あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです

じじ

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「え。」

500エランをさらりと出すと言ったケイビスにアリアナは驚いた。
しかしケイビスは気にした素振りも見せずに続ける。

「エファントを含む領地の北部の民達全員に半年分の小麦を用意して欲しいのです。そちらはざっと見積もって300エラン程度になりそうですが、いかがでしょう」
「小麦、ですか?」

種や苗と言った物ならわかる。特に生産量が増える改良された物を配ると言うのは納得できるが、出来上がったものを食料として渡すことが領民や、領地経営の改善に繋がると思えないアリアナは首を傾げた。

「はい」
「なぜでしょう。領地経営にはあまり効果的ではないかと」
「理由は2つです。まず、北部は昨年作物の出来が悪く、すでに備蓄している食料が底を尽きかけている者たちがいます。餓死者を出さない手っ取り早い方法としてという意味合いです。そしてもう一つが農民達からの信頼を得るためです。不作の際に領主が救ってくれると信頼されている場合、彼らの働きは格段によくなるでしょう。」
「なるほど、そちらも手配します。」
「ありがとうございます」

やるべきことが決まったアリアナは、席を立とうとした瞬間、ケイビスの一言に驚いた。

「アリアナ殿が嫁いで来てくださったことを感謝します」
「え。」
「ハンゼ公爵家の人間に領民のために何かをする、という人間はおりませんでしたので…もちろん私も含めて、ですが」

苦い笑みに込められた自嘲の念を感じ取り、アリアナは柔らかな声音で答えた。

「ケイビス様はお忙しかったでしょうし…」
「ですが、私の忙しさが領民の命を蔑ろにして良い理由にはなり得ません。」
「本来はクレメント様のお仕事ですし、口を挟まれるのを嫌がられたのでしょう?」
「それでもやはり兄がしないのであれば、私がすべきでした。あなたに押しつけてしまったことを謝罪します。それとあなたほど有能な方が我が家に嫁いで来てくださったことを感謝します」

再度言われてアリアナはにっこり微笑んだ。

「私こそ、ありがとうございます。ケイビス様にそのように言っていただければ、それだけで報われるというものです」

その瞬間ケイビスはギョッとした顔でアリアナを見つめた。

「…報われる?まさか…兄はあなたを蔑ろにしているのですか」

問われた内容に驚いたアリアナは思わず困った顔で微笑んだ。
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