8 / 102
7
しおりを挟む
「父さんへの言い訳はそれしかないな。でも、クレメントが不用意なことを言い出すとも限らない。さすがに婚約者の父に、娘に持参金を持たせないとは、なんて言わないと信じたいけど…」
「外面だけはいいから、お父様には言わないと思う。でも仲間内には何を言い出すか分からないわ。そっか、持参金を持たないとお父様に恥をかかすかもしれないのね。」
「そうだね。で、考えがあるんだけど、聞く?」
妙に楽しそうにユージンはアリアナに尋ねた。
こくこくと頷いたアリアナにユージンは嬉々として告げた。
「塩の販売ルートを姉さんが引き継げばいい」
「え」
海に面さない王都で塩の販売は、莫大な利益を生む。
ゾーイ商会の取り扱う品は多種多様に渡り、王族に献上する品から平民が手にする品まで多種多様に及ぶ。
しかし、身分の上下に関わらず生活において必需品となる塩は、ゾーイ商会の利益を支える柱の一つだ。
「でも、あなたがゾーイ商会を継ぐ時に、それは困るんじゃ…」
「塩の販売ルートを姉さんに譲ったところで僕は痛くも痒くもないよ。なんなら新しい商品で、塩と同じくらい価値のあるものを見つけてみるのも一興だしね。もちろん、販売は今まで通りしてもらうことになるよ。僕たちの家の都合で、周りに迷惑をかけることは許されないからね。でも、姉さんなら問題ないでしょ」
「それはもちろん、大丈夫だけれど…」
折に触れて、家業に携わってきたアリアナにとって、仕入れ先も販路も確立している塩の扱いなど朝飯前に等しい。
「でも、クレメント様はこれが持参金代わりってちゃんと分かるかしら。」
「姉さん。塩だよ?ほっといても金の卵を産むにわとりだよ。たかだか2000エランの持参金より遥かに価値があるのは誰でも分かる。生粋の馬鹿以外」
最後の一言にどきりとしたアリアナを見てユージンはげんなりした。
「生粋の馬鹿なのか。」
「ごめんなさい」
「どうして姉さんが謝るの」
「そんな馬鹿に恋してしまった過去の自分が居た堪れなくて」
「恋は盲目」
一言評して、ユージンは話を戻す。
「とりあえずクレメントが周りに、持参金の代わりに塩の販売ルートを姉さんが持ってきた、って嘲ったら馬鹿にされるのは奴の方だから気にしなくていい。
父さんには、持参金の辞退の代わりに姉さんの結婚祝いとして塩の販売ルートを譲るように僕からいっておくよ」
「ありがとう」
ハンゼ公爵家のこれからが楽しみだ、と呟いた弟の姿を見て、アリアナは思わず苦笑いをしてしまった。
「外面だけはいいから、お父様には言わないと思う。でも仲間内には何を言い出すか分からないわ。そっか、持参金を持たないとお父様に恥をかかすかもしれないのね。」
「そうだね。で、考えがあるんだけど、聞く?」
妙に楽しそうにユージンはアリアナに尋ねた。
こくこくと頷いたアリアナにユージンは嬉々として告げた。
「塩の販売ルートを姉さんが引き継げばいい」
「え」
海に面さない王都で塩の販売は、莫大な利益を生む。
ゾーイ商会の取り扱う品は多種多様に渡り、王族に献上する品から平民が手にする品まで多種多様に及ぶ。
しかし、身分の上下に関わらず生活において必需品となる塩は、ゾーイ商会の利益を支える柱の一つだ。
「でも、あなたがゾーイ商会を継ぐ時に、それは困るんじゃ…」
「塩の販売ルートを姉さんに譲ったところで僕は痛くも痒くもないよ。なんなら新しい商品で、塩と同じくらい価値のあるものを見つけてみるのも一興だしね。もちろん、販売は今まで通りしてもらうことになるよ。僕たちの家の都合で、周りに迷惑をかけることは許されないからね。でも、姉さんなら問題ないでしょ」
「それはもちろん、大丈夫だけれど…」
折に触れて、家業に携わってきたアリアナにとって、仕入れ先も販路も確立している塩の扱いなど朝飯前に等しい。
「でも、クレメント様はこれが持参金代わりってちゃんと分かるかしら。」
「姉さん。塩だよ?ほっといても金の卵を産むにわとりだよ。たかだか2000エランの持参金より遥かに価値があるのは誰でも分かる。生粋の馬鹿以外」
最後の一言にどきりとしたアリアナを見てユージンはげんなりした。
「生粋の馬鹿なのか。」
「ごめんなさい」
「どうして姉さんが謝るの」
「そんな馬鹿に恋してしまった過去の自分が居た堪れなくて」
「恋は盲目」
一言評して、ユージンは話を戻す。
「とりあえずクレメントが周りに、持参金の代わりに塩の販売ルートを姉さんが持ってきた、って嘲ったら馬鹿にされるのは奴の方だから気にしなくていい。
父さんには、持参金の辞退の代わりに姉さんの結婚祝いとして塩の販売ルートを譲るように僕からいっておくよ」
「ありがとう」
ハンゼ公爵家のこれからが楽しみだ、と呟いた弟の姿を見て、アリアナは思わず苦笑いをしてしまった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
168
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる