あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです

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「そんなわけないでしょう。ケイビス様に失礼よ」
「はいはい。」

おざなりに返事しながらユージンはアリアナが伝えた数字を見比べて考え込んだ。

「うん、これならいけるな」

ぼそりと呟くとアリアナを見て告げる。

「多分、この金額以内に収められると思う」
「まあ、本当？」
「交渉から納品までうちで全て請け負う。でも代わりに手数料でそれぞれ30エラン」
「分かったわ」

アリアナが言うと、ユージンは軽快に笑った。

「手数料なんて気にならないくらい安くて良いもの仕入れて見せるよ。それじゃあ、早速用意に取り掛かるよ。納品の日が決まったらまた訪ねる」

そう言って颯爽と去って行った。


ユージンが帰り、することのなくなったアリアナがぼんやり窓から庭を眺めていると、クレメントが金髪の派手な顔立ちの女性と密会しているのが見えた。
周りを薔薇の茂みで覆われている、その場所は一見すると逢引にもってこいだが、アリアナの部屋からだけは丸見えだ。アリアナは舌打ちしたくなる衝動を辛うじて抑えた。風の流れで会話まで途切れ途切れだが聞こえてくる。

「だ…ら、君…別れたい」

予想外の面白い展開に思わず聞き耳を立ててしまう。

「何ですって！」

金切り声の女性の声ははっきり聞こえる。

「あの女と結婚して大金手に入れたら別れて、私と一緒になるって言ったじゃない！だからあの女が身籠るようなこともしないって！」
「すまない。」
「そんな言葉で許せるはずないでしょう！どうせ手に入らないなら、あの女にありのまま話してやる！」
「待ってくれ。」

その瞬間、一際強い風が吹いたようで2人して風の吹き抜けたアリアナ側を見上げた。2人の瞳に驚愕の色が宿るのを見てアリアナは呆れた。そもそも浮気相手との密会を妻のいる屋敷の庭で行う方がどうかしている。アリアナは2人ににっこり微笑みかけながら、ゆるゆると手を振った。
顔色の変わったクレメントは相手の女性に何か言い置いて、すぐにその場を離れた。

5分後、自室をすごい勢いでノックされたアリアナは笑いそうになりながら、入室を許可した。

「アリアナ、先程は見苦しいところをすまない」

開口一番の謝罪にアリアナは戸惑った表情で尋ねた。

「いいえ。あの方はどなただったのでしょう」

穏やかな口調とは裏腹の不穏な内容に、クレメントの顔が引きつる。その様子を眺めながらアリアナはおっとり続けた。

「私と結婚したばかりのクレメント様に付き纏う女性がいるなど、クレメント様もさぞ困惑されたことでしょう。」

クレメントは全ての疑惑を彼女に被せることに決めたようだ。

「ああ。屋敷の庭でいきなり言い寄られて困惑していたんだ。あなたが手を振ってくれて助かったよ」