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しおりを挟むかつてその挨拶の後に「こんなブスと結婚なんていやだ!」と言って。
そしてカウンターパンチを喰らったライアンは。
その一撃により彼の目に星が――光が。
その日より。
自分にかけられる「かわいい」とした褒め言葉に疑問を持つようになった。
そして長男に、まずは謝って。
それまでの自分の甘えに、情けなさに。
長男は吃驚した。
そして次男も。弟から謝罪と「鍛えたいのですが、どうしたら良いでしょうか?」と、嬉しい相談をされて。
ライアンは今までの自分に、兄達に謝ることで決別したのだ。
兄達も見捨てかけていたことを謝った。弟はまだわずか十歳。まだまだこうして改心できる子であったことにも喜んで。
そのうち長男が見限っていた父も何か目が覚めたようで。
可愛がっていた末っ子に相手をしてもらえなくなった母も、何か思うことがあったのか。
ふりふりの服が着てもらえなくなったことに――母もまた、目が覚めた。
母は、女の子が欲しかったのだ。だから余計に男ばかりの自分の子供たちに……。
いや、息子にそれを押し付けるのはどうしたものかと。
彼女もようやく。反省した。
「女の子が欲しかったから、貴方に八つ当たりしていたんだわ。目が覚めたの……ごめんなさい……」
やがて両親は次男に謝った。
ジョージは、そんな理由だったのかと気が抜ける思い。だがもはやそんなことで怒るのも馬鹿らしい。兄のおかげで達観できるようにもなっていたし。確かに自分の容姿は残念だし。
けれども。
ライアンがいなかったら自分たちが着せられていた。そんなことも兄達はゾッとして気がついて。
弟よ、ごめんな。
そんなイザベルは、他所のお嬢さんたちに着てもらいましょうと。
良い方向に。
そう、ブランドを立ち上げた。
ふりふりとしたフリルたっぷりの人形の服から事業は始まったが、世にはそうした愛好家はいてくださって。
今ではそうした人形とお揃い、いや人形のようになれるという服として、人気にもなっている。
子供服ブランドが特に繁盛しているとかで。人形、なるほどである。
すべてはクラレンス辺境伯家のリューゼットのおかげで。
ライアンはもちろん、リューゼットに何より先に謝った。
そして――婚約者にしてもらえた。
カウンターで殴り返した時。
あの時、ライアンの動きがリューゼットが感心するほど良かったので。
「鍛えたらなかなかのものになるのではないか?」
と。リューゼット自身が面白がったのだ。
どのみち、誰かしら婿にしなければならないのなら、鍛えがいのある奴が良い。
目覚めたライアンは、次兄のアドバイスや――リューゼットの叔父のカインにも弟子入りして。
副団長直々の内弟子となり。
王都で鍛えたのち、早々に騎士の資格をとり、学園入学前に辺境伯の騎士団に入団している。
リューゼットの目利きとおり、ライアンはその実、なかなかのもの、だったのだ。
ライアンははじめこそは自分を殴り叱ってくれたからこそ。リューゼットに惹かれていたが。
やがて歳を重ねるごとにそばかすが薄くなったことに、リューゼットが美しくなっていくことよりも。
辺境伯家にて采配を振るい、領地を、国を――民を守らんとする、彼女のその心にこそ、惚れた。
騎士になって、鍛えて良かった。彼女の隣に立つことを――許されたことこそ。
「鍛えて良かった……心も、鍛えなきゃ……」
次兄のジョージも見事、王都の騎士団に入団できて。今では兄弟仲も。事あることに、互いに連絡しあうほど。
ヤロール家は辺境伯家にも縁があると――辺境伯家の騎士服にも華やかさは必要よ、と。ヤロール夫人により、王都でも辺境伯家がちょっと見直されるようになったのは、お互いさまで。
そう夫人のデザインは、センスは、ふりふりだけではなかったので。
「思えば、父はふりふりしてませんでした……」
美少女だった母に惚れられた父も、実はなかなかの美形だったので。その母が用意していた父の服は、ふりふりしてなかったと、ヴィンセントは出資してあげたときに、はっとしたり。
そんなイザベルお母さま。
実は先の王弟の娘という、やんごとない身分の方だった。実は元公爵令嬢。だからどこかぶっ飛んでたのもあり。
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だから皆、あまり強く言えなくて。伯爵は惚れた弱み。
そんな背景もあり。
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そこに彼の目覚めがあり。
いつしか可愛いを卒業していたライアンは。
可愛いのが、筋肉をつけ、格好良くなっていたら。
凛々しく美しく、そしてたくましく賢く。
ライアンひとりですべての枠を埋めてしまうほど。
実はやんごとなかったイザベルのおかげで、幼少期から他の彼らとも、交友があったのだ。
悪役令嬢枠のミシェーラにも。
ライアンが知識と筋肉をつけ、変わっていく様に。
――彼らも影響を受けた。
このままでは、一番か弱かったライアンに――負ける。
それはちょっと、こう……アレだ……。
そしてこの国は騎士の国と呼ばれる程……下地があり。鍛えることへの。
それが少しばかり斜め上になっていったのは誰にも予想できなくて。強制力なんてものも弾き飛ばされた。筋肉に。
ミシェーラ嬢をはじめ彼らの婚約者たちは「まあ、鍛えるのは……心身ともに健康なのは、良いことよね……」と、皆さま遠い目をしたけど。
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