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本来は、幼い頃に婚約者に「ブス」と言われて傷ついた少女は。学園に入学したときに愛らしい男爵令嬢をかまう婚約者に、また傷ついて。
失意のうちに――逆に男爵令嬢を……。
――そのはずだった、赤薔薇担当のリューゼットは。
「リューゼットさまぁ、今日も素敵ですぅ……あの、タオルをどうぞ!」
その男爵令嬢のロージーに鍛錬を応援されていた。
「ロージー嬢! 私の婚約者へのタオルは、私が!」
そんなロージーを牽制するのが、かつては生っ白くか弱そうで――屑だった、ライアンだ!
「ふふん、私のタオルは我が母が材料から厳選したブランドもの……このふわふわに勝てるか!?」
「うぐぐ、親の威光に頼りやがりまして……私のはリューゼット様へ一針ごとに愛込めた! お名前の刺繍いりです! 幸運の四つ葉の刺繍もつけて!」
「ぐっ……ところで手先、すごく器用なんですね? お見事です」
「……昔、ベッドから出られないのがありまして、こうした作業が得意で……そのタオル、材質いいですよね。この縁に、こう、辺境伯家の家紋を入れたら……」
「グッドっ!」
「おまかせを!」
何やら熱く握手している。喧嘩しているより良いが。
ところでタオルは?
リューゼットは結局、自前のタオルを使いつつ。こんなこともあろうと考える前に、鍛錬にタオル持参は当たり前で。
「すまないなぁ、リューゼット嬢……騎士学校はまだ男子しか入学が許可できなくて。頭の固い爺どもが……」
鍛錬場で仲良くなった王太子は、すでに学園で学ぶ程度は終わっているリューゼットに謝るばかり。
彼女はすでに騎士の資格は持っている。本来なら騎士学校も必要ないのだが。
騎士学校は男子校でもあり。いまだ女人禁制。騎士を目指す女性にはまだまだ厳しい世界。
「私が王位を継いだら、その時には……!」
「はい、楽しみにしております。殿下」
国の防壁である辺境伯家と王家が仲が良いにこしたことはない。
それにこの王太子ならば、良い治世をするだろうと、期待もしている。
「……もう、あんなことには」
リューゼットの脳裏に浮かぶ、焼き払われた田畑。家――人々。
リューゼットも、転生をしていた。
しかし彼女の記憶にあるのは、壮絶な景色と――死だ。
神が慈悲により生まれ変わりをさせたというのならば。
かつて。
世は戦国の。
リューゼットは地方の、歴史に名も無く消えた小さな領地の姫だった。
小さかったからこそ。
大きな武家同士の争いに巻き込まれたときに、なすすべもなく。
小さなに領地だからこそ、互いに敵に組みされては厄介と思われたか。
――領地は攻められ、焼き払われた。
野盗などとは話が違う。規模が違う。
自ら弓を、槍をもって戦った姫は――領地と運命をともにした。
落ち延びさせたまだ幼かった弟妹はどうなっただろうか。
それもわからないほど、歴史に埋もれて……――。
「もう、無くさない」
辺境伯家は防壁の要。
国を狙う他国や魔獣が相手。
「あの時、この魔術……大筒があれば……」
習う魔術や、武器の数々。
何より、鍛えられた騎士たち。
戦う力。
リューゼットは、辺境伯家で目覚めてから。記憶を取り戻してから……気弱だった自分を鍛えることにした。
本当は怖くてたまらなかった、生まれ変わる前も。
弱い自分が――何よりも怖くて。
でも。
「……今度こそ、守る」
領地も。国も。大切な者たちも。
だから、鍛えたのだ。
悪口を言われても負けないように、心こそを。
「もう二度と、失うまい……」
心を鍛え、身体を鍛え――そうして彼女がおこした小さな羽ばたき、小さな一雫が――。
「やはり鍛えることは、大切だな」
――国を、大事な人たちを、守っていくのだった。
こうして…いや、重い前世を持つ少女も、影響受けた少年たちも、前を向いて行くのでした、とさ。
ギャグにみせかけて、その実でら重背景のリューゼットさんでした。
転生するのは現代人だけではないよなぁ、と…大河ドラマなどを観ているときに、ふと。
ロージー嬢も前世大変だったから、健康大事と、心の底でしっかりとわかっているかと。
幸せにおなり。
皆、仲良く。喧嘩するより、大事。健康、大事。
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