑をかけていたなんて。
ヒルデガルドの輿入れ先として二つほど考えていた。
やはり可愛い孫娘は手元に置いておきたい。
属国に輿入れさせ、より関係を深めることも考えはするが、今現在はそれより足元を堅固にするのが大切だろう。
跡取りにした息子も同じ考えだという。
まさか四男を属国の王として降下させることになるとは思っていなかったから。
弟は孫の一人に「王」という地位を与えられたことに、なにやら満足しているようだ。
――なんて、余計なことを。
弟は王弟であり決して王ではないから――その重みを知らないから。
王とは、いざ何かあればその首一つで国の民すべてを守るために存在もしている。
それが玉座という名の――祭壇だ。
話しに聞いた属国の王子、ヨアヒムという子の方が、よほど理解している。
弟は、なんて、余計なことを……――。
「……ヒルデガルドがなぁ、仕方がないて言うのだよ」
これよりおまけですが…〆、入ります!色んな意味で、〆!
わかりにくいかもですが、ルドルフの父母は従兄妹同士でありまして、その母方の祖父が王弟ヴォルフラム。父方が帝王ディートリヒ。
ヴォルフラムには幼い頃から婿入りするとして、許婚がいました。つまり、エリーゼは…。
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