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「さあ、塩を使ってどうクレメントを料理しようかしら」
一見するとぞっとするようなことを呟きつつ、アリアナは考え込んだ。
クレメントがすぐに塩の販売に興味を示すとは思えない。興味を示すとしたら一月分の売り上げが確定し、その売り上げ額を知った後だろう。
ゾーイ商会の塩はここ5年、平均で500エランを月に売り上げている。諸々の費用を引いても月に300エランはくだらない。
だが、一方で塩の販売には煩雑な手続きが必要だ。
そもそも塩の売買は塩鑑札という塩の販売を許可された者にしかできない。加えて仕入れ先や販路が確立している場合でも、運ばれて来た塩の等級によって細かく卸し先と卸値を割り振る必要がある。
王都の塩の売買をほとんど独占状態で扱っているゾーイ商会だが、競合するところがないのは、塩の等級の見極めおよび、卸値が適正だからに他ならない。
「塩の売り上げを見せた上で、そうだ、新しい事業を始めるようにそれとなく勧めてみようかしら。クレメントの好みで言うなら、毛皮か宝石かしら。うーん。迷うわね。あ、それなら…」
アリアナはクレメントが商売に興味を持ったら宝石の売買を勧めようと決めた。煌びやかな商品は彼が好むものであろうし、何より売れた時の利益の大きさに目が眩むだろう。
だが、宝石は売れれば高いが仕入れも値が張る。彼は宝石を売り物として仕入れられるだけの財産を持っていないから、必ずアリアナに借りることになる。
そこまで考えてアリアナはワクワクし始めた。
ひとしきり計画を練ったあと、アリアナはベッドに潜り込んだ。
翌朝。朝食の席で珍しく家族四人が揃った。いつも仕入れなどで誰かしらいないことが多いゾーイ家では珍しい光景だ。
クリューベという穀物とドライフルーツがふんだんに練り込まれたパンを切り分けながら、さりげなくアリアナは、ビンセントの方を窺った。
新聞を片手に読んでいたビンセントはアリアナの視線に気付くと目元を和らげた。
「どうしたんだい、アリアナ」
優しく聞かれて、アリアナは思わず尋ねた。
「ユージンからお聞きになられましたか、持参金の件。」
「ああ、もちろんだよ。思えば私も気がつかなくて悪かったね。確かに財産の少ない公爵家では収入を得る手段があった方が良いだろう。もちろん困ったことがあれば、いつでも援助はするつもりだが…。ところで、塩の売買はアリアナがするつもりかい?もしクレメント様がするなら塩鑑札の手配をしなければならないが…」
「私がします!」
一見するとぞっとするようなことを呟きつつ、アリアナは考え込んだ。
クレメントがすぐに塩の販売に興味を示すとは思えない。興味を示すとしたら一月分の売り上げが確定し、その売り上げ額を知った後だろう。
ゾーイ商会の塩はここ5年、平均で500エランを月に売り上げている。諸々の費用を引いても月に300エランはくだらない。
だが、一方で塩の販売には煩雑な手続きが必要だ。
そもそも塩の売買は塩鑑札という塩の販売を許可された者にしかできない。加えて仕入れ先や販路が確立している場合でも、運ばれて来た塩の等級によって細かく卸し先と卸値を割り振る必要がある。
王都の塩の売買をほとんど独占状態で扱っているゾーイ商会だが、競合するところがないのは、塩の等級の見極めおよび、卸値が適正だからに他ならない。
「塩の売り上げを見せた上で、そうだ、新しい事業を始めるようにそれとなく勧めてみようかしら。クレメントの好みで言うなら、毛皮か宝石かしら。うーん。迷うわね。あ、それなら…」
アリアナはクレメントが商売に興味を持ったら宝石の売買を勧めようと決めた。煌びやかな商品は彼が好むものであろうし、何より売れた時の利益の大きさに目が眩むだろう。
だが、宝石は売れれば高いが仕入れも値が張る。彼は宝石を売り物として仕入れられるだけの財産を持っていないから、必ずアリアナに借りることになる。
そこまで考えてアリアナはワクワクし始めた。
ひとしきり計画を練ったあと、アリアナはベッドに潜り込んだ。
翌朝。朝食の席で珍しく家族四人が揃った。いつも仕入れなどで誰かしらいないことが多いゾーイ家では珍しい光景だ。
クリューベという穀物とドライフルーツがふんだんに練り込まれたパンを切り分けながら、さりげなくアリアナは、ビンセントの方を窺った。
新聞を片手に読んでいたビンセントはアリアナの視線に気付くと目元を和らげた。
「どうしたんだい、アリアナ」
優しく聞かれて、アリアナは思わず尋ねた。
「ユージンからお聞きになられましたか、持参金の件。」
「ああ、もちろんだよ。思えば私も気がつかなくて悪かったね。確かに財産の少ない公爵家では収入を得る手段があった方が良いだろう。もちろん困ったことがあれば、いつでも援助はするつもりだが…。ところで、塩の売買はアリアナがするつもりかい?もしクレメント様がするなら塩鑑札の手配をしなければならないが…」
「私がします!」
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