92 / 102
91
しおりを挟む
ユージンが尋ねるとベスは待ってましたと言わんばかりに、途端に瞳を輝かせた。
「ドレスです!」
「ドレス?」
あまりに嬉しそうなベスの様子に、ユージンはきょとんとした。
「ドレスなんて別に珍しくないよね?」
ユージンの不用意な一言でベスの纏う空気がスッと冷えた。
ちらりと冷たい目でユージンをみて、冷ややかな口調で答えた。
「あら、アリアナ様の結婚式のドレスですもの。特別に決まっていますわ」
がたん、と音をさせてユージンは椅子から立ち上がった。驚きのあまり目を見開いたまま、ユージンは尋ねた。
「まさか、もう一度結婚式をするつもりなの?」
「あら、なぜそれほどまでに驚かれるんですか」
至極当然と言った様子で答えるベスに、ユージンは頭痛を感じた。
「姉さんはこの間クレメントに嫁いで盛大に結婚式したばかりだよ。それなのにすぐにその弟に嫁いで、もう一回結婚式するなんて、そいつらじゃないけどわざわざ批判を浴びに行くようなもんだよ」
それを聞いた途端、ベスはにやりと笑って答えた。
「ええ、まさにアリアナ様も同じことをケイビス様に仰いました。」
「ならケイビス様の考えなのか?」
「もちろんです!」
「姉さんのことを本気で大事に思ってるなら、そんな批判を受けるようなことわざわざさせるとは思えない。ケイビス様なら姉さんを任せられると思ったけど僕の思い違いだったみたいだ」
ユージンはそう言うなり、部屋を出ようとした。しかし部屋から出る直前にベスに手を掴まれる。
「なに?まさか、君もその結婚式に賛成なの?」
咎めるように聞かれたベスは柔らかな眼差しのまま答えた。
「もちろんです。」
「…君は姉の幸せを願ってくれる人だと思っていたんだけれど」
皮肉気なユージンの言葉を聞いて、ベスはいたずらっぽく微笑んだ。
「なに?」
「いえ。本当にアリアナ様のことが私達は大好きなんだな、と改めて認識しました。」
「どう言う意味?」
「まさに私も同じことをケイビス様に問い詰めましたので」
「それならなんで賛成なの?」
「まず、結婚式ですが貴族の方を招きつつ、領地で祭りも行います。前回より盛大に行うことで、アリアナ様を公爵家が心から歓迎していることを示すそうです。」
「でも、前回出席した貴族を呼ぶなんて…出席を断られでもしたら姉さんが恥をかくことになる。それに一度出て行った元公爵夫人が再び嫁ぐことを祝う祭りに、民は参加するの?」
「それですが、クレメント様が当主の時ははっきり言って落ちぶれていた公爵家の結婚式に出るのは義理以外の何者でもなかったようです。
ですがアリアナ様が立て直され、ケイビス様が発展に尽力され力を取り戻しつつある公爵家と繋がりを持ちたいと願う貴族は多いようです。おそらく多くの貴族は喜んで出席します。
それに領民からの支持が高いアリアナ様が離縁された時、民から惜しむ声が多く上がったと聞きます。再嫁されるとなれば批判どころか歓喜で溢れることでしょう。彼らの思いを汲むためにも祭りを開催するようですわ。」
「そう」
「それに、アリアナ様が当日着用されるドレスは美しい萌黄色のドレスですから」
「ドレスです!」
「ドレス?」
あまりに嬉しそうなベスの様子に、ユージンはきょとんとした。
「ドレスなんて別に珍しくないよね?」
ユージンの不用意な一言でベスの纏う空気がスッと冷えた。
ちらりと冷たい目でユージンをみて、冷ややかな口調で答えた。
「あら、アリアナ様の結婚式のドレスですもの。特別に決まっていますわ」
がたん、と音をさせてユージンは椅子から立ち上がった。驚きのあまり目を見開いたまま、ユージンは尋ねた。
「まさか、もう一度結婚式をするつもりなの?」
「あら、なぜそれほどまでに驚かれるんですか」
至極当然と言った様子で答えるベスに、ユージンは頭痛を感じた。
「姉さんはこの間クレメントに嫁いで盛大に結婚式したばかりだよ。それなのにすぐにその弟に嫁いで、もう一回結婚式するなんて、そいつらじゃないけどわざわざ批判を浴びに行くようなもんだよ」
それを聞いた途端、ベスはにやりと笑って答えた。
「ええ、まさにアリアナ様も同じことをケイビス様に仰いました。」
「ならケイビス様の考えなのか?」
「もちろんです!」
「姉さんのことを本気で大事に思ってるなら、そんな批判を受けるようなことわざわざさせるとは思えない。ケイビス様なら姉さんを任せられると思ったけど僕の思い違いだったみたいだ」
ユージンはそう言うなり、部屋を出ようとした。しかし部屋から出る直前にベスに手を掴まれる。
「なに?まさか、君もその結婚式に賛成なの?」
咎めるように聞かれたベスは柔らかな眼差しのまま答えた。
「もちろんです。」
「…君は姉の幸せを願ってくれる人だと思っていたんだけれど」
皮肉気なユージンの言葉を聞いて、ベスはいたずらっぽく微笑んだ。
「なに?」
「いえ。本当にアリアナ様のことが私達は大好きなんだな、と改めて認識しました。」
「どう言う意味?」
「まさに私も同じことをケイビス様に問い詰めましたので」
「それならなんで賛成なの?」
「まず、結婚式ですが貴族の方を招きつつ、領地で祭りも行います。前回より盛大に行うことで、アリアナ様を公爵家が心から歓迎していることを示すそうです。」
「でも、前回出席した貴族を呼ぶなんて…出席を断られでもしたら姉さんが恥をかくことになる。それに一度出て行った元公爵夫人が再び嫁ぐことを祝う祭りに、民は参加するの?」
「それですが、クレメント様が当主の時ははっきり言って落ちぶれていた公爵家の結婚式に出るのは義理以外の何者でもなかったようです。
ですがアリアナ様が立て直され、ケイビス様が発展に尽力され力を取り戻しつつある公爵家と繋がりを持ちたいと願う貴族は多いようです。おそらく多くの貴族は喜んで出席します。
それに領民からの支持が高いアリアナ様が離縁された時、民から惜しむ声が多く上がったと聞きます。再嫁されるとなれば批判どころか歓喜で溢れることでしょう。彼らの思いを汲むためにも祭りを開催するようですわ。」
「そう」
「それに、アリアナ様が当日着用されるドレスは美しい萌黄色のドレスですから」
5
あなたにおすすめの小説
【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない
かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、
それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。
しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、
結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。
3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか?
聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか?
そもそも、なぜ死に戻ることになったのか?
そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか…
色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、
そんなエレナの逆転勝利物語。
見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます
珠宮さくら
恋愛
ローザンネ国の島国で生まれたアンネリース・ランメルス。彼女には、双子の片割れがいた。何もかも与えてもらえている片割れと何も与えられることのないアンネリース。
そんなアンネリースを育ててくれた乳母とその娘のおかげでローザンネ国で生きることができた。そうでなければ、彼女はとっくに死んでいた。
そんな時に別の国の王太子の婚約者として留学することになったのだが、その条件は仮面を付けた者だった。
ローザンネ国で仮面を付けた者は、見るに堪えない顔をしている証だが、他所の国では真逆に捉えられていた。
私が、良いと言ってくれるので結婚します
あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。
しかし、その事を良く思わないクリスが・・。
従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです
hikari
恋愛
公爵ご令息アルフレッドに婚約破棄を言い渡された男爵令嬢カトリーヌ。なんと、アルフレッドは従姉のルイーズと婚約していたのだ。
ルイーズは伯爵家。
「お前に侯爵夫人なんて分不相応だわ。お前なんか平民と結婚すればいいんだ!」
と言われてしまう。
その出来事に学園時代の同級生でラーマ王国の第五王子オスカルが心を痛める。
そしてオスカルはカトリーヌに惚れていく。
【完結】冷遇された私が皇后になれたわけ~もう貴方達には尽くしません~
なか
恋愛
「ごめん、待たせた」
––––死んだと聞いていた彼が、私にそう告げる。
その日を境に、私の人生は変わった。
私を虐げていた人達が消えて……彼が新たな道を示してくれたから。
◇◇◇
イベルトス伯爵家令嬢であるラシェルは、六歳の頃に光の魔力を持つ事が発覚した。
帝国の皇帝はいずれ彼女に皇族の子供を産ませるために、婚約者を決める。
相手は九つも歳の離れた皇子––クロヴィス。
彼はラシェルが家族に虐げられている事実を知り、匿うために傍に置く事を受け入れた。
だが彼自身も皇帝の御子でありながら、冷遇に近い扱いを受けていたのだ。
孤独同士の二人は、互いに支え合って月日を過ごす。
しかし、ラシェルが十歳の頃にクロヴィスは隣国との戦争を止めるため、皇子の立場でありながら戦へ向かう。
「必ず帰ってくる」と言っていたが。
それから五年……彼は帰ってこなかった。
クロヴィスが居ない五年の月日、ラシェルは虐げられていた。
待ち続け、耐えていた彼女の元に……死んだはずの彼が現れるまで––
◇◇◇◇
4話からお話が好転していきます!
設定ゆるめです。
読んでくださると、嬉しいです。
妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。
バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。
瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。
そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。
その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。
そして……。
本編全79話
番外編全34話
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
醜い私は妹の恋人に騙され恥をかかされたので、好きな人と旅立つことにしました
つばめ
恋愛
幼い頃に妹により火傷をおわされた私はとても醜い。だから両親は妹ばかりをかわいがってきた。伯爵家の長女だけれど、こんな私に婿は来てくれないと思い、領地運営を手伝っている。
けれど婚約者を見つけるデェビュタントに参加できるのは今年が最後。どうしようか迷っていると、公爵家の次男の男性と出会い、火傷痕なんて気にしないで参加しようと誘われる。思い切って参加すると、その男性はなんと妹をエスコートしてきて……どうやら妹の恋人だったらしく、周りからお前ごときが略奪できると思ったのかと責められる。
会場から逃げ出し失意のどん底の私は、当てもなく王都をさ迷った。ぼろぼろになり路地裏にうずくまっていると、小さい頃に虐げられていたのをかばってくれた、商家の男性が現れて……
虐げられた令嬢は、耐える必要がなくなりました
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私アニカは、妹と違い婚約者がいなかった。
妹レモノは侯爵令息との婚約が決まり、私を見下すようになる。
その後……私はレモノの嘘によって、家族から虐げられていた。
家族の命令で外に出ることとなり、私は公爵令息のジェイドと偶然出会う。
ジェイドは私を心配して、守るから耐える必要はないと言ってくれる。
耐える必要がなくなった私は、家族に反撃します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる