あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです

じじ

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その日の夜、疲れてベッドに入ろうとした瞬間、扉を荒々しく叩く音がした。

「どなた?」
「私だ、アリアナ。入るぞ」

返事も聞かずに入ってきたクレメントは顔を赤くしてずかずかとアリアナのそばに寄ってきた。酔っ払っているのか酒臭い。

「いかがなさいましたか?」

おっとり尋ねた瞬間、クレメントは眦を吊り上げてさらにアリアナに詰め寄った。

「お前のせいか?」

常と異なる恫喝するような口調にアリアナはすっと心が冷えるのを感じ取った。

「何の話でしょう?」

冷静に話しをする姿勢を見せる。

「とぼけるな!」

その怒声を聞きつけたベスが入り口からこちらを伺っているのに気づいたアリアナは視線で人を呼んでくるように目配せする。頷いたベスはすっと駆け出した。

「惚ける、とは?」
「賭場に入ろうとしたら追い出された!私だけが、だ。友人たちの馬鹿にする目。どれほど恥ずかしかったと思う!」
「まあ!」
「賭け事は嗜みだ。それをこのように私に恥をかかすとはいい度胸だ」
「つまり、私を脅しておられるの?」
「お前など愛する妻に値しない、そう言ってるのだ」
「え」

アリアナはわざとらしく傷ついてみせ、瞳を潤ませた。

「撤回してほしければ私の言うとおりにしろ!」
「それは…」

ちらりと入り口を見るとベスがなぜかケイビスを伴ってきた。

「お前など所詮は金のためだけの妻だ。それでも愛してほしければ私の言うとおりにしろ!」
「そんな…私は公爵家のためを思えばこそ」
「うるさい。お前のものは私のものだ。いちいち私のすることに口を出すな。」
「ですが…」
「外まで響いておりますよ、兄上。」

怒鳴り続ける兄を呆れたような醒めた表情で見ながらケイビスが入ってきた。

「お前、何でここに」
「今日は所用がありまして。それより義姉上を怒鳴る声が響いていたので、様子を見に来ました。一体どうしたのです?兄上が女性を怒鳴るなど」
「夫婦の話だ。お前は出ていけ」
「まあ、言い争いなら放っておきますが、一方的に女性を怒鳴るのは外聞が悪いですよ。」

しれっとした様子で話す姿に、昼間の誠実そうな面影がなくアリアナは戸惑った。

「ふん。女付き合いに疎いお前に口を出されたくなどないわ。アリアナ、私が不自由しないようにしておけ」

吐き捨てるように言うとクレメントは部屋から出て行った。
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