あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです

じじ

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アリアナがゾーイの屋敷に戻り1月が経った。
家業を手伝いながら、ユージンとベスの結婚式の相談役として過ごす日々は、忙しいがとても充実した日々だった。
今もまたアリアナとベスはドレスの色で盛り上がっていた。

「それで、アリアナ様のことが大好きなので、やっぱり赤いドレスがいいかな、と思うんですけど」
「嬉しいけれど、あなたが結婚するのは私じゃないのよ?それに赤いドレスって私が着て離婚してるから縁起が悪いわよ」
「あら、嫌がらせのために着たお嬢様と一緒にしないでくださいな」
「でも、ユージンがやきもち焼かないかしら」

ふたりでユージンをだしにして笑っていると、コンコンとノックする音が聞こえた。

「姉さん、入るよ」

心なしか冷たい声のユージンは、アリアナの返事も待たずに部屋に入ってきた。

「あなたね、いくら私の部屋だからって、返事くらい待ちなさいな」

呆れながらアリアナが嗜めると、ユージンは肩をすくめてみせた。

「…なによ?」
「いや、別に」
「言いたいことがあるんでしょう?」
「ドレスの色くらいでやきもちなんかやかないよ」

拗ねた様子で答えたユージンに、アリアナとベスは一瞬呆気に取られる。

「あら、聞こえてた?」

ばつが悪いのを隠すように戯けてアリアナが訊ねると、冷たい視線と共に溜め息をつかれる。

「盛り上がってたから分からなかっただろうけど、聞かせてるのかと思うくらい響いていたよ。ドア閉まり切ってなかったし」
「…ごめんなさい」

静かに諭され、アリアナは思わず謝った。

「いいけどさ。」

憮然とした様子のケイビスにアリアナは小首を傾げた。
いつもならこれくらいのことでいつまでも機嫌を悪くするような弟ではない。そう思って理由を尋ねようとすると、不機嫌な声のままに告げられた。

「クレメントが姉さんを訪ねてきてる。どうする?」

アリアナは思わず絶句する。

「追い返しましょう」

アリアナの様子を気遣うように、ベスが厳しい声で告げる。その様子を一瞥したユージンは大きく溜め息を吐いた。

「僕もクレメントのことは許せない。だから姉さんには悪いけど、勝手に追い返そうとしたんだ。帰れってね。でも、クレメントはどうしても姉さんと会いたい、会わせてくれるまでここから離れないって言ってる。で、今も門の前で待ってる」
「そんな」
「嫌なら無視しておけばいい。どうせ今日は家から出る予定ないよね」
「そうだけど」
「まあ、会うなら屋敷に入れてもいいけど」

流石にアリアナをいたわるように声をかけたユージンに、アリアナはにやりと笑って答えた。

「もちろん、会うわ。」
「え?」

ベスとユージンがぎょっとした顔でアリアナを見る。アリアナはそれを気にした様子もなく続ける。

「だってクレメントの暮らしぶり、気になるじゃない?」



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