あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです

じじ

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これほど喜んでくれている両親を悲しませるわけにはいかない、アリアナはそう思いクレメントの所業は伝えないことにした。

居間から出てきたアリアナは自室に向かう途中に思わず独り言を呟いた。

「あのクズ男見てなさいよ。私と結婚したこと後悔させてやる」

小声で呟いたにも関わらず、その言葉に対して反応したものがいた。

「おお、姉さん。荒れてるね」

ビクッとして後ろを振り返ると、弟のユージンがいた。

「あら、ユージン。今の聞いちゃった?」
「姉さんにしたら、珍しく暴言吐いてたね」
「まあね。」
「クレメント様となんかあった?」

察しのいい弟はすかさず聞いてくる。

「うーん」

答えを渋るアリアナにユージンは留めの一言を放った。

「父さんと母さんには内緒にしておく。でも、味方はいた方がいいんじゃないか」

この弟は昔からこうだ。妙に頭が良くて察しも良い。それを羨ましく思った時もあったが、本人に嫌味はない。
ユージンならいいか、と思ったアリアナはことの顛末を簡単に述べた。

「クレメント、なかなかやるなー」

聞き終えて一言目の感想がそれだったので、流石にむっとしてアリアナは抗議した。

「他になんか言うことないの?」

責める口調のアリアナにユージンは不敵な笑みを浮かべて答えた。

「もちろん、言いたいことは山ほどあるよ。でも一番は、姉さんを馬鹿にした落とし前はしっかりつけてもらう、ってところに尽きるかな」

冷酷な笑みを浮かべるユージンにアリアナは、苦笑いを浮かべた。この弟はいつもそうだ。本人はいたって穏やかなのに、アリアナが傷つけられた時だけは、相手が誰であろうと徹底的に追い詰めるのだ。

(クレメント様、お気の毒に)

そう思いながらも念のため、釘をさしておく。

「お父様とお母様には言わないでね。二人とも本当に喜んでくれてるの。悲しむ顔を見たくないわ。それと、基本的にあなたは手を出さないで。相談に乗ってくれるだけで充分よ」

その言葉に少し不満気な顔しながらユージンはうなずいた。

「ちなみに、どうやって一矢報いるつもりなの?」
「とりあえず、持参金なし、支度金のみで嫁いでやろうと思ってるわ」
「なるほど。自由になる金を渡さないのか。本人は納得したのか?」
「私ならすぐにでも名義をクレメントに移すと思ってるんでしょうね。持参金2000か支度金5000のどっちか選べって言ったら、私を気づかうふりしながら支度金選んだわよ」
「ちょっと危ういな。父さんは両方用意してるんだろう。これから先顔を合わせた時に、その話が出たらまずいな」
「そうなんだけど…お父様にはクレメント様が辞退したって形にしようかと。」

困った顔をしたアリアナにユージンがニヤッと笑って意外なアドバイスをした。

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